白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「にちようチャップリン」(2018年4月22日)

  • インディアンス【90点】

「漫才:きむが元気ない」。相方がコンビを結成したころに比べて元気が無くなってきたという田渕に対し、元気いっぱいの姿を見せようとする木村だったが、何を言ってもやっても反論されてしまう。通常、インディアンスの漫才は木村の話が先行し、田渕がそれにいらぬボケを付け足していくスタイルを取っていたが、今回は木村の言い分に対して田渕がボケやツッコミを打ち返していくスタイルにシフトチェンジ。結果、従来のネタよりも漫才として噛み合っているし、田渕のスタンスも木村を追い詰めるという点では統一されているので違和感がない。新しいインディアンスの扉が開いたような漫才だった。

「コント:サプライズ」。テキトーな理由で家に呼んだ友達に、サプライズパーティを用意している二人。ケーキもプレゼントも用意して、二人の間でしか通じない暗号も考えて、しっかり準備万端で待ち構えていたのだが、そこで思わぬハプニングが……。明らかにチョイスミスな暗号のフリが大き過ぎて、そちらにばかり意識がいっていたところ、その隙を突くかのように繰り出された「緊急事態の合図」「オリジナルのバースデーソング」などの表現力重視のボケにまんまと飲み込まれてしまった。否、むしろ暗号ボケがきちんと機能するように作られているからこそ、伝わるかどうか分からない表現力重視ボケを安心してぶつけられるのだろう。序盤のどうでも良さそうなボケをフリにしたオチも上手い。

  • プラス・マイナス【92点】

「漫才:街づくり」。自分で街を切り開いていくゲームにハマッているという岩橋が、舞台上でお互いに街を作っていって、どちらがより良い街を作ることが出来るか勝負しようと提案する。慣れた手つきで街に必要な施設を建築していく岩橋に対して、我が道を突き進んでいく兼光の奔放さが楽しい。そんな朗らかな気持ちをブチ壊すように始まる「大仏・小仏」についての激論を重ねていくくだりは、これまたあまりの下らなさに笑ってしまった。どうでもいい。心底どうでもいい。それでいて終盤、「おぎゃあ」のくだりにはちょっと感動を覚えてしまった。これほどまでに観客の視点を右へ左へ転がしてくれる漫才も珍しい。面白かった。

  • ペンギンズ【82点】

「アニキ漫才 ~小道具卒業~」。小道具に頼り過ぎだとアニキに注意されたノブオが、泣きながらアニキに小道具を手渡していく。用意してきた小道具のチョイスと所持している小道具の異常な多さが笑いに昇華されているネタ。決して賞レースで勝てるタイプのネタではないが、こういう場だからこそ出来るイレギュラーなネタを用意してきたことに好感を覚えるし、道具のチョイスもきちんと考えられていて(ゴムチキン三連発は笑った)、楽しかった。アニキのオチも見事。

  • 鬼越トマホーク【84点】

「漫才:キャラがほしい」。コンビにキャラが無いと思っている坂井が、様々なキャラクター要素をコンビに付け加えていこうとする。何の説明もなく坂井が「双子設定の漫才」「ハーフ設定の漫才」を始めようとするくだりがたまらなく好き。見た目がアウトローなのに、意外とこういうベーシックなくだりをそつなくこなすコンビである。そこからコントに入るまでのくだりはやや歪な流れになっていたが、それら全てを「コワモテが出来る全ての漫才コントはサンドウィッチマンがやってるよ」の一言で集結させてしまったのは凄かった。妙に内容に熱が篭っているのは、幾らか本音も反映しているからなのだろうか。そして終盤、まさかの展開で一気に畳み掛ける。売れない芸人ならではの悲哀をテーマにしているのに、それをまったく感じさせない安定感。良かったな。

  • しずる【80点】

「コント:高橋英樹」。二人が入った喫茶店に偶然にも高橋英樹が。でも、当人か他人の空似か分からない。そこで池田が確認に行くことに……。既に高橋英樹ではないと分かっているにも関わらず、村上に促されて何度も何度も確認に行かされる池田の不条理な境遇がたまらない。ただ、池田は池田で、不満を口にしながらもまるで積極的に確認しに向かっているように立ち振る舞っているため、不快感のようなものは覚えない。このバランス感が良い。ただ、ややブラック色の強いオチは、しずるの得意な手法をそのままお手軽に持ち込んだだけのように見えて、なんだか勿体無い。

