白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「映像コントアワード2018」の件。

どうも菅家です。

賢明な読者の皆さまなら、かつて私が「映像コントアワード2016」および「映像コントアワード2017」というイベントにコメントを寄せていたことを、しっかりと覚えているのではないかと思いますが……覚えていないのならば脳味噌を搾って思い出してください……まあ別に思い出さなくても構いませんけど……実は2018年もコメントを寄せていました。なんと、これで三年連続、同イベントにコメントを寄せたことになります。でも、相変わらず、審査の方には参加させてもらっていません。私はどういうポジションなのでしょうか。

というわけで、これまでと同様に、今回も受賞作品とそれに寄せたコメントをここに掲載したいと思います。時間の有るときにゆるーく鑑賞されると宜しいのではないかと存じます。

〈映像コントアワード2018 受賞作一覧〉

 

【最優秀作品賞】

 

「ネタバレ予告」(Mr.Party)

https://www.youtube.com/watch?v=2ir-szufbok

シンプル。とことんシンプル。誰が見ても、どうやって見ても、ああ、コイツが犯人だなあと分かってしまうバカバカしさ。また、そこから更に、どんどん状況が悪い方向へと転がっていく……ことが、先に分かってしまうバカバカしさ。また、その状況を客観的にツッコんでくれる人間がいないので、ただただストレートなバカバカしさが垂れ流される。そこがいい。見ている側が、否が応でもツッコまざるを得ないところがいい。

 

【優秀作品賞】

 

「天才的名医」(コントのシキシ)

https://www.youtube.com/watch?v=ackse4slEw4

どんな病もたちどころに治してしまう万能薬を生み出した医者が、院長の命令で何処にも動くことが出来ない……という設定が、なにやら日本の企業体質を皮肉っているような。きっと気のせいなのだろう。だが、もしもそういう意図があったとしたら、その場を微動だにしない医者と、医者の元へと辿り着くことが出来ずに目の前で倒れ続ける患者という不条理で面白い画が、どことなく不気味で危うい状況に……。

 

「選択肢2」(Mr.Party)

https://www.youtube.com/watch?v=pTa29pjCv3Y

色恋に限らず、他人とのコミュニケーションに不安を感じている者としては、なにやら身につまされる思いで見てしまった。この世が、ここぞという場面で選択肢が提示される世界であれば、どんなに気楽だったか。それとは別に、あるシーンで会話の選択肢の中にヘンテコな台詞が組み込まれていて、それに対して主人公が「なんて言われるのか聞いてみたい魔力がある」と言っていたのにも、なにやら共感してしまった。……もしかして私は草食系男子なのだろうか。

(※こちらの映像はシリーズものなので、先に前回の内容を見ておくと分かりやすいかもしれません)

 

【映像賞】

美女と野獣」(コントのシキシ)

https://www.youtube.com/watch?v=GkLbtxhwkVE

ファンタジーな世界観が、一転して、アダルトビデオの導入シーンみたいな状態へと切り替わる画だけで、もう満点である。なんだ、あの落差は。また、その画のインパクトだけでは終わらずに、更に下世話に、不気味でエログロなやり取りが始まるところが、もうたまらない。心地の良い幻想を地面に叩きつけてえげつない現実で踏みにじった、恐るべき作品である。

 

【コンテクスト賞】

「映える」(Mr.Party)

https://www.youtube.com/watch?v=gOOLqcNKhOw

インスタ映え”という言葉が流行語大賞に選ばれてから、およそ一年が経過した。その界隈にはまったくもって詳しくないのだが、当時、インスタグラムに写真を投稿して「いいね!」を稼いでいた人たちは、今も“インスタ映え”を意識した写真を撮り続けているのだろうか。どうも、よく分からない。見知らぬ他人から評価されるために写真を撮るという感覚が理解できない。写真なんて、記憶を切り取るものではないのか。意図的に作られた写真に、何の意味があるのか。このコントは、そんな不可解な時代の歪みのようなものを描いているのかもしれない。うーむ。

