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大阪に行きたいから行ってきたのだ日記(2018年12月23日・24日)

十二月上旬。

大阪に行かねばならぬ、という衝動に駆られる。具体的な理由などは存在しない。ただ、この退屈極まりない日常から逃げ出したい気持ちが、限界を超えてしまったのである。

とはいえ、十二月といえば、年越しという一年の中でも重大なイベントを控えている時期だ。この季節になると、やれ年賀状の準備だ、やれ御節料理の用意だ、やれ今年一年の垢を落とす大掃除だ、人間が勝手に決めた一年の区切りを超えるだけなのに、普段は見向きもしないようなことで追い立てられることになる。理不尽極まりない。子どもの頃は、クリスマスからのお正月と立て続けに敢行されるスペシャルなイベントに心が躍っていたが、三十路も半ばという年齢になると、心が微塵も揺れない。楽しみなのはボーナスと連休だけである。その連休も、大晦日から正月に掛けて行われる準備と実行で明け暮れて、まさに疾走、あっという間に過ぎ去ってしまう。

そんなファッキンな十二月に、一人で大阪に何の理由もなく出かけるなどということは、実家でイチ扶養家族をキメている身の上では、なかなか出来るものではない。……というわけで、家族には学生時代の友人たちと忘年会をやるから広島(※母校がある)に行くと嘘をついて、大阪に行こうと決めたのであった。この家族に対する背信行為は、いずれ自らの身を滅ぼすかもしれない。だが、それほどまでに、私の中で大阪に対する欲求は高まっていたのである。

画して、この恐るべき犯行計画は、速やかに実行された。まずは日程を決める。忘年会と称して大阪へ行くからには、それなりに押し迫った時期を選ばなくてはならない。前後のスケジュールも考慮して、十二月二十三日・二十四日に行くことに決めた。前日の夜に用事があるため、一泊二日の短い旅行になってしまうが、致し方ない。続けて、家族に「広島で忘年会がある」と伝える。まるで疑う素振りを見せない。過去に何度か実際に広島での忘年会に参加している経験が生きている。後は、高速バスと宿泊用ホテルを予約するだけだ。これらもまた同様に、これといったトラブルに見舞われることなく、滞りなく済ませることが出来た。何も問題はない。

これらの必要最低限な準備を進行させている最中、大阪へ出かける目的を決めた。忘年会である。結局は忘年会である。とはいえ、ただの忘年会ではない。お笑い濃度の極めて高い忘年会である。近年、私は東京や大阪でオフ会を敢行するたびに、ブロガーとして築き上げてきた地位に胡坐をかいて、これといった実りのない排泄物のようなトークを意気揚々を繰り広げていた。無論、それはそれで、無邪気で楽しい場だった。だが、ふと思ったのである。「これは、私にとっても、オフ会に参加している人たちにとっても、あまり良くないのではあるまいか」と。これは一方的な妄想でしかないが、私が開催しているオフ会にわざわざ足を運んでくれている皆さんが求めているのは、お笑い芸人のDVDコレクターとしての矜持から発露する含蓄ある意見だろう。それなのに、オフ会で私が口にすることといえば、黒いストッキングの女はエロいだの、黒縁眼鏡の女はエロいだの、俺はひょっとしたら尻フェチなのかもしれないだの、碌な話をしていない。オフ会参加者に私にとって最適なアダルトビデオを探してもらおうとしているとしか思えない。こんなことでは駄目なのである。そこで今回、ちゃんとお笑いの賞レースなどの話をして、きちんと芸人好きとしての自らを律するため、そういう話の出来るメンツを揃えて、忘年会をやろうと思い立ったのである。

早速、そういう話に付き合ってくれそうな、ゴハさん、イシダドウロさん、資本主義さんといった馴染みの顔ぶれ(イシダさんは“鳥貴族会”と呼んでいる)に連絡を取る。資本主義さんにはスケジュールの都合で断られるも、残りの二人からは了承を貰える。こうして三人が揃うわけだが、しかし、このままではただの定例飲み会である。ここに新たなる風として、カフカというコンビで活動している小保内さんを呼びつける。Twitterでは以前から相互フォローの関係にあったのだが、先日、ちょっとリプライでやり取りをしたときに「大阪に来たときには誘ってください!」と向こうからのこのことコメントしてくれたので、まんまと中年たちの飲み会に引きずり込むことにした。会場は鳥貴族をチョイス。重要なのは場ではなく中身である。