1位のジェラードンが四月の月間チャンピオンに決定。

【次回(4月29日)の出場者】

アイデンティティ

アキラ100%

笑撃戦隊

天狗

トンツカタン

はなしょー

「にちようチャップリン」(2018年4月15日)

  • インディアンス【96点】

「漫才:高級レストランでデート」。ホテルの最上階にある高級レストランでデートしたらモテるんじゃないかという木村の提案に対して、フザケたボケで対応していく田渕。以前に同じ設定の漫才を演っていた彼らを見たことがあるような記憶があるのだが、当時よりもずっと田渕のボケが暴走していて、それなのに適度に元の話題へと戻ってくるバランス感がきちんと向上している点にうっすらと感動を覚えた。ただ、それが却って、田渕の暴走を予定調和であるように見えてしまって、それに伴い、面白いのだけれども乗り切れない部分を作ってしまっているようにも感じられた。結果、改めてアンタッチャブルの偉大さに気付かされている。厳しい道だ。

  • しずる【90点】

「コント:蜂」。追試中、教室に入ってきた蜂に何故か先生ばかりが刺され続けるのだが、平静を装い続ける。生徒の前で平静であり続けようとしているのに、蜂に刺されるたびについつい「んっ」と濁った声でリアクションを取ってしまうギャップが可笑しみに昇華されているコント。切り口は面白いし、それなりに丁寧に作り込まれてはいるが、最後の最後で「先生だけが何故か蜂に刺され続けている」という設定の粗に言及するオチは、上手い落としどころを見つけられなかったが故の苦肉の策という風で勿体無い。

  • 三拍子【82点】

「漫才:遊び」。「馬跳び」を知らないという高倉に久保が遊び方をレクチャー。いつだったかのM-1グランプリ敗者復活戦で披露されていた記憶がある。動きメインのネタだが、「おしりどんぐり」「馬インザスカイ」など、ところどころに引っ掛かる表現をきちんと残しているところに、三拍子の漫才らしさを感じさせられた。後半の「助走をつけている高倉のボケが気になって馬の姿勢を崩してツッコミを入れる久保」のやり取りもバカバカしくて面白かった。ただ、動き重視のネタになっていたため、あんまりボケの本数を詰め込めなかったのが残念。あと、“正統派漫才師”として紹介されていたのに、躍動感にあふれる漫才をやっていたのは、ややチョイスミスのような気がしないでもない。

ポール牧野」。ポール牧野によるポールダンス風のパフォーマンスとともに繰り広げられる一言ネタ。「THE W」決勝戦のステージでも披露されていたパフォーマンス。ポジティブな視点からの自虐ネタと不思議なビジュアルによる洗練されていない仕草が笑いに昇華されている。逆にいえば、それを事前の説明もなく、観客に伝えられる表現力が評価されるべきなのかもしれない。ひょっとするとハリウッドザコシショウレベルの芸人に成り得るといえるのか。ただ、先にも書いたように、ネタの内容はあくまで自虐ネタなので、そこのオリジナリティに欠けるのが勿体無い。

「コント:二人羽織」。新人歓迎会で二人羽織をすることになった二人が、早速練習を開始するのだが……。二人合わせて体重二百キロ超えを自称しているコンビだけあって、ネタの内容も自身のビジュアルに特化したものが主。ただ、どちらも太っているためか、それぞれのデブ発言に対してツッコミを入れず、呑気に爆笑で乗り切ってしまうところに、現代性を感じる(ネタの後、小池栄子の体型を褒める流れには笑った)。とはいえ、ネタの内容に意外性が感じられず、もう少しオリジナリティを見せていくようにしないと単なるデブキャラで終わってしまいそうな気もする。タイムマシーン3号のような語彙力を身につけられるかどうか。

