白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「にちようチャップリン」(2018年4月15日)

  • インディアンス【96点】

「漫才:高級レストランでデート」。ホテルの最上階にある高級レストランでデートしたらモテるんじゃないかという木村の提案に対して、フザケたボケで対応していく田渕。以前に同じ設定の漫才を演っていた彼らを見たことがあるような記憶があるのだが、当時よりもずっと田渕のボケが暴走していて、それなのに適度に元の話題へと戻ってくるバランス感がきちんと向上している点にうっすらと感動を覚えた。ただ、それが却って、田渕の暴走を予定調和であるように見えてしまって、それに伴い、面白いのだけれども乗り切れない部分を作ってしまっているようにも感じられた。結果、改めてアンタッチャブルの偉大さに気付かされている。厳しい道だ。

  • しずる【90点】

「コント:蜂」。追試中、教室に入ってきた蜂に何故か先生ばかりが刺され続けるのだが、平静を装い続ける。生徒の前で平静であり続けようとしているのに、蜂に刺されるたびについつい「んっ」と濁った声でリアクションを取ってしまうギャップが可笑しみに昇華されているコント。切り口は面白いし、それなりに丁寧に作り込まれてはいるが、最後の最後で「先生だけが何故か蜂に刺され続けている」という設定の粗に言及するオチは、上手い落としどころを見つけられなかったが故の苦肉の策という風で勿体無い。

  • 三拍子【82点】

「漫才:遊び」。「馬跳び」を知らないという高倉に久保が遊び方をレクチャー。いつだったかのM-1グランプリ敗者復活戦で披露されていた記憶がある。動きメインのネタだが、「おしりどんぐり」「馬インザスカイ」など、ところどころに引っ掛かる表現をきちんと残しているところに、三拍子の漫才らしさを感じさせられた。後半の「助走をつけている高倉のボケが気になって馬の姿勢を崩してツッコミを入れる久保」のやり取りもバカバカしくて面白かった。ただ、動き重視のネタになっていたため、あんまりボケの本数を詰め込めなかったのが残念。あと、“正統派漫才師”として紹介されていたのに、躍動感にあふれる漫才をやっていたのは、ややチョイスミスのような気がしないでもない。

ポール牧野」。ポール牧野によるポールダンス風のパフォーマンスとともに繰り広げられる一言ネタ。「THE W」決勝戦のステージでも披露されていたパフォーマンス。ポジティブな視点からの自虐ネタと不思議なビジュアルによる洗練されていない仕草が笑いに昇華されている。逆にいえば、それを事前の説明もなく、観客に伝えられる表現力が評価されるべきなのかもしれない。ひょっとするとハリウッドザコシショウレベルの芸人に成り得るといえるのか。ただ、先にも書いたように、ネタの内容はあくまで自虐ネタなので、そこのオリジナリティに欠けるのが勿体無い。

「コント:二人羽織」。新人歓迎会で二人羽織をすることになった二人が、早速練習を開始するのだが……。二人合わせて体重二百キロ超えを自称しているコンビだけあって、ネタの内容も自身のビジュアルに特化したものが主。ただ、どちらも太っているためか、それぞれのデブ発言に対してツッコミを入れず、呑気に爆笑で乗り切ってしまうところに、現代性を感じる(ネタの後、小池栄子の体型を褒める流れには笑った)。とはいえ、ネタの内容に意外性が感じられず、もう少しオリジナリティを見せていくようにしないと単なるデブキャラで終わってしまいそうな気もする。タイムマシーン3号のような語彙力を身につけられるかどうか。

「コント:バスガイド」。東京を案内する観光バスのガイドの左手が明らかに人間のモノではなく、名物名所よりもそっちの方が気になって仕方がない。「左手が明らかに人間のモノではない」というボケを延々と消費し続ける手法は如何にもジグザグジギーらしいが、そのしつこさが上手く表現されておらず、ただ単純にボケのバリエーションが少ないだけのコントに見えてしまう。また、これと同じ傾向のコントを、既にしずるが演ってしまっていたので、余計に物足りなさを感じた。手にまつわるエピソードをもう少し掘り下げていれば、より印象にも残ったのだろうが、それはそれでジグザグジギーらしさが失われてしまいそうでややこしい。

  • 永野【72点】

「おもしろネタ4連発」。「TSUTAYAのテーマソング」「ノリノリで香水をつけるとこ」「コント:台風の中、キャバクラに行く人」「くまさん応援大会」の四本を披露。メディア的にはすっかり飽きられてしまった感のある永野だが、こうしてパフォーマンスを見ると、当時と違わぬポップさとキレ味を兼ね備えていて、まるで色褪せていない。このまま色褪せることなく、静かにメディアから姿を消していくのだろう。それでいいのか。それにしても、千鳥大悟もコメントしていたが、「くまさん応援大会」だけはこの場で披露する理由がまったく分からない。ライブであれば、会場の空気を一つにまとめるための準備として理解できるのだが、テレビの舞台で披露する意味とは。

1位のインディアンス、2位のしずるが勝ち上がり。

【次回(4月22日)の出場者】

インディアンス(3週目1位)

鬼越トマホーク(2週目2位)

しずる(3週目2位)

ジェラードン(1週目1位)

プラス・マイナス(2週目1位)

ペンギンズ(1週目2位)