また、この話を提案したときに、ゴハさんから「ちょうど来られる日にこんな大会があるんですけど、どうですか?」と、大喜利天下一武道会というイベントへの誘いを受けた。大喜利天下一武道会とは、大阪・東京で予選を行い、それぞれの勝者が横浜本戦で競い合うという全国規模の大喜利イベントである。このようなハイレベルな大会に、かつてネット大喜利をやっていたとはいえ、今ではお笑いに一過言ある一般人でしかない私が参加していいものなのか。しばらく考えるも、「これもまた何かのウンメーではあるまいか」と開き直り、厚顔無恥な面構えで参戦することにしたのであった。

そして数日が過ぎ、十二月二十三日がやってきた。

早朝のバスに乗るため、この日は午前六時半に起きた。普段、会社に行くときと同じ起床時刻なので、それほど苦ではないが眠たい。前日に用意していたショルダーバッグとアタッシュケースを持って、午前七時過ぎに出発。善通寺インターバスターミナルへ向かう。勿論、移動に使うのは、我が愛車である。朝食を取らずに出かけたので、コンビニに立ち寄り、サンドウィッチとコーヒーを買って、運転しながら食べた。普段は米食なので、サンドウィッチを食べているだけで、なんだか特別な気持ちになってしまう。安易だ。午前八時、バスターミナルに到着。以前に利用したときよりも駐車場の敷地面積が狭くなっていたので驚いた(二割ほどバス専用の駐車場になっていた)。午前八時半、出発。バスでの移動中は、スマホのラジオアプリで『オードリーのオールナイトニッポンバカリズムゲスト回)』『爆笑問題カーボーイ』『シソンヌのばばあの罠』などの番組を聴きながら過ごした。

正午を迎えるころ、大阪シティエアターミナル(OCAT)に到着。すぐさま予約していたアムザ(サウナ&カプセルホテル AMZA)へと移動し、チェックインを済ませる。そのままアタッシュケースと不必要な荷物をロッカーに預けて、ショルダーバッグを提げた状態でホテルを出る。当初、この流れで近辺を散策する予定だったのだが、想定していたよりも気温が高かったためか、大量の汗が噴き出してしまい、冬だからなんとかなるだろうと替えを用意していなかったワイシャツがびしょぬれになってしまったので、着替えを買いに行く。幸い、ホテルの隣にあるビックカメラに衣服の専門店が入っていたので、ここで新しいワイシャツを購入。下着類も手軽な値段で売られていたので、今後、大阪に出向く際には、何も持たずにここで衣服を補充するのも良いのかもしれない、と考える。怪我の功名だ。このシャツも翌日まで使わないので、再びホテルに戻り、ロッカーに突っ込む。どうも段取りが良くない。

それから改めて外に出て、大喜利天下一武道会の会場であるなんば紅鶴へと向かう。本来なら、昼食を取りたいところだったが、あまり時間がない。午後二時ごろ、会場前に到着。しかし、辺りは閑散としている。なにやらおかしい。ホームページで開催時刻を確認したところ、開場時刻を三十分ほど勘違いしていたことに気付く。慌てて会場近くにあった三豊麺で昼食。狭い敷地に三階建てという窮屈さが、却って落ち着く。食後、まだ時間が余っていたので、しばらく外を散策してから会場に向かう。

午後二時半、なんば紅鶴に到着。先程とは打って変わって、長い行列が出来ている。大喜利プレーヤーと見学者で列が分かれていたので、プレーヤーの方へ並ぶ。なんとも畏れ多い。受付で参加費の二千円とドリンク代の五百円を支払い、スタッフからドリンクを受け取り、手前の机に広げられたハンドルネームが書かれた名札を取る(こういうのがあると、人の名前を覚えるのも顔を見分けるのも苦手な私にはとても有難い)。なんとなしに後方の女性を見ると、まな!と書かれた名札を取っていて、思わず「ああっ(気付き)」と「おおっ(驚き)」が入り混じった「おああっ」という声が出そうになる(まな!さんは大喜利界隈ではけっこうな実力者なのである)。

中へと進むと、右手にバーカウンターが。メガネをかけた中年の男性が切り盛りしていたので、先程のドリンク券を渡し、ジンジャーエールを貰う。瓶を片手に奥へ進むと、今回のイベントを教えてもらったゴハさんを発見。近くの椅子が空いていたので座る。何か話しかけようと思うも、なにやら女性と話をしていたので、しばらく一人でぼんやりと過ごす。見覚えがある顔だ。以前、何かの大喜利イベントに参加したときにも、ゴハさんと話していたような記憶がある。名札を見ると、ガンジーの生まれ変わり、とある。なんだか大人物を予感させる名前ではないか。彼女は私にも気さくに(と表現するには些か存在感を強めに)話しかけてくれたが、緊張していたために上手く返事できなかった。メンタルが弱い。