「コント:バスガイド」。東京を案内する観光バスのガイドの左手が明らかに人間のモノではなく、名物名所よりもそっちの方が気になって仕方がない。「左手が明らかに人間のモノではない」というボケを延々と消費し続ける手法は如何にもジグザグジギーらしいが、そのしつこさが上手く表現されておらず、ただ単純にボケのバリエーションが少ないだけのコントに見えてしまう。また、これと同じ傾向のコントを、既にしずるが演ってしまっていたので、余計に物足りなさを感じた。手にまつわるエピソードをもう少し掘り下げていれば、より印象にも残ったのだろうが、それはそれでジグザグジギーらしさが失われてしまいそうでややこしい。

  • 永野【72点】

「おもしろネタ4連発」。「TSUTAYAのテーマソング」「ノリノリで香水をつけるとこ」「コント:台風の中、キャバクラに行く人」「くまさん応援大会」の四本を披露。メディア的にはすっかり飽きられてしまった感のある永野だが、こうしてパフォーマンスを見ると、当時と違わぬポップさとキレ味を兼ね備えていて、まるで色褪せていない。このまま色褪せることなく、静かにメディアから姿を消していくのだろう。それでいいのか。それにしても、千鳥大悟もコメントしていたが、「くまさん応援大会」だけはこの場で披露する理由がまったく分からない。ライブであれば、会場の空気を一つにまとめるための準備として理解できるのだが、テレビの舞台で披露する意味とは。

1位のインディアンス、2位のしずるが勝ち上がり。

【次回(4月22日)の出場者】

インディアンス(3週目1位)

鬼越トマホーク(2週目2位)

しずる(3週目2位)

ジェラードン(1週目1位)

プラス・マイナス(2週目1位)

ペンギンズ(1週目2位)

「にちようチャップリン」(2018年4月8日)

  • 3時のヒロイン【74点】

「コント:妖精」。妖精を見つけるために森へと足を踏み入れた姉妹の前に現れたのは、デカくてダンサブルな妖精だった。強烈なビジュアルと無邪気な印象のキャラクターが暴れ回るという意味では、前回の放送でジェラードンが披露していたコントを彷彿とさせる。後半、急にグロテスクな部分を見せたという点も似ていたが、こちらはそれがあまり観客に伝わっていなかったように思う。途中、姉がダンスを楽しみ始めてしまう展開も、冷静に考えるとバカバカしいのだが、これまたあんまり伝わっていなかったような。もうちょっと笑いへと昇華させる流れを作らなくてはならないところか。基本的には、「妖精が見える姉」と「妖精が見えない(=自身が思い描いている妖精のイメージで捉えている)妹」のギャップを軸としたコント。元アイドルという福田のツッコミが上手い。

  • プラス・マイナス【88点】

「漫才:転校生」。小学生だった頃に父親の仕事の関係で引っ越し・転校を繰り返していたという岩橋の話をきっかけとした、転校生をテーマにした漫才コント。兼光のアニメキャラのモノマネで観客の興味を惹きつけ、シンプルな言い間違いを多用したボケで笑いを巻き起こす構成が、実に手慣れている。「転校生の挨拶」「友達」「お別れ」の三部構成になっていて、きちんと全体の流れを意識しているあたりも上手い。ただ、この上手さがむしろ、彼らの進化を止めてしまっているような気もする。結成十五年目、この辺りが正念場か。

「コント:くだもの子」。フルーツ女子・くだもの子に扮した脳みそ夫による一人コント。「考えがあまおう!」「ばればれバレンシア!」「恥ずかジューシー!」など、台詞の随所に果物(および果物を彷彿とさせるワード)を混入させることで、言葉遊びの上手さと意外性による笑いを引き出している。以前にも書いたような気がするが、やっていることはダンディ坂野ジョーク集と大して変わらない。それが観客にハマるかどうかだろう。あと、これはネタの内容と直接は関係無いが、脳みそ夫がネタ中に「こんちわ~す」と口走るのは彼が不安を感じている時らしいので、そのことを意識しながらネタを観ると、また少し違った面白さが湧き上がってくるかもしれない。

