白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「M-1グランプリ2019」準々決勝敗退者・オススメの五組(11月18日大阪予選)

すが家です。今年のアレの大阪バージョンです。

年の瀬だというのにプライベート方面でなにかとバタバタしているので、今回も特に凝った文章は用意しておりません。ただただ、惜しくも準々決勝で敗退してしまった漫才師たちの中から、個人的に面白いと感じさせられたコンビを選出しております。私が好きな漫才師を皆さんも気に入るとは思いませんが、興味がありましたらば。

以下、今年のアレ。

Dr.ハインリッヒ

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吉本興業所属。幸(左)と彩(右)によって2005年に結成。大阪NSC27期生。一卵性双生児の姉妹によるコンビである。だが、それをネタに取り入れることはない。それどころか漫才の中で微塵も触れようとしない。双子であることなど、二人にとってはまったく重要ではないのである。無駄なことは語らない。そんな二人の姿勢は漫才にも表れている。冒頭から聖書について語り始める幸。唐突に「風のような人だと思われたい」などと言ってのける彩。それらの言動の根拠が説明されることはない。必要無いからだ。そんな些細なことは二人にとって大事ではないからだ。大事なのは、それよりももっと奥の方にある……と、思わせておいて、実は何もないのかもしれない。なにせ混沌の時代である。混沌の時代を生きる混沌の漫才師に理由など求めても意味などないのだ。三回戦「風のような人だったな」準々決勝「顔にはっつけ人間」

 

【シカゴ実業】

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吉本興業所属。山本プロ野球(右)と中川ひちゃゆき(左)によって2016年に結成。山本は大阪NSC31期生、中川は大阪NSC32期生。人間は学ぶ生き物である。観察し、学習し、記憶する能力が、他の生物たちよりも圧倒的に優れていたからこそ、今日の文明に辿り着いたのだ。だが、その優れた能力が、必ずしも効果的に発揮するとは限らない。私たちは本当に必要な情報だけを記憶しているだろうか。否、そんなわけがない。今日に至るまで、生きていく上で必要のないことを、私たちは随分と記憶してしまっている。シカゴ実業の漫才は、そんな記憶という優れた能力を持っているが故に生じる不条理を笑いに変える。知らなくてもいいことを覚え、知りたかったことを覚えていない。とかくこの世は難しい。記憶の引き出しには今日もポディマハッタヤ。三回戦「日本の教育」準々決勝「ポディマハッタヤ」

 

【ガーベラガーデン】

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マチュア。上浦侑(右)とジッパー(左)によって2007年に結成。芸人にとって唯一無二の武器があるということが必ずしも有利に働くとは限らない。何故なら、その武器によるイメージが定着することで、表現できることが制限されてしまうからだ。もし、敢えて武器を捨てて、まったく新しいスタイルのネタを作り上げたとしても、観客の脳裏には元来の武器がどうしても浮かび上がってくる。しかし、それを上手く使いこなすことが出来れば、他の芸人であれば決して辿り着くことの出来ない深海へと到達することも可能になる。学校教員と塾講師によるアマチュアコンビ・ガーベラガーデンの漫才は、もはやその域に達しているといっていいだろう。学校教員だからこそ生み落とせる発想、塾講師だからこそ吐き出せるボヤキ、もはや内部告発レベルに踏み込んでいるのではないか?と心配させられるほどのリアリティ……。変ホ長調、ラランドの後を静かに追う姿は、化け物の如き存在感である。三回戦「学校を舞台にしたRPG」準々決勝「学校を舞台にしたRPG」

 

【にぼしいわし】

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スパンキープロダクション所属。いわし(右)とにぼし(左)によって2013年に結成。『女芸人No.1決定戦 THE W』2019年大会・ファイナリスト。奇妙な出来事に遭遇してしまったとき、人は誰かにそのことを話したくなるものである。家族であれ、恋人であれ、友人であれ……誰かに話すことで経験を共有し、安寧を手に入れたいからだ。にぼしいわしの漫才は、そんな感覚を体現している。にぼしが体験したヘンテコな出来事を、相方のいわしに聞いてもらう。観客である私たちは、ただそれを見ているに過ぎない。このいわしの役割が意外と重要だ。いわしの役割はツッコミではなくあくまでもにぼしの話の聞き役に過ぎない。だからこそにぼしの話に笑ってしまうこともある。通常の漫才であれば許されない。だが、にぼしいわしの場合、それが許される。このスタイルが定着すれば、彼女たちは更なる爆発を見せることになるだろう。楽しみだなあ。三回戦「王将の天津飯」準々決勝「接骨院でサプライズ」

