白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「にちようチャップリン」(2018年4月1日)

要望があったので、やる。

「コント:ハチ公前」。ハチ公前にやってきた二人の外国人観光客からカメラを手渡され、記念撮影を頼まれた青年が独特のテンションに巻き込まれる様を描いたコント。一見、外国人という設定を使っているだけのハイテンションギャグコントのようだが、とはいえ設定を崩さない程度には現実的なラインを守っているバランス感が素晴らしい。否、国際的なドキュメンタリーバラエティ番組が増えている昨今、二人が演じる外国人のテンションが却ってリアルに感じられるといってしまってもいいのかもしれない。青年から財布をかすめ取ってしまうオチも、決して無邪気ではない外国人のしたたかさが上手く表れていて、味わい深い。それはそれとして「西部警察じゃん、見た目!」のくだりがかなり好き。そうとしか見えない。

  • ペンギンズ【90点】

「漫才:コンビニ」。お馴染みアニキとノブオの漫才。以前よりもネタの構成は粗く、内容よりも二人の関係性に着目している印象を受ける。「この二人の漫才が面白い」というより「この二人のコミュニケーションの様が面白い」