  • ハナコ【76点】

「コント:カレー店」。ナンとライスがおかわり自由なカレー屋さんにやってきた青年は、何故か他の客からナンのおかわりを頼まれたご主人が激怒している姿を目撃してしまい……。不条理な事態に遭遇してしまった当事者ではなく、それを目撃した第三者が心境を語り続けるというスタイルのコント。そのためなのか、どうしてご主人がナンのおかわりを注文されると激怒するのか、その理由は最後まで分からないままなのだが、特にしこりは残らない。また、激怒するご主人・激怒される他の客、どちらに非があるのかが曖昧にすることで、理不尽な状況にまでは至っていない点も絶妙。しかし、なにより注目すべきは、ご主人の造形に対するこだわり。衣装、ビジュアル、語り口、全て完璧ではないだろうか。

「漫才:バスのアナウンス」。バスの中に流れるアナウンスのスイッチをやってみる。随分とニッチなテーマに驚かされたが、要するに、バスのアナウンスを上手く喋ることが出来ないともしげの魅力的なダメさを引き出している漫才である。あまりにも出来ないので、何処までが台本で何処までがアドリブなのか、観ているだけではまったく分からない。結果、後には何も残さない、何も残らない漫才として成立させられている。このバランス感のまま、更に洗練されていったら、とんでもないことになりそう。

  • 鬼越トマホーク【80点】

「漫才:流れ星」。流れ星を目撃したのにお願いが出来なかったという坂井が、相方の金ちゃんに願い事を決めておくように指示する。若手芸人特有の願い事を提案する金ちゃんに対して、ちょっとサイコな切り口から反論する坂井のしゃべくり漫才。それぞれのキャラクターがぶつかり合うやり取りだけでも面白いのだが、「卵から産まれた」「俺は宗教やってるって思われたくねえんだよ!」など、印象的なワードも残せている点が魅力的。ただ、バリエーションがあまりにも少ないため、いずれ枯渇するのではないかと危惧するところも。

「コント:会議」。朝の会議に五分ほど遅刻してきたサラリーマンが目にした、その五分の間に片付いてしまったという数々の案件とは。2014年の単独ライブ「それにしてもへんな花」で披露されたコント。単独ではもっと色々な案件が拾い上げられていて、よりサラリーマンを演じる金子が翻弄されていく様が丁寧に描かれていたのだが、番組では時間の関係か「サングラス」「2億」「転勤」のくだりだけが取り上げられていた。この辺りの描写不足が、点数の低さに繋がってしまったのだろうか。……それにしても、もうちょっと点数を稼いでも良かったような気もするが。ただ、オチに関しては、上手いようなそうでもないような、ふわっとした印象が残るので、もうちょっとしっくりくるカタチを模索してほしいような。

1位のプラス・マイナス、2位の鬼越トマホークが勝ち上がり。

【次回(4月15日)の出場者】

 インディアンス

三拍子

ジグザグジギー

しずる

どんぐりパワーズ

永野

牧野ステテコ

「にちようチャップリン」(2018年4月1日)

要望があったので、やる。

「コント:ハチ公前」。ハチ公前にやってきた二人の外国人観光客からカメラを手渡され、記念撮影を頼まれた青年が独特のテンションに巻き込まれる様を描いたコント。一見、外国人という設定を使っているだけのハイテンションギャグコントのようだが、とはいえ設定を崩さない程度には現実的なラインを守っているバランス感が素晴らしい。否、国際的なドキュメンタリーバラエティ番組が増えている昨今、二人が演じる外国人のテンションが却ってリアルに感じられるといってしまってもいいのかもしれない。青年から財布をかすめ取ってしまうオチも、決して無邪気ではない外国人のしたたかさが上手く表れていて、味わい深い。それはそれとして「西部警察じゃん、見た目!」のくだりがかなり好き。そうとしか見えない。

  • ペンギンズ【90点】

「漫才:コンビニ」。お馴染みアニキとノブオの漫才。以前よりもネタの構成は粗く、内容よりも二人の関係性に着目している印象を受ける。「この二人の漫才が面白い」というより「この二人のコミュニケーションの様が面白い」という状態とでもいうのだろうか。しかし、コントが始まると同時にアニキが退店するボケ、二人の立ち位置に適したコント設定をあっさりと見つけてしまう展開、ノブオが律儀に設定を守ってタクシーを出てから「アニキアニキーッ!」と声をあげるボケなど、舞台での見られ方をきちんと認識しているからこそ出せるネタも多い。この辺りのアクセントをどれだけ続けられるかが今後の重要ポイントか。