午後三時、大喜利天下一武道会の予選会が開始される。

予選会のルールは以下の通り。まず、1stステージとして、六人のプレイヤーによる試合が行われる。文章お題が一問、写真お題が一問。試合終了後、見学者を含めた参加者全員へと事前に配られた投票用紙に、その試合で最も面白かったプレイヤーに割り当てられた番号を記載する。これを三度繰り返したところで、投票結果を確認。各試合ごとの上位二人(計六人)が勝ち抜けとなる。これを前半と後半に分かれて敢行したところで、1stステージは終了。結果、選ばれた十二人が2ndステージへと駒を進める。2ndステージのルールも1stステージと同様。各試合ごとの上位二人(計四人)が勝ち抜けとなり、来年二月に行われる横浜本戦へと進出する。くじ引きの結果、私は前半の第二試合に参戦することになった。早い。早すぎる。もうちょっと他のプレイヤーの回答を見て、場の雰囲気を確認したい。……だが、そんな私のしょっぱい願いなど、誰にも届くわけはなく、あっという間に私の出番が来てしまった。

結論からいうと、まるで歯が立たなかった。ウケなかったわけではない。爆笑とまではいかないにしても、それなりに笑いは起きていたと思う。だが、それは、いわゆる置きにいった笑いだった。例えば、鴨川杯のように審査員が即座に是非を判定するような大会であれば、運が良ければ点数が入っていたかもしれない。だが、大喜利天下一武道会は、全ての試合が終わった後で審査する方式を取っている大会だ。こういう大会で結果を出すには、出鱈目でもハチャメチャでもとにかく印象的な回答を残す必要がある。私の様に経験の浅いプレイヤーは、そうすべきなのである。しかし、私にはそれが出来なかった。ちょっとでもウケるようなことを書かなくてはならないという余裕の無さ、浅ましさが故に。なんとも反省点の多い戦いだった。

早々に戦いを終えてしまった私は、そのまま能天気に大喜利を楽しむことにした。どの人も当然のように面白いのだが、それ以上に状況の凄まじい変化に驚かされた。さっきまで面白い回答を連発していた人の調子が途端に落ちてしまったり、何の存在感もなさそうな人がいきなり大爆笑を巻き起こしたり。面白い人がただ面白いままでは終わらない。まったくもって奥が深い……と、感心していたら、いつの間にかゴハさんが1stステージを勝ち上がっていた。あれ? え? 戸惑っているうちに、2ndステージが始まる。あからさまに緊張しているゴハさん。他のプレイヤーを見ると、大喜利界隈ではよく見かける凄腕ばかり。大丈夫だろうか……と心配しながら試合状況を見守っていると、何故か他のプレイヤーの調子が良くない。お題との相性が良くなかったのか。対して、ゴハさんは予選と変わらぬ安定感。これは行くのでは。もしかしたら横浜へ行くのでは。素直に面白かった人の番号を記入し、投票。ドキドキしながら結果を見守る。結果、なんとゴハさんが予選をトップ通過! その場で崩れ落ちるゴハさん。感極まって、なんば紅鶴のカーテンを引きちぎりそうになるゴハさん。おめでとうございます!

大喜利天下一武道会の予選終了後、勝者のコメント撮りがあるというので、ひとまずゴハさんと別れる。まさか、こんなことになろうとは。梅田の鳥貴族を予約していたので、地下鉄でなんばから梅田へ移動。午後六時二十分、鳥貴族 中崎町店を有するビルの前に到着する。外観が堂々たる雑居ビルで、入るのを躊躇してしまいそう。しばらくして、小保内さんと彼のマネージャーだという人と合流。そこへゴハさんも少し遅れて登場。しかしイシダさんが来ない。DMを送ってみるも反応はない。何かあったのだろうか。そうこうしているうちに予約の時刻が来たので、ひとまず店に入ることに。雑居ビルのエレベーターで上がり、店の中に入ると、そこには店員と話をしているイシダさんの姿が。どうやら先に着いて、エレベーターで上がって、店の前で待っていたらしい。なんだ。

午後六時半、忘年会を開始。M-1やTHE Wの話で盛り上がる。また、小保内さんが関西でどのような活動をされているのか、お笑い界隈の裏話なども大いに展開する。あっという間に二時間が過ぎ、お会計。けっこうな量を飲み食いしたつもりなのに、一人三千円でまとまった。やはり無闇に安い。本来ならば二次会になだれ込みたいところだったのだが、小保内さんもゴハさんも帰ることに。後ろ髪を引かれつつも別れる。残されたイシダさんと二人で揚子江ラーメンの総本店に赴き、忘年会で言いそびれたことをつらつらとボヤきながらラーメンを食べる。食後、店を出て、大阪駅でイシダさんと別れる。本来、喧騒の後の静寂というのは如何ともし難いものだが、なにせ大阪駅は大勢の人で賑わっているので、寂しさを噛みしめる余地を与えてくれない。私は地下鉄でなんばに移動し、アムザへと舞い戻った。大浴場で身体の垢を落とし(ここの露天風呂はいつ入っても居心地が良い)、午前零時を過ぎるころに館内放送のアダルトビデオを見ながら就寝。

