白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

2020年1月の視聴記録

■1月21日。新年を迎えてから、まだ一度も芸人のネタDVDを視聴していないことに気付き、何かを観ねばならぬという衝動に駆られる。自分の中で色々と候補は挙がったが、一応は新年の一発目ということで、それに相応しい作品をと思い、カジャラの最新公演を収録した作品を鑑賞する。

2019年2月から4月にかけて行われた公演を収録。ラーメンズ小林賢太郎が作・演出・出演を担当するコントユニット、それがカジャラだ。キャストを固定していないため、常に多種多様な面々によるパフォーマンスを楽しめるライブとなっている。今回のメンバーは、なだぎ武竹井亮介小林健一、加藤啓、辻本耕志、そして小林賢太郎。竹井と辻本は皆勤賞、小林健一は前回に引き続いて二度目の出演である。それぞれの出演者に見せ場があるのだが、それでもやはりなだぎ武の活躍ぶりは特筆に値する。なにせ基本的な動きにクセがある。他の出演者が同じ時間軸の中で生きているのだとしたら、なだぎは1.3倍速の世界で生きているように見える。ちょうど笑える滑らかなスピード感。そんななだぎに押されてはいたものの、同じく初の出演となった加藤啓もなかなかの活躍。整った顔立ちの彼が働かない男に扮した『在宅超人スウェットマン』は本作を代表するキャラクターといっても過言ではない。次の公演にも期待が高まる。(124分)

■1月23日。何もやる気は起きないが『Aマッソのゲラニチョビ』のDVDを観る。

Aマッソのゲラニチョビ マジカル・オオギリー・ツアー〜ディレクターズカット版〜 [DVD]

Aマッソのゲラニチョビ マジカル・オオギリー・ツアー〜ディレクターズカット版〜 [DVD]

  • 出版社/メーカー: SMM itaku(DVD)(SNDDP)
  • 発売日: 2019/11/27
  • メディア: DVD
 

静岡朝日テレビが開局したインターネットテレビ局“SunSetTV”にて配信されているAマッソの冠番組『Aマッソのゲラニチョビ』で行われた企画『マジカル・オオギリ・ツアー』を収録。Aマッソの二人が大喜利に回答、スタッフが合否を判定し、合格であれば500円が支給されるという設定の元、静岡の観光名所を一泊二日で巡る様子が撮影されている。一見、なかなか厳しい企画のように見えるが、何故か大喜利のお題を用意するのは村上だし、スタッフの判定基準はガバガバだし、随所で良い意味での雑さが浮き彫りになっている。それ故に、本編の映像からはまるで緊張感が感じられない。ただ、Aマッソの二人が追い詰められている空気はひしひしと感じられ、「あんなにも挑発的な芸風のAマッソが追い込まれてる!」という状況で笑ってしまう。結果、Aマッソの発想以外の部分でも魅力が溢れ出ていて、とても面白かった。それにしてもロケの村上は些か自由過ぎるのではあるまいか。(95分)

■1月26日。なんか知らんが、かが屋のDVDを観る。

カロ [DVD]

カロ [DVD]

  • 出版社/メーカー: SMM itaku(DVD)(SNDDP)
  • 発売日: 2019/12/25
  • メディア: DVD
 

お笑い第七世代のコント部門を牽引する若手コンビ、かが屋が自身で選んだ十本のコントを収録しているベスト盤。事前にスタジオ収録と伺っていたので、あまり観る気が起きなかったのだが(ワタシは無機質なスタジオで芸人のネタを収録する映像が大嫌いなのである)、かが屋の洗練されたコントの場合、むしろこの状態での収録に適しているように思えた。母親にドッキリを仕掛ける計画を練る『サプライズ』、合唱コンクールで何故か加賀が過剰に評価される『合唱』、自分の自転車の前でカップルが揉めていて近寄り難い『自転車』など、テレビで観た記憶のあるコントがきちんと押さえられている。キングオブコント決勝の舞台で披露された『花束』もしっかり収録。ただセットがかなり簡素化されてしまったため、ちょっと地味に見えたかも。いずれのコントも面白かったが、オーラスのコント『田舎の家族』があまりにも底意地の悪いネタで大笑い。「人を傷つけない笑い」の筆頭であるかのように語られがちなコンビの、本当の側面を見せつけられたような気がした。ちなみに、パッケージには「本編 48分」と書かれていたが、実際の本編時間は一時間以上だった。ご注意。

