土曜深夜の視聴覚室

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「番組バカリズム3」(2015年11月25日)

番組バカリズム3 [DVD]

番組バカリズム3 [DVD]

 

2015年3月20日にBSプレミアムで放送されたバラエティ番組「番組バカリズム3」を収録。バカリズムがこれまでにライブで演じてきたパフォーマンスの再演に加え、豪華ゲストを迎えた撮り下ろし映像を収録した、充実した内容となっている。演出は「戦国鳥獣戯画 乙」「住住」「架空OL日記」などの話題作を手掛けている住田崇が担当。その他、オークラ(脚本)、カンケ(音楽)、ニイルセン(イラスト)など、過去二回の番組制作にも関わってきたクリエイターたちが参加している。

演じられているコントは全六本。過去二回の放送分を思うとやや少なめに感じられるが、それぞれじっくりと時間をかけた味わいある作品に仕上がっている。

若林正恭(オードリー)をゲストに招いた『TAKE-2』は、ドキュメンタリー番組の撮影が入ることになってテンションが上がってしまったスーパーの店長が、万引き主婦と店員のやり取りをテレビスタッフにウケるように演出するというコント。視聴率を取れると判断されるような演出を考案する店長(バカリズム)もさることながら、ツッコミを入れながらも巻き込まれていく店員(若林)がいい。日ごろ、春日俊彰という怪人を相手にしているだけあって、実に適切な対応を見せている。

一般の素人がテレビ的なるものに呑み込まれていく展開から察するに、恐らくこのコントは『万引きGメンターテイメント』(テレビの密着取材が入っているのに万引き犯罪がまったく起こらないことに焦りを感じた万引きGメンが、一般客を万引き犯を仕立て上げてしまうコント。『バカリズムライブ「キックオフ!」』収録)をモチーフにしているのだろう。だが、徹底的に不条理な展開にすることでバカリズムが一人でボケを背負い込んでいた『万引きGメンターテイメント』に対し、『TAKE-2』は若林という受け手が存在することで、かなり受け入れられやすくなっていたように思う。

ピンとコンビの違いといえば、様々な角度から歴史上の出来事を考察する歴史番組において、バカリズム演じる大学教授が「“本能寺の変”をどっきり特番とした場合においける当日の収録スケジュール」について解説する映像コント『考える歴史』でも同様のことを感じた。元ネタは『バカリズムライブ番外編「バカリズム案7」』で披露された『歴史に関する案』である。元ネタでは、バカリズムが客席に向かって一方的に先述の解説を行うのだが、『考える歴史』では相手役としての伊藤綾子を配置することで、より重層的な笑いを生み出している。転じて、全てを一人で処理しなくてはならない、ピン芸人の苦労について考えさせられる今日この頃である。

個人的に一番好きだったのは、オーラスのコント『田口の恩返し』。一人暮らしの男の家に、何の前触れもなく美女(菜々緒)がやってくる。実は彼女の正体は、男が数日前に財布を拾って交番に届けてあげた中年男・田口だった。田口は美女に変身し、男の元を訪れたのである……。有名な童話「鶴の恩返し」を人間に置き換えたコント。人間(中年男)が人間(美女)に化けるという設定がとても異常に感じられるが、そうなると鶴が女に化けて恩返しにやってくるという元々の話はどうなるのだということになり、その着眼点の妙にしみじみと感心させられる。ただ、私が気に入っているのは、オチの描写だ。あまり細かいことは書けないが、とても鮮やかで、それでいて含みのあるオチになっている。是非、ご確認いただきたい。

これら本編に加えて、本作にはバカリズム自身による副音声コメンタリーも収録されている。基本的には、コントで共演した芸人・役者たちについて語られているのだが、唯一の舞台コント『女子と女子』のコメンタリーに関しては、ちょっと毛色が違っている。あのシニカルなイメージの強いバカリズムが、かなりマジメなトーンで『女子と女子』が生み出された経緯について細かく語っているのである。当時、「ENGEIグランドスラム」(2015年5月30日放送)でこのコントを披露し、「女子への恨みが滲み出ている」云々と言われたことが、よっぽど本人にとって心外だったのだろう。クリエイターとしてのプライドが剥き出しになった、とても珍しい瞬間だった。

ところで、『番組バカリズム4』はもうやらないのだろうか。今や脚本家としても多忙を極めるバカリズムには、もはやこういった番組を手掛ける余裕は無いのかもしれないが……忘れた頃に戻ってきてもらいたいものである。

■本編【59分】

「TAKE-2」「歌う人生劇場」「女子と女子」「烈火の如く」「考える歴史」「田口の恩返し」

■特典

バカリズムによる音声解説