明けて十二月二十四日。

午前八時ごろ、カプセル内にて速やかに起床。歯を磨いたり、用便を済ませたり、というような所要の作業を済ませているうちに午前九時四十五分を過ぎる。午前十時にはチェックアウトをしなくてはならないので(これを過ぎると延長料金を取られる)、慌てて荷物をまとめ、ホテルを飛び出す。ひとまず朝食を取ろうと、なんばグランド花月の側にある金龍ラーメンで朝食。相変わらず美味いとも不味いとも言い難い絶妙な味加減がたまらない。食後、心斎橋に赴き、ここでは詳しく書けないような店に入る。朝早い時間帯にも関わらず、既に待合室には何人も客が入っていて、朝からお盛んですこと、などと自らを高く高く棚に上げたことを考える。一時間ほどドッタンバッタンオオサワギし、晴れやかな気分で店を後にする。何やってんだか。

地下鉄でなんばから梅田へ移動。阪急三番街発着のバスで帰るので、その近辺のコインロッカーにアタッシュケースを預けようと思っていたのだが、どこもかしこも埋まっていて、まるで余地がない。仕方がないので、その重たいアタッシュケースを抱えたまま移動する覚悟を決める。重たい。暑い。しんどい。荷物を抱えて、訪れたのは同人ショップとして名高いメロンブックスである。昨晩、鳥貴族を訪れる前に、一瞬だけ立ち寄ったのだが、私好みのフェティッシュな作品を見かけたので、ここで是非とも押さえておきたかったのだ(地元にメロンブックス無いし)。結果、幾許かの同人誌を購入し、アタッシュケースに強引に押し込む。いよいよ重たい。

思う存分、己の欲望を満たしきったところで、従兄弟が切り盛りしているラーメン屋・麦と麺助へと向かう。私の従兄弟は福島で燃えよ麺助というラーメン屋をやっているのだが、麦と麺助はそのセカンドブランド店である。店の前に着くと、そこには二十人余りの大行列が。時刻は午後一時五十分。既に昼時のピークは過ぎていたので、それほど並ばないだろうと予測していたのだが……どうも見積もりが甘かったようだ。とはいえ、乗車する予定の高速バスの発車時刻は午後三時五十分。まだ二時間も余裕がある。ラジオアプリで時間を潰しているうちに、いずれ順番が回ってくるだろう。そう考えた私は、まず『問わず語りの松之丞』を聴いた。三十分が経過した。しかし順番はまだ回ってこない。続けて『シソンヌのばばあの罠』を聴いた。一時間が経過した。それでもまだ順番は回ってこない。……『おおきなかぶ』じゃあるまいし。とはいえ入口の手前までやってきた。残り時間は三十分。これならなんとかギリギリ食べられそうだ……と思っていたのだが、店内を見ると、中にも行列が出来ている。これは無理だ。流石に無理だ。諦めた私は、人数確認のためにたびたび表に顔を出していた店員に列を離れる旨を伝え、急速に阪急三番街へと向かった。……もしや、家族を騙した罰が当たってしまったのだろうか、などと思いつつ。

途中、コンビニで菓子パンと飲み物を購入し、バス乗り場へ。見ると、既にバスは到着しており、運転士が乗客の確認をしている。慌ててチケットを渡し、乗り込む。午後三時五十分、梅田を出発。道中、ラジオを聴きながら過ごしたが、疲れがたまっていたのか、すぐさま眠りについてしまう。気が付けば善通寺インターバスターミナルに到着していた。運転士から駐車場の割引券を受け取って降車。愛車に乗り込み、駐車場を後にして、途中にマクドナルドのドライブスルーでハンバーガーなどを買い食いしながら、午後八時ごろに帰宅。お疲れさまでした。

風呂に入り、一息ついたところで、旅の荷物を整理していると、何か違和感を覚える。メガネがない。普段使い用のメガネとは別に、外出用に持ってきたメガネを入れたケースが見当たらない。さてはホテルに忘れてきたか。急いで電話を掛け、確認してもらうと、どうやらそれらしいものが忘れ物の中にあるらしい。うーむ、本当の罰はこれか!!!