 

【お笑い賞】

「付き合ってんだろ」(コントのシキシ)

https://www.youtube.com/watch?v=XCoGn1aqDTo

このご時世に、男が男のことを好きになる状況を笑いにしてしまうコントというのは、ちょっと軽率なのではないか……と思わなくもない。ただ、とはいえ、笑ってしまった。理不尽なキャラクター、カレンダーの絶妙な使い方、強引なペアルック、いちいち面白い。周りに無関係な客を配置することで、シチュエーションの特殊性を強調していたのも良かった。

 

【ドラマ賞】

「ファミレス」(Mr.Party)

https://www.youtube.com/watch?v=QUad3c618Hc

バカバカしいオチに笑ってしまったが、よくよく考えてみると、実は深いコントなのかもしれない。当事者同士では需要と供給の関係性が成立しているのに、それを悲痛で不快に感じられる第三者の介入によって、愛すべき均衡が崩されてしまう。これぞまさに、、その分野に一切関わりのない正義感に満ちた第三者がしゃしゃり出て来ては苦言を呈する、昨今のネット炎上の形式そのものではないか! まさか、その風刺として、このコントが作られたのではないか……いや、流石に深読みし過ぎだ。

 

【名演賞】

「生徒募集中!」(コントのシキシ(全出演者))

https://www.youtube.com/watch?v=dSuyUjpP2Lc

予備校のコマーシャルをパロディ化するという発想が面白い。確かに、予備校のコマーシャルを見ていると、時たま、異常に個性的な講師が出てきて、うっかり目を奪われてしまうことがあるのだ。そこに着目するところが、実に良い。各講師のキャラクターに関しては、各々がちゃんと振り切っていて頑張っているが、個人的には化学の先生がツボ。あんまりお近づきになりたくない雰囲気がある。

 

【ショート作品賞】

「これ以上は付き合えない!「友達をやめたくなる瞬間」5選」(Carrot)

https://www.youtube.com/watch?v=k3jXdJtwbLA

ショートネタは瞬発力が大事だと思っているのだが、これの一発目はちょっと笑ってしまった。バカバカしすぎる。ネタバレになるので、敢えてここには書かないが、考える隙を与えないうちにこういう台詞を突っ込まれると、もう速攻だ。 

 

【特別賞】

「補足され過ぎ」(コントのシキシ)

https://www.youtube.com/watch?v=WBvbNXWctws

インタビューをテーマにしたコントといえば、以前にアンジャッシュが素材映像を編集する設定で演じていた記憶がある。あれは映像そのものをバカバカしくイジッていたが、こちらは字幕にのみ着目。口数の少ない監督の気持ちを忖度して、どんどん勝手な言葉を付け加えていくという設定が実に興味深い。身体性を重視する芸人とは違い、動画をメインで活動する上で、この手法を選んだのは適切な判断といえるだろう。じわりじわりと底意地の悪さが露呈し始める構成もいい。性格が悪い。

 

【翻訳賞】

「100万人目の死」(Studio C(翻訳:Carrot))

https://www.youtube.com/watch?v=QG2bfiuv7a4

人の死を描いたコントは意外と少なくない。基本、笑ってはいけない状況なので、その重苦しい空気を壊しやすいのだろう。だが、笑いに転化しやすいからこそ、しっかりと凝った内容にしなければ独自性を出しにくい。その点、この作品は面白かった。タイトルから、なんとなく内容は予測できていたのだが、色々な角度から次々に祝われる不条理さがたまらなかった。また、お祝いの度に流れる曲が良い。あのチープさが素晴らしい。

 

個人的に好きだったのは『付き合ってんだろ』。時代錯誤な設定ではありますが、強引に笑わせられてしまいました。聞くところによると、元々は舞台用に作られたネタを映像化したものらしいです。道理で。あと、『美女と野獣』の不穏な雰囲気、『捕捉され過ぎ』の作り込まれている感じが印象に残っています。

こちらからは以上です。