  • 空気階段【88点】

「コント:賄賂」。賄賂を受け取っていたことを喋ってしまった大臣をハメるために秘書が発言を録音していたのだが、いざ音声を再生してみると語り口が何故かトシちゃんに。ナンセンスな設定もさることながら、あまりにも異常な事態に大臣が保身を捨てて録音に固執してしまう展開がとんでもなくバカバカしい。ただ、そのバカバカしさが、あんまり観客に伝わっていなかったのが些か残念。あと、トシちゃんとか、郷ひろみとか、ネタの軸となっている部分が昭和で止まってしまっているのも、ちょっと勿体無いような気が。

「コント:ブランコ」。男の子たちにブランコを取られたという小学生の女の子のために立ち上がった青年だったが、その男の子たちというのがなんと高校生の不良で……。青年に巻き起こった状況を思うと、これはとんでもない悲劇でしかないのだが、不良に対してあっさりと引き下がって女の子に諦めるように断言するみっともない姿勢が故に、悲痛な印象を与えない。否、これもそんじょそこらの芸人が同様のことをやれば、観客に引かれていただろう。ほしのディスコというみっともなさの権化のような人間が演じるからこそ、この状況が笑いに昇華されている。「今回はお嬢ちゃんが勝手にブランコに乗っていたのが悪い!」「お兄ちゃんも同じ被害者の会です」「うるさくするのも刺激に繋がるかもしれない!」などの台詞回しも絶妙。しかし、これだけの目にあっているのに、こんなにペーソスを感じさせない芸人も珍しい……。

「漫才:芸能人のイメージ」。反町隆史松嶋菜々子に対して特殊なイメージを持っている南川が、そこから想定されるシチュエーションをコンビで再現しようと試みる。昨年のM-1予選でも披露されていた漫才。勝手なイメージによって生み出されたシチュエーションの歪みと、ピーマンズスタンダードの二人によるクオリティの低い反町隆史松嶋菜々子の会話の歪みが最高潮に達したところで、なんとなくスルーされかけていたツッコミどころが強く指摘される展開がとても気持ちいい。こういう仕掛けを内包した漫才は退屈になりがちだけれど、きちんと熱量を保って演じられていたように思う。また、ツッコミを浴びている最中の、南川のなんともいえない表情がいい。無感情とも茫然とも戸惑いとも表現できない表情なのだ。この表情がもっと活かされたネタも観てみたい。

  • ZAZY【74点】

「紙芝居:転校生」。昔、プレイしたテレビゲームで、どんな危機的状況でもラップで解決してしまう……という設定のゲームがあったけれど、それを思い出した。内容に整合性が取れていなくても、ノルマがあって、クリアすべき障害があって、そこにナンセンスでもストーリーが組み込まれていれば、なんとなく納得してしまえる。そんなリズムゲーのノリをそのままスケッチブックに詰め込んだような。感覚としては「面白い」より「楽しい」に近い。そこへ分かりやすい笑いのエッセンスを組み込むことで、芸人のネタとして成立させている。「途中から無になって、何も考えずに見ていました」という近藤春菜のコメントが最適。

  • 馬鹿よ貴方は【64点】

「漫才:カラオケ」。一人でカラオケにやってきた新道が、ファラオ演じる店員に雑に扱われ続ける。ひとつひとつのやり取りは不条理で面白い。ただ、どちらも感情表現に乏しいため、全体の流れをやり取りから感じ取ることが出来にくいので、「一本の漫才を観た」というより「複数のボケとツッコミのやりとりを観た」という味気ない印象を残す。それでも以前は一貫性を表現しようとしていたように思うが、少なくとも今回のネタからはそれが感じられなかった。以前ほどネタの構成に頓着しなくなったのかもしれない。……したほうがいいと思う。

1位のジェラードン、2位のペンギンズが勝ち上がり。

【次回(4月8日)の出場者】

うしろシティ

鬼越トマホーク

3時のヒロイン

脳みそ夫

ハナコ

プラス・マイナス

モグライダー

大喜利鴨川杯で己を見つめ直す(2018年4月27日~29日)