 

キャタピラーズ】

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吉本興業所属。しげみうどん(右)とサカモト(左)によって2017年に結成。しげみは大阪NSC30期生、サカモトは大阪NSC32期生。しげみうどんがかわいい。どういうつもりなんだろうか。とにかくかわいい。ボケとして自由奔放に立ち振る舞うサカモトもかわいい空気を醸し出しているが、しげみのかわいさは圧倒的である。なにせ声がかわいい。適度に高音で親しみやすい。かといってアニメ的なデフォルメが効いているわけでもない。ただかわいい。しかも、その声のかわいさが、見た目ときちんと結合している。また芸風にも繋がっている。サカモトのボケに対してツッコミを入れるのではなく全面的に受け入れる際の一言がビシッとハマる。とりわけ準々決勝の漫才は最高なので是非ともご覧いただきたい。無理せずに共犯的な関係性に持ち込める。この強み。いずれ発見されて、バラエティの人気者になってしまうことだろう。三回戦「遊園地デート」準々決勝「水族館デート」

以下、準々決勝戦(大阪予選)の出場者。

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大阪の記録(2019年11月29日-12月1日)

金曜の夕刻、午後五時の定時を迎えると同時に会社を出発する。愛車の軽に乗り込み、善通寺高速インターバスターミナルへ。バスの発車予定時刻は午後六時。通常、国道を使えば三十分程度で到着する距離だが、帰宅ラッシュや事故による渋滞に巻き込まれることを考慮して、高速道路を利用する。高速バスの発車時刻に間に合わせるために高速道に入る、という判断が何故だか自分の中でしっくりこない。私は何に納得していないのだろう。

午後五時二十分ごろ、善通寺高速インターから国道へ降りる。ここまで来ればバスターミナルは目と鼻の先だ。思わず安心して、そのまま近場のファーストフードのドライブスルーへ。しかし、これが浅墓な決断だった。いざ、店の敷地内に入ると、そこには十台ほどの車の行列が。あまりの光景に「うわっ」と思わず声が漏れる。とはいえ、そこはあくまでも“ファーストフード”という異名を持った、高速で商品が提供されることを売りにしている店である。この程度の行列ならば、あっという間に捌いてしまうに違いない。心配している自分にそのように言い聞かせながらひたすら待機していたのだが、これが遅々として進まない。ファーストはどうした、ファーストは。

ようやく私に注文する番が回ってきたころには、到着から十五分が経過していた。まったく冗談じゃない。ハンバーガーを単品で二つほど注文する。もはやポテトなど食べている暇もない。シンプルなハンバーガーで腹が満たされれば良いのである。料金所で金銭を支払い、受取口へ移動する。ようやく商品を受け取ることが出来る……と思いきや、店員から「しばらく時間がかかりますので、あちらの斜線の駐車場でお待ちください」と言われたので、驚いた。私が頼んだのはセットではない。単品である。それなのに、恐らくは私よりも多くの商品を注文しているだろう他の客よりも調理に時間を要するというのか。その不思議を店員に説いても無用に時間が過ぎていくだけなので、素直に従う。時刻は午後五時四十五分を過ぎている。ほんの少しの判断ミスで、よもやこのような緊迫した事態に陥ろうとは。しばらくして、店員によって商品が届けられる。無論、ここで店員に焦りをぶつけても意味はないし、なによりそんな自分を後々になって恥じることは容易に想像できたので、自然な笑顔で対応する。同じ人間同士で社会を構築するとは、つまりこういうことだ。店を出て、すぐさまバスターミナルの駐車場へ飛び込む。車を停め、二つのハンガーバーを速攻で口の中へと詰め込む。食べた、というよりは、補給した、という感覚に近い。