■1月27日、そういえば面白いと薦められていた、うしろシティのDVDを観る。

うしろシティ単独ライブ「人生に、エクスカリバーを。」 [DVD]

うしろシティ単独ライブ「人生に、エクスカリバーを。」 [DVD]

  • 出版社/メーカー: SMM itaku(DVD)(SNDDP)
  • 発売日: 2019/11/27
  • メディア: DVD
 

2019年6月から8月にかけて行われた単独ライブを収録。Twitterでフォローしていただいている方から「今回のうしろシティは面白かったです!」と事前に言われていたので、かなり期待した状態で観賞したのだけれど、今回もあまりときめかず。面白くないわけではない。面白いことをやっているというのは伝わってくる。ただ、単純にときめかない。もうちょっと明確に書くなら、これらのコントをうしろシティが演じなくてはならない意義を感じない。良くも悪くも器用にこなしているために、うしろシティというコンビの根幹に触れるようなネタが見られない。強いていえば、ライブの終盤で披露された『寿司屋のサービス』と『カードバトル』が、それなりにうしろシティの視点っぽかったような気がする。特に『寿司屋のサービス』は、人間の無意識に生じているシステムをシニカルに切り取ったようなコントで、あの往年の名作『寿司屋』を彷彿とさせた。うしろシティと寿司屋は相性が良い。

明けて1月28日、特典映像『エクスカリバー的スイカ割り旅』を鑑賞。ライブの幕間に流された映像の完全版とのこと。スカイツリーにいるうしろシティが、どちらかが目隠しして、残ったどちらかが声で指示を出して、お台場の砂浜に置かれたスイカの元へと向かう……という企画が行われている。これがなかなか良かった。阿諏訪が目隠しをして、金子が指示を出すことになったのだが、とにかく金子がフザケ倒し、阿諏訪を翻弄するのである。その姿があまりにも悪童で、面白かった。この感じがコントでも出せるといいのだけれども。(本編72分+特典22分)

■1月30日。今年リリースの作品も観なくてはと、まんじゅう大帝国を観る。

詰め合わせ [DVD]

詰め合わせ [DVD]

  • 出版社/メーカー: SMM itaku(DVD)(SNDDP)
  • 発売日: 2020/01/29
  • メディア: DVD
 

タイタンに所属する若手漫才師、まんじゅう大帝国が自身で選んだ十本の漫才を収録したベスト盤。こちらも無機質なスタジオで収録されているが、漫才の世界観が出来上がってしまっているためなのか、それほど違和感はない。ドアのインターホンの音を聴いて「クイズの正解したのでは?」と勘違いするくだりで幕を開ける『ピンポン』、楽に売れるために自分で自分のものまね芸人になって売れようと思うなどと戯言をヌかす『ものまね』、挨拶に行くたびに何度も何度も娘を嫁に出してしまう不条理さがたまらない『結婚の挨拶』など、過去に観て衝撃を受けたネタがおよそ全て収録されている。とても嬉しい。ただ、本作で初めて目にしたネタは、どこか考えすぎているような印象を与え、先述のネタのようなバカバカしさが弱まっているように思えた。面白いネタを作り続けることの難しさをしみじみと。とはいえ、まだ結成から三年ほどしか経っていないコンビなので、まだまだこれからだろう。その進化を見逃さないように気を付けていきたい。(47分)