関西最大級の大喜利トーナメント【大喜利鴨川杯】が一年半ぶりに開催されるという。以前、Twitterで相互フォローの関係にあるゴハ氏から公演のDVDを頂戴して是を視聴、そのアマチュアだからこそ吐き出せる剥き身の発想・表現に感動を覚えていた私は、「これは目撃せねばならぬ」と大会への参加を即決した。

鑑賞ではない。参加である。

はっきり言って、私には類い稀な大喜利の才があるとはいえない。学生時代、インターネット上の大喜利サイトを頻繁に出入りしていたが、決して記憶に残る回答を叩き出せてはいなかった。だが、さほど遠くない場所で開催される誰しもに門戸を開放している大会を、安全な場所からのんびりと眺めているだけで良いのだろうか。否、退屈な日常を破壊するかの如く、荒くれ者どもの巣窟へ蛮勇のように飛び込む瞬間も人生には必要なのではないか。

画して私は、四月末に大阪へ向かうことと相成った。

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2018年5月の入荷予定

19「落談 ~落語の噺で面白談義~ ♯1「粗忽長屋」

19「落談 ~落語の噺で面白談義~ ♯2「火焔太鼓」

23「M-1グランプリ2017 人生大逆転! ~崖っぷちのラストイヤー~

ゴールデンウィークという鑑賞の時間を長く持つことの出来る連休を抱えているにも関わらず、リリース本数の少ない五月。ただ、テレビ番組に限れば、「いろはに千鳥」「さまぁ~ず×さまぁ~ず」「旅猿」「クレイジージャーニー」のソフトがリリースされる模様。テレビっ子にはたまらない月になりそうだ。今月の注目作も番組絡み。

「落談 ~落語の噺で面白談義~」は映像配信サービス・ひかりTVで放送されているバラエティ番組である。実際に落語を聴きながら一つの噺をテーマにトークを展開している。レギュラーに米粒写経。第一巻に水道橋博士、第二巻にナイツ塙がゲストとして出演。まだ一度も観てはいないが、盤石の布陣である。間違いなく面白いのだろう。

年に一度のお楽しみ・M-1グランプリのDVDは今回も充実の内容。決勝戦の模様は勿論のこと、十大会連続で敗者復活戦に出場したとろサーモンが過去に披露してきた漫才を自分自身で採点、ナンバー1ネタを決める「とろサーモンNo.1決定戦 T(とろ)-1グランプリ」を収録。長らくファイナリスト候補として名前が挙がっていたコンビなだけに、熱演を楽しめそうだ。

「トンツカタン単独ライブ「トンツカタンⅠ ~君の笑顔の為だけに~」」(2017年10月25日)

トンツカタン単独ライブ「トンツカタンI~君の笑顔の為だけに~」 [DVD]
 

2017年7月21日・22日にユーロライブで開催された単独ライブの模様を収録。

トンツカタンプロダクション人力舎所属のトリオユニットである。菅原好謙櫻田佑が組んでいたコンビに、森本晋太郎が加わる形で2012年に結成された。ユニット名は櫻田の兄が命名したもので、特に意味はないという。スクールJCA21期生。同期にはおとぎばなし、ヤマグチクエストなどがいる。

私がトンツカタンのことを知ったのは、とあるテレビのネタ番組。所属事務所も活動遍歴も知らずに彼らのコントを視聴したのだが、これがやたらと面白い。その後もいくつかネタを観て、これは完全に面白いトリオだという認識を取るようになった。そんな折に発表された、単独ライブのDVD。念願と言っても過言ではない。これは間違いなく面白いのだろうと期待に胸を膨らませて購入、鑑賞したところ……これが予想外の肩透かし。こちらが期待し過ぎていたのかもしれないが、それにしたって、まるで満足感が残らない出来映え。ただ、つまらなかったのかというと、そうでもない。これが難しい。一番扱いにくいタイプの作品である。つまらなくないのに物足りない。