食べ終えたところで、荷物の中身をざっくりと確認する。旅行において、重要な道具は三点。「お金」「スマホ」「チケット(バスの往復チケットとライブのチケット)」。この三点があればなんとかなる。ここに「着替え」「イヤホン」「充電器」があると、より心強い。ターミナル内のトイレで用を足し、午後六時に到着したバスへと乗り込む。すぐさまバスは出発。善通寺から、大阪へ。移動中はスマホのラジオアプリで幾つかの番組を聴いて過ごした。何を聴いていたのかは覚えていない。半分ぐらい眠っていたような気がする。

午後九時半、OCAT(大阪シティエアターミナル)で下車。荷物を抱え、建物の外へ出ると、見慣れた光景が目の前に。私にとっての大阪はいつもこの場所から始まる。難波の繁華街へと歩き始める。夜の難波は大勢の人で溢れているので、まるで身の危険を感じない。人の波に紛れてしまえば、悪目立ちすることがないからだ。ただ、それは私がこの街の人間ではないから、そのように感じているだけなのかもしれない。紛れるからこそ体験する恐怖もあるだろう。

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記憶を頼りに歩いていると、いつも利用しているカプセルホテルの看板が見えてくる。【サウナ&カプセルホテル アムザ】。大阪にある他のカプセルホテルにも泊まってみたことがあるが、ここが私にとって最も居心地が良い。立地も良い。繁華街のド真ん中にあるので、ホテルの外に出れば、すぐさま盛り場へと繰り出すことが出来る。サウナや露天風呂も充実している。それらの入浴施設を目的に訪れる有名人も少なくないらしい。

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千日前中央ビルのエレベーターで七階に上がると、そこにアムザの受付が設置されている。靴を靴箱に預け、受付で宿代を支払う。今回は二泊三日を予定しているが、清算は一泊ごとに分けられる。一泊4,100円。二泊で8,200円。私がこの店を利用し始めた頃は一泊3,000円で泊まることが出来たものだが。時の流れをしみじみと感じさせられる。ロッカーのカギを受け取り、ロッカールームへ。着替えや帰りのバスチケットなど、今の段階では必要のない荷物を全てロッカーの中で詰め込む。アムザのロッカーは縦に細長く、いわゆるボストンバッグの類はきちんと収まらない。どうしても左右のどちらかに偏ってしまう。そのため、見た目がなんだかみっともない。

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「M-1グランプリ2019」ファイナリスト決定!

インディアンス(2010年結成)
オズワルド(2014年結成)
かまいたち(2004年結成・昨年ファイナリスト)
からし蓮根(2013年結成)
すゑひろがりず(2011年結成)
ニューヨーク(2010年結成)
ぺこぱ(2008年結成)
見取り図(2007年結成・昨年ファイナリスト)
ミルクボーイ(2007年結成)

来年は世代交代の年になるかもしれない。昨年のM-1グランプリが幕を下ろした直後、そんな話を耳にした。確かに、その予感はあった。後に“お笑い第七世代”を提唱する霜降り明星による優勝は、新しい世代による時代の幕開けを思わせた。また、復活後のM-1において、確かな存在感を見せていた常連組のジャルジャルスーパーマラドーナが、出場規定である結成15年を超えたことも、そう感じさせた大きな理由だろう。新陳代謝が起きる前触れだ。それから、昨年大会において、完全なる“危険球”と目されていたトム・ブラウンが、一部の審査員に高く評価されたことも革命的な事件だった。この判断により、M-1は漫才の枠組みを超越するような漫才師でも評価する、漫才の可能性の幅を広げる大会としても見られるようになった。

その結果が是である。正直、驚きを隠せない。これまで大会の象徴的な存在だった和牛、圧倒的なしゃべくり芸で多くの数寄者を唸らせたミキ、関西では高い人気を誇る実力派漫才師・アインシュタインなどといった、今大会の有力候補が軒並み敗退している。少なくとも、この中から一組は食い込むだろうと思われていた。それが全て落とされている。それだけでも衝撃なのだが、何よりファイナリストの中に、あのすゑひろがりずがいることに驚いた。準決勝戦に勝ち上がったと知ったときにも「上がれたのか!」と思ったのに、まさか決勝戦の舞台に躍り出ることになろうとは。トム・ブラウンを決勝に上げ、決勝の審査員に評価されたことに味を占めた準決勝の審査員が、うっかり調子に乗ったとしか思えない。無論、ベラボーに面白いコンビである。大いに張切ってほしい。

