白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「にちようチャップリン」(2018年4月8日)

  • 3時のヒロイン【74点】

「コント:妖精」。妖精を見つけるために森へと足を踏み入れた姉妹の前に現れたのは、デカくてダンサブルな妖精だった。強烈なビジュアルと無邪気な印象のキャラクターが暴れ回るという意味では、前回の放送でジェラードンが披露していたコントを彷彿とさせる。後半、急にグロテスクな部分を見せたという点も似ていたが、こちらはそれがあまり観客に伝わっていなかったように思う。途中、姉がダンスを楽しみ始めてしまう展開も、冷静に考えるとバカバカしいのだが、これまたあんまり伝わっていなかったような。もうちょっと笑いへと昇華させる流れを作らなくてはならないところか。基本的には、「妖精が見える姉」と「妖精が見えない(=自身が思い描いている妖精のイメージで捉えている)妹」のギャップを軸としたコント。元アイドルという福田のツッコミが上手い。

  • プラス・マイナス【88点】

「漫才:転校生」。小学生だった頃に父親の仕事の関係で引っ越し・転校を繰り返していたという岩橋の話をきっかけとした、転校生をテーマにした漫才コント。兼光のアニメキャラのモノマネで観客の興味を惹きつけ、シンプルな言い間違いを多用したボケで笑いを巻き起こす構成が、実に手慣れている。「転校生の挨拶」「友達」「お別れ」の三部構成になっていて、きちんと全体の流れを意識しているあたりも上手い。ただ、この上手さがむしろ、彼らの進化を止めてしまっているような気もする。結成十五年目、この辺りが正念場か。

「コント:くだもの子」。フルーツ女子・くだもの子に扮した脳みそ夫による一人コント。「考えがあまおう!」「ばればれバレンシア!」「恥ずかジューシー!」など、台詞の随所に果物(および果物を彷彿とさせるワード)を混入させることで、言葉遊びの上手さと意外性による笑いを引き出している。以前にも書いたような気がするが、やっていることはダンディ坂野ジョーク集と大して変わらない。それが観客にハマるかどうかだろう。あと、これはネタの内容と直接は関係無いが、脳みそ夫がネタ中に「こんちわ~す」と口走るのは彼が不安を感じている時らしいので、そのことを意識しながらネタを観ると、また少し違った面白さが湧き上がってくるかもしれない。

  • ハナコ【76点】

「コント:カレー店」。ナンとライスがおかわり自由なカレー屋さんにやってきた青年は、何故か他の客からナンのおかわりを頼まれたご主人が激怒している姿を目撃してしまい……。不条理な事態に遭遇してしまった当事者ではなく、それを目撃した第三者が心境を語り続けるというスタイルのコント。そのためなのか、どうしてご主人がナンのおかわりを注文されると激怒するのか、その理由は最後まで分からないままなのだが、特にしこりは残らない。また、激怒するご主人・激怒される他の客、どちらに非があるのかが曖昧にすることで、理不尽な状況にまでは至っていない点も絶妙。しかし、なにより注目すべきは、ご主人の造形に対するこだわり。衣装、ビジュアル、語り口、全て完璧ではないだろうか。

「漫才:バスのアナウンス」。バスの中に流れるアナウンスのスイッチをやってみる。随分とニッチなテーマに驚かされたが、要するに、バスのアナウンスを上手く喋ることが出来ないともしげの魅力的なダメさを引き出している漫才である。あまりにも出来ないので、何処までが台本で何処までがアドリブなのか、観ているだけではまったく分からない。結果、後には何も残さない、何も残らない漫才として成立させられている。このバランス感のまま、更に洗練されていったら、とんでもないことになりそう。

  • 鬼越トマホーク【80点】

「漫才:流れ星」。流れ星を目撃したのにお願いが出来なかったという坂井が、相方の金ちゃんに願い事を決めておくように指示する。若手芸人特有の願い事を提案する金ちゃんに対して、ちょっとサイコな切り口から反論する坂井のしゃべくり漫才。それぞれのキャラクターがぶつかり合うやり取りだけでも面白いのだが、「卵から産まれた」「俺は宗教やってるって思われたくねえんだよ!」など、印象的なワードも残せている点が魅力的。ただ、バリエーションがあまりにも少ないため、いずれ枯渇するのではないかと危惧するところも。

「コント:会議」。朝の会議に五分ほど遅刻してきたサラリーマンが目にした、その五分の間に片付いてしまったという数々の案件とは。2014年の単独ライブ「それにしてもへんな花」で披露されたコント。単独ではもっと色々な案件が拾い上げられていて、よりサラリーマンを演じる金子が翻弄されていく様が丁寧に描かれていたのだが、番組では時間の関係か「サングラス」「2億」「転勤」のくだりだけが取り上げられていた。この辺りの描写不足が、点数の低さに繋がってしまったのだろうか。……それにしても、もうちょっと点数を稼いでも良かったような気もするが。ただ、オチに関しては、上手いようなそうでもないような、ふわっとした印象が残るので、もうちょっとしっくりくるカタチを模索してほしいような。

1位のプラス・マイナス、2位の鬼越トマホークが勝ち上がり。

【次回(4月15日)の出場者】

 インディアンス

三拍子

ジグザグジギー

しずる

どんぐりパワーズ

永野

牧野ステテコ