本作の問題点を端的に言葉にするなら「単独ライブに特化し過ぎている」ところにある。前説をテーマにしたコント『魔王』、変化球タイプの歌ネタ『曲にするわよ』、コントと映像を掛け合わせた『自供』、コントの世界を超えたメタ視点を笑いに昇華している『リアリティ』など、ネタ番組に掛けられるような一本立ちしていないコントがやたらと多い。無論、単独ライブなどというものは芸人にとっての独壇場なので、基本的には何をやってもいい。しかし、数々のコント師を世に送り出してきた芸能事務所において、次世代を担うホープとして注目を集めているトリオが、第一弾を冠した単独ライブにおいて本来の魅力的なネタよりも一回こっきりであろう離れ業のようなネタに特化するというのは、ちょっと本来のトリオとしてのベクトルと違うのではないかと。ことによると、単独ライブということを意識し過ぎて、うっかり空回りしてしまったのかも……って、どんだけ忖度しているんだ私は。

……と、このようなことを書いてしまうと、ちゃんとしたコントをまったくやっていないのではないかと思われそうだが、一応、きちんと面白いネタもある。初めての客が相手だったとしても、まるで常連客のように接するサービスの居酒屋を『居酒屋』と、出された料理を口にするたびに何かと感動を覚えてシェフを呼び出す客に翻弄される様を描いた『シェフを呼んで』である。この二本は切り口も良かったし、展開も魅力的だった。特に『シェフを呼んで』は、レストランの落ち着いた雰囲気と丁寧に積み重ねられていくバカなやり取りのギャップがとても面白かった。オチの切れ味も見事。ただ、その一方で、このご時勢にTHE ALFEEをモチーフとしたコント『誕生秘話』みたいなネタも。2010年代も終わりが見え始めているというのに、まだTHE ALFEEは擦られるのか……。

これらライブ本編に加えて、特典映像としてメンバーがセレクトしたベストネタ四本を収録。ネイティブな英語で周囲から浮いてしまう帰国子女のために、あえてカタコトの英語を勉強させる塾の授業風景を描いた『カタコト塾』。女友達の部屋に“G”が出てきたというので、夜中にもかかわらず呼び出された青年が目にした“G”の正体は……『G』。友達に連れてこられた秋葉原のカフェは、昔ながらのオタク風の店員から接客を受ける店だった!『アキバ系カフェ』。ベンチに座ってイチャイチャしているカップルが、お互いの変化について「気づいた?」と質問し合うのだが、その内容があまりにもエグくて……『気づいて』。いずれ劣らぬ傑作揃いである。『カタコト塾』『G』『アキバ系カフェ』は以前にネタ番組で視聴したことのあるネタだったが、当時と変わらない面白さだった。これだけのコントを作ることが出来るのに、どうして本編であんな感じになってしまったのか。

なお、トンツカタンは2018年3月にユーロライブで単独ライブ「トンツカタンⅡ ~さよなら さよなら こんにちは~」を敢行済。現在、こちらのソフト化は予定されていないようなのだが、どうなるのだろうか。ナンバリングを付けているのだから、続けてリリースしてほしいところではあるのだが。

◆本編【74分】

「魔王」「居酒屋」「卒業アルバム①」「誕生秘話」「卒業アルバム②」「曲にするわよ」「ザコYouTuber①」「自供」「シェフを呼んで」「ザコYouTuber②」「リアリティ」「菅原脚本 みなさまへのおたのしみVtR」「覚えてろよ」

◆特典映像【12分】

「カタコト塾」「G」「アキバ系カフェ」「気づいて」

「立川志ら乃と山口勝平の落語会」(2018年4月15日)

午前九時起床。

身支度を済ませて、午前十時に車で自宅を出発。

午前十一時ごろ、宇多津駅に到着。同十七分発の瀬戸大橋線に乗り込み、岡山駅へと移動。午前十二時半に岡山駅へ到着。一時間ぐらいで着くだろうと目論んでいたので、少しだけ慌てる。そういえば鈍行だった。

ひとまず「とらのあな 岡山店」へ移動。

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下心をむき出しにしながら肌色がやたらと多い同人誌のコーナーを物色していると、以前から気になっていた『パンツ専門ポーズ集』を発見。私はイラスト描きではないが、エロティシズム表現には強い関心を持っている人間なので、これを入手することに必要性を感じ、致し方なく購入した。帰宅後、購入したからには内容を確認せねばなるまいと慎重にページを開いてみたところ、色々な人たちが色々と大変なことになっていた。実に恐ろしい。

パンツ専門ポーズ集 パンツが大好きだから、大至急パンツを描きたい!

