「誰も傷付けない癒しの笑い! 全日本ほんわかネタ選手権」。
テレビではまだまだ見る機会の少ない若手芸人がネタで競い合っていた前番組の方針から一転、中堅芸人のレギュラー出演者を増やして若手メインのコーナーを大幅に削減するという改悪を見せていた第一回放送に呆れ果て、もう視聴の継続は中止しようと心に決めていたのだが、上記企画に“あるあるの帝王”こといつもここからが出演するというので迂闊にも鑑賞。「コンプライアンスが厳しい昨今、尖った笑いよりも家族で安心して楽しめるほんわかな笑いが求められている」というコンセプトの元、厳選された六組の芸人がほんわかな笑いで競い合う。
ニッチェ「ハートフルショートコント」(97点)
カミナリ「10回クイズ」(58点)
大自然「気球に乗って」(81点)
いつもここから「かわいいね」(29点)
マツモトクラブ「嘘を見破る犬」(81点)
我が家「ローテーション漫才」(53点)
一応、賞レースという設定で開催されたのだが、一番手のニッチェがとんでもない点数を叩き出してしまったため、あっという間に緊張感もへったくれもない事態に。その結果、司会のウッチャンはネタを採点している観客へとツッコミを飛ばし、ほぼ王者になることが確定してしまったニッチェは暫定ボックスの中でボケまくるという、まさに「ほんわか」な状況が生み出されていた。こういう、ゆるーいぬるーい面白さを最大限に引き出せるところが、ウッチャンの強みである。
結果に関しては、それなりに妥当という印象。母と娘のベタな人情ドラマをコント的に強調して演じることで笑いを生み出していたニッチェ、天然じみた白井のボケに対して里の懐の広すぎるツッコミ(というか介護?)が笑いにしっかりと昇華されていた大自然、見栄と恥で塗り固められた気持ちをファンタジー色の強い設定でコント化していたマツモトクラブ、それぞれ「ほんわか」という主題にきっちりと噛み合っていた。
対して、視聴に耐えうる出来ではなかったのが、大トリを任されていた我が家。坪倉の下ネタを杉山が受け入れてしまうように改変された「ローテーション漫才」を披露していたのだが、とにかく酷い出来だった。何が酷かったって、杉山の演技力が酷かった。坪倉の下ネタが実は好きで好きでたまらなかったというようなことを口にし続けるのだが、まったく言葉に気持ちが乗っかっていない。彼らよりも前に、カミナリが激しいツッコミの後に優しくフォローするという、ちょっと方向性の似ているスタイルの漫才を披露していたこともあって、その表現力の差がはっきりと表れてしまっていた。
ちなみに、最低点を叩き出してしまったいつもここからに関しては、そもそも芸風が「ほんわか」とは真逆を向いているので、これはもう仕方がないだろう。今回、披露していた『かわいいね』も、ちょっとした思惑や失敗による戸惑いを「かわいい」と悪意たっぷりに表現するネタなので、そりゃ評価されるわけがないのである。
若手メインのコーナー「これからチャップリン」には、笑撃戦隊・トンツカタン・しゃもじの三組が出場。一分間のネタで競い合っていた。『じわじわチャップリン』以前の戦いが無かったかのような扱いに、どうにもこうにも腹が立つ。あと、一分間のネタで競い合うというゼロ年代末期のショートネタブームをなぞったようなシステムを、シンプルで面白い大衆向けの笑いが評価されている今の時代に復活させたセンスのダサさにも腹が立つ。個人的にはしゃもじが面白かった。……『じわじわチャップリン』二代目チャンピオンだっつの! 面白いに決まってるだろ! 全部リセットしやがって! 馬鹿野郎。