白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

新春「ソン」「スン」ショー

ラジオ日本をキーステーションに全国放送中のラジオ番組ザ・ビートルズ10』

2004年の放送開始以来、ビートルズの公式発表曲と解散後に発表されたオリジナルソングの中からリスナーによる投票を行い、その集計データに基づくオリジナルのランキングを発表するという企画を毎週行っているクレイジーな番組である。昨年の12月31日、この『ザ・ビートルズ10』において、とある投票企画が敢行された。その企画タイトルは「あなたのジョージは「ソン派」「スン派」?」ビートルズのメンバーであるジョージの苗字にあたる部分を「ハリソン」と呼ぶか「ハリスン」と呼ぶか、リスナー投票を行ったのである。当初、日本国内ではジョージの名前を“ジョージ・ハリソン”と表記していたのだが、英語読みでの正確な発音に近づけた表記にした方が良いという時代の流れから、現在では“ジョージ・ハリスン”と表記されるようになっている。いわば日本国内においては二つの呼び方が存在してしまっている状況にあるわけだ。投票の結果は“ジョージ・ハリスン”派が八割と圧勝。大晦日の放送ということもあって、そのまま番組は大盛り上がりのままエンディングを迎えていた。……が、私の頭の中では、とある疑問が渦を巻いていた。「そういえば俳優の“ハリソン・フォード”は“ハリスン”じゃないのか?」と。調べてみると、ジョージ・ハリスンは【George Harrison】、ハリソン・フォードは【Harrison Ford】で、どちらも綴りは同じ。ただ、ジョージ・ハリスンはイギリス出身、ハリソン・フォードアメリカ出身、生まれてきた国が違うから発音も違うのか……と、自分の中で納得しかけていたところで、新たな疑問が。「そういえばホームズの助手も“ワトスン”と表記されているけれど、そうなると“エマ・ワトソン”はどうなるんだ?」と。こちらも調べてみると、ホームズの助手のワトスンは【John H. Watson】、エマ・ワトソンは【Emma Watson】で、これまたどちらも綴りは同じ。しかも、どちらもイギリスの国籍の模様。どうなっているのかしらと思っているうちに、根本的な疑問がふつふつと。「そういえば“〇〇スン”って表記の外国人がそんなにいないような?表記違いの基準ってなんなんだ?」。試しにWikipediaで「ハリソン」の項目を調べてみると、ジョージ・ハリスンとマイケル・ジョン・ハリスン(作家)以外はすべて「ハリソン」表記。「ワトソン」の項目に至っては、助手のワトソン以外はすべて「ワトソン」表記である。こうなると、もはや発音どうのこうのではなく、日本語表記を決めている人間のエゴが働いているのでは……? 結局、うっすらとは調べてみたものの、よく分からないまま現在に至った次第である。プロの翻訳者にでも質問すれば、納得できる答えを得られるかもしれないが、そこまでの興味もないので、本文はここで終わる。もしも気になる読者がいるならば、それぞれヒマなときにでも調べてみてください。