パンツ専門ポーズ集 パンツが大好きだから、大至急パンツを描きたい!

 

購入後、今回の目的地がある「イオンモール岡山」へ。

とりあえず昼食を取ろうと思い、五階のフードコートへ向かうも、ちょうどお昼時ということもあって、席がまったく空いていない。こうなると、もうどうにもならないだろう……と思いながらも、一縷の希望を求めて六階・七階のレストラン街へと移動。しかし案の定、どの店も沢山の行列を作っていて、やはりどうにもならない。仕方がないので、五階の無印良品でバームクーヘンとトウモロコシ茶を購入、中庭で食べる。家族連れやカップル、友達同士でキャッキャと盛り上がっている空間で、孤独に食べるバームクーヘンというのはなんともいえない味である。

食後、トイレで用を足し、本日の会場である「おかやま未来ホール」へ。物販コーナーで手ぬぐいと落語CDが売られているのを見かける。本日の主役である立川志ら乃山口勝平の手ぬぐいがそれぞれ二種類ずつと、過去の公演での音源を収録したCDが三枚。普段の落語会ならば即座に手を出すところだが、志ら乃師匠の実力もよく分かっていない状態なので、一旦スルー。チケットをもぎってもらい、ホールへ。前から七列目、真ん中寄りの席。なかなかの好位置である。

午後二時開演。

 オープニングトーク

のゝ乃家ぺぺぺぇ「初天神

立川志ら乃「火焔太鼓」

 仲入り

のゝ乃家ぺぺぺぇ「権助魚」

立川志ら乃「雲八」

 エンディングトーク

まずは二人によるオープニングトークから。今回の二人会が開催されるに至った経緯、本業は声優の山口勝平が“のゝ乃家ぺぺぺぇ”として落語を始めた理由などが軽妙に語られる。ちなみに、今回の会場はキャパ600人なのだが、当初は100人集まればいいほうだろうと思われていたにも関わらず、当日券も合わせて300人分ほど売れた……とのこと。ことによると、今後も同傾向のイベントが開催されていくかもしれない。

山口勝平もとい“のゝ乃家ぺぺぺぇ”は古典落語を二本。父親と子どものやり取りを描いた『初天神』、田舎者の権助のすっとぼけた態度がコミカルな『権助魚』。どちらも落語家の語り口としては物足りなかったが、演技力と声量は確かで、流石はプロの声優といったところ。特に『初天神』に登場する子どもは上手かった。

対する立川志ら乃師匠は、古今亭の至宝『火焔太鼓』と漫画「昭和元禄落語心中」に着想を得た創作落語『雲八』で勝負。それなりに落語を齧っている身だから分かるのだが、これはなかなかに攻めたチョイス。地方公演で、しかも山口勝平の名前に惹かれてきたであろう観客が多い会場で、あえて手堅いネタではない『火焔太鼓』を選ぶ姿勢。素晴らしい。それでいてバカみたいにウケるのだからたまらない。文字通りドッカンドッカン笑いが起きていた。落語家を主人公とした『雲八』も素晴らしかったが、これでもかとギャグを散りばめた『火焔太鼓』が秀逸。特に古道具屋の亭主が屋敷に太鼓を持参したら起こるだろう出来事を女房が妄想するくだりはたまらなかった。あまりにもハチャメチャだったので、思わず仲入りの際に公演CDを買いに行ってしまった。

終演後、エンディングトークはそこそこに、サイン会へ。一応、CDを買ったので、参加することに。サインを貰い、握手をする際に、何か一言付け加えようと思っていたのだが、ここで何かヘンテコなことを言ったら困らせるだけなので、ただ単純に「お疲れさまでした」とだけ声を掛けさせていただいた。

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全てが終わったところで、HMVに移動。Creepy Nutsのアルバムを買う。

クリープ・ショー

クリープ・ショー

 

そしてフードコートで「かばくろ」のお得セットを食べる。

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食後、岡山駅へ移動し、快速マリンライナーで香川に戻る。

以下略。お疲れさまでした。