そして、ぺこぱ……『笑けずり』で見せていた漫才は完全に頭打ちで、彼らにはこれ以上の伸びしろはないだろうと勝手に決めつけていたことをここで反省したい。人は生きていれば変わるのである。芸人もまた変われるのである。昨年大会で披露していた漫才には確かに光が見えていた。それでも、それでも、ここに上がってくるほどの成長を見せようとは……。

一般の視聴者向けのメンバーではないだろう。『キングオブコント』ならば、きっとファイナリストをシークレットにしていたに違いない。そして、その認識度の低さが故に、大会全体が盛り上がりきらないかもしれない。だが、本質的にM-1は、もとい、R-1もKOCも、全ての賞レースは若手芸人のためにある。むしろこの選出は、敢えてテレビショウとしての側面を無視して、大会としての矜持を見せつけた結果といえるだろう。ならば、お笑いを愛する視聴者は、その意志をしかと受け止める必要がある。当日は心から漫才を楽しみたい。あと、敗者復活戦も楽しみたい。そっちから和牛かミキが上がってきそうな気がしないでもない。そして、とんでもないマクリを見せるかもしれない。まあ、それもまた醍醐味である。

「M-1グランプリ2019」準々決勝敗退者・オススメの五組(11月19日東京予選)

菅家です。毎年のアレです(以下、過去のアレ)。

ここ最近、公私ともに慌ただしい日々を過ごしているため、悠長に文章を書き連ねられるような余裕がないため、細かい説明は抜きにして、とっとと本題に入ろうと思います。今年のM-1グランプリで惜しくも準々決勝で敗退してしまった漫才師たちの中から、個人的に面白いと感じさせられたコンビを選出しております。私が好きな漫才師を皆さんも気に入るとは思いませんが、興味がありましたらば。

以下、今年のアレ。

三四郎

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マセキ芸能社所属。小宮浩信(左)と相田周二(右)によって2005年に結成。スクールJCA13期生。今やタレントとして確たる地位を築き上げている三四郎だが、こと漫才師としてのイメージはあまり定着していないように思う。少なくとも、彼らが売れっ子となる前のガムシャラにハチャメチャな漫才を知る人は、それほど多くはないだろう。事実、ここ数年の三四郎は、少なくともM-1予選においては保守的な漫才を演じていた。ところが今年は違った。売れっ子になった三四郎は、更にアヴァンギャルドでサディスティックな地平へと辿り着いた。否、辿り着いてしまった。その倫理性の低さが故に今年は準々決勝敗退という憂き目を見てしまったように思うが、とはいえ、その姿勢は称賛に値する。これが令和の三四郎だ。三回戦「ちっちゃいおじさん」準々決勝「開頭手術」

モグライダー

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マセキ芸能社所属。ともしげ(左)と柴大輔(右)によって2009年に結成。芝は東京NSC9期生、ともしげはスクールJCA13期生。シンプルに愚鈍なともしげとキツい見た目とは裏腹に優しさが滲み出ている芝の悪ふざけのような漫才は、ある意味では正統派といえるだろう。ただ、ともしげはそれにしてもあまりにも愚鈍で、芝はそんなともしげの愚鈍さを心から楽しんでいる。相方の魅力をこれでもかと引き出している。そこで描かれているのは奇妙な共犯関係の匂い。とはいえ、ただムチャクチャにやっているわけでもない。漫才コントのディティールは意外と繊細に描き込まれている。才気も技術も愛嬌も備わっている。本来、もっとベラボーに売れなくてはならないコンビだろう。三回戦「マイケルじゃんけん」準々決勝「介護の心得」

