白昼夢の視聴覚室

犬も食わない

だが、需要はある(のかもしれない)。

昨日、Twitter改めXのタイムラインを眺めていると、トレンドに【オードリー】が入っていることに気が付いた。『オードリーのオールナイトニッポン』放送の翌日だったので、その名残だったのだろう。そこで何の気なしに、「オードリー」でツイート検索し、その結果をチェックしていたら、あることに気が付いた。まったく同じ文言のツイートをしているアカウントがチラホラと見受けられたのである。

その文言というのが、これ。

オードリー若林の名言「ネガティブを潰すのはポジティブではない。没頭だ。」が響く。ヒマな時間は毒。人間は何もしない時にネガティブになる。だから「なんかヤバイ...」と感じたら何か好きな事に没頭すること。趣味でもいいので、自己肯定感が下がる前に好きな事を始めよう。暇はメンタルの大敵です

ここで名言として取り上げられているのは、かつて若林が雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載していたエッセイをまとめた書籍『完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込』において書かれたものである。2013年の単行本刊行当時、それなりに話題になっていた言葉だったので、忘れっぽい私でも微かに記憶していた。

事実、名言である。当人にその意図があったのかは分からないが、ネガティブな感情に支配されがちな人の心に寄り添ってくれるような、芯を食った言葉であるように思う。とはいえ、どれほどの名言であっても、スパム的な動きをしている複数のアカウントによって、情報商材のような角度から取り上げられてしまうと、途端に陳腐な言葉に見えてしまう。

この状況に対し、うっすらと嫌悪感を覚えた私は、この文言をそのままコピペしてツイート、続けざまに「こんなツイートをしているアカウントを複数発見した!」と繋げるようにツイートすることにした。フォロワーに対して、こういったろくでもない動きをしているアカウントへの不快感を表明しようと思いついたのである(あまり性格が良くない)。

すると、驚くべきことが起こった。この文言をコピペしただけのツイートが、そこそこの「いいね」「ブックマーク」を稼いでしまったのである。

彼らがどのような理由から私のツイートに「いいね」してくれたのかは分からない。私の意図を汲んだ上で「いいね」してくれたのかもしれない。とはいえ、普段よりも明らかに大きな反響を見るに、文言の中身を受けての純粋なリアクションも多々あることを感じさせられた。要するに、私にとっては陳腐にしか思えなかった文言そのものには、人が「いいね」を押したくなるほどの確かな需要があったのだ。

……という、なにかしらかの学びがあったような気がする、話。