【ストレッチーズ】

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太田プロダクション所属。福島敏貴(左)と高木貫太(右)によって2012年に結成。慶応義塾大学お笑い道場“O-keis”出身。漫才には“定番の設定”が幾つか存在する。それだけ演じやすいシチュエーションなのだろう。だが、定番と呼ばれるほどに多くの漫才師たちによって演じられているということは、それだけの数の対抗馬が存在するということとだ。余程、突出して面白い様を見せていないと、あっという間に視聴者の記憶の屑籠の奥へと押し込まれてしまう。今回の予選でストレッチーズが披露したネタもまた、ありがちな設定である。だが、彼らの漫才に登場する人々は、誰もが僅かにズレている。本来、その場で求められている人材とは、僅かにズレている人が登場する。このズレが、また絶妙だ。フィクションと呼べるほど非現実的ではなく、とはいえ、ノンフィクションと呼べるほどに現実的ではない。その絶妙な合間を上手く通り抜けている。とりわけ準々決勝で披露していた漫才は笑った。「不良生徒を注意する教師」というありがちな設定に「教師が実は教育実習生」というありがちなボケを経て、怒涛の勢いで繰り広げられる「教育実習生」漫才。派手ではないが、面白い。三回戦「お客様の中に」準々決勝「不良生徒を説教する」

【ダイヤモンド】

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吉本興業所属。野澤輸出(左)と小野竜輔(右)によって2017年に結成。野澤は「エレ―ン」、小野は「アルドルフ」「セクシーパクチー」というコンビでそれぞれ活動していた。ダイヤモンドの漫才は、まず野澤の話から始まる。その内容は率直に言ってヘンテコだ。例えば、色々な言葉に“半”を付けてみたり、“スポーツ”を付けてみたり、何の話をしているのかがよく分からない。面白いといえば面白いし、つまらないといえばつまらない。どちらかといえばつまらない寄りの内容である。だが、その明らかに異様な話に対して、相方の小野はまったくツッコミを入れようとしない。何の感情も込めていない目で野澤をただ見つめるばかりだ。だが、野澤の話が一通り終わると、それまでの不可思議な話が全てフリとなって、次々に笑いへと昇華されていく。個人的に、私は構成を意識した漫才はあまり好きではないのだが、彼らのネタは反射的に「好きだ」と思ってしまった。恐らく、私は前半の敢えて捨てている野澤の話のパートの持つシュールな雰囲気が、それはそれで好きなのだろう。M-1で勝てる漫才ではないのかもしれないが、良い。三回戦「半」準々決勝「スポーツ」

 

【ドンデコルテ】

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吉本興業所属。小橋川共作(左)と渡辺博基(右)によって2019年に結成。小橋川は「デビルポメラニアン」、渡辺は「マンキンタン」というコンビでそれぞれ活動していた。ネガティブな感情と良心による暴走がぶつかり合ったブラックマヨネーズ、ありきたりな事物への異常な執着が平凡な優しさに襲い掛かるチュートリアルの例を見ずとも、M-1グランプリという大会において、ある種の熱狂は高い評価を獲得することがある。その意味では、ドンデコルテは今後の飛躍に期待を持てるコンビといえるのかもしれない。小橋の平々凡々とした話に対し、渡辺が強烈な持論を展開、自らの世界へと小橋も観客も飲み込んでしまう姿は圧巻だ。三回戦の時点ではまだ偏執的価値観の域を出なかったが、準々決勝では完全にその世界観を剥き出しにしてしまっている。ただ、あまりにもよく出来たネタなだけに、これっきりなのではないかという不安も残る。来年、更なる飛躍を見せるか、それとも静かに姿を消してしまうか。それまで絶対に名前を憶えておきたいコンビの一組である。三回戦「原付」準々決勝「ディフェンス」

以下、準々決勝戦(東京予選)の出場者。お気に入りは★マーク。

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2019年12月の入荷予定

25「コント集団 カジャラ 第四回公演「怪獣たちの宴」
25「タロウ4」(ハナコ
25「カロ」(かが屋

どうも菅家です。皆さんは孤独ですか。私は先日お見合いした方と交際中なので孤独ではありません。しかし、いつ何時、私のひとでなしな本質を見抜かれて、縁を切られてしまうか分からないので、今はただひたすらに戦々恐々とした日々を過ごしております。とはいえ、もしも私が結婚という運びになった場合、コレクション活動の日々に終止符を打つかもしれない……ということで、ジレンマに陥っております。一体どうなりますやら。

そんな十二月ですが、地味に豪華なラインナップがクリスマスに控えております。まず小林賢太郎率いるコント集団・カジャラの単独公演。なだぎ武をゲストに迎え、これまでの公演とはまた少し違った味わいの舞台を展開しております。そういえば、来年のカジャラによる公演の予定が発表されていませんが、どうするつもりなのでしょうか。一人芝居の舞台『うるう』を控えているので、2020年は休むのかしら。続いてキングオブコント王者・ハナコによる単独ライブ……をベースにした撮り下ろし映像集だそうです。最近はこのパターンが当たり前になってきてますね。ちゃんと整えた状態で残したいのかもしれません。新ネタも収録されるらしいですよ。そして最後に、かが屋念願のベストコント集……が、どうしてスタジオ収録なのか!!! そこは客入れして収録してくれよ!!! バカじゃないの!!! バカじゃないの!!! バカじゃないの!!!(大事なことなので三回言いました)

今年は以上! バーカ!(投げやり)

ヨーロッパ企画とキングオブコントの日。(2019年9月21日~22日)

ヨーロッパ企画の舞台を観るために高知へと出かける。

ヨーロッパ企画は京都を拠点に活動している劇団だ。1998年の結成以後、主宰・上田誠が作・演出を手掛ける新作舞台をおよそ年に一度のペースで上演している。2005年に第8回公演『サマータイムマシン・ブルース』、2009年に『冬のユリゲラー』がそれぞれ本広克行監督によって映画化。2016年には第35回公演『来てけつかるべき新世界』で岸田國士戯曲賞を受賞。人気・実力を兼ね備えた、今という時代を代表する劇団の一つといっていいだろう。

そんなヨーロッパ企画が手掛ける生の舞台を私が初めて鑑賞したのは今から二年前、第36回公演『出てこようとしているトロンプルイユ』。トロンプルイユ(だまし絵)をテーマに、アトラクションのような娯楽性と舞台表現としての自由度の高さ、そしてなにより創作するという行為そのものを歴史の脈絡とともに追う深みの面白さを見事に描いていて、私の心はすっかり彼らのトリコとなってしまった。無論、翌年の公演も観に行こうと考えていた。しかし、チケットを取っていた愛媛公演が、台風の接近を理由に中止。まんまとおあずけを食うことになってしまったのであった。

つまり、今回の公演は、私にとって二年ぶりのヨーロッパ企画ということになる。ああ、待ち遠しかった。

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「M-1グランプリ2019」準決勝進出者決定!

以下、昨年大会の結果に合わせて(カッコ内は結成年)。

【決勝】
2位:和牛(06年)
4位:ミキ(12年)
5位:かまいたち(04年)
6位:トム・ブラウン(09年)
9位:見取り図(07年)

【準決勝】
10位:からし蓮根(13年)
11位:東京ホテイソン(15年)
14位:マヂカルラブリー(07年)
19位:インディアンス(10年)

【準々決勝敗退】
アインシュタイン(10年)
囲碁将棋(04年)
すゑひろがりず(11年)
セルライトスパ(08年)
ダイタク(08年)
天竺鼠(04年)
錦鯉(12年)
ニューヨーク(10年)
ぺこぱ(08年)
ミルクボーイ(07年)
四千頭身(16年)
ロングコートダディ(09年)

【三回戦敗退】
オズワルド(14年)

【一回戦敗退】
くらげ(18年)

【不出場】
カミナリ(11年)
ラランド(14年)※一回戦欠席

昨年大会のファイナリスト・ゆにばーすがまさかの敗退。二年連続で決勝進出を果たし、完全に軌道に乗ったものだと思っていたのだけれども。なかなか難しい。昨年準決勝組では「たくろう」「ニッポンの社長」「侍スライス」「金属バット」「ダンビラムーチョ」「三四郎」「ウエストランド」「マユリカ」「令和ロマン」が敗退。三四郎は準決勝戦の常連だったが、ここで遂に落とされた。

この他、決勝進出経験のある「さや香」「スリムクラブ」「馬鹿よ貴方は」「変ホ長調」「モンスターエンジン」、キングオブコントファイナリストの「ななまがり」「ビスケットブラザーズ」「わらふぢなるお」、2019年に大いなる飛躍を見せた「EXIT」「宮下草薙」「納言」などが敗退。今、EXITや宮下草薙を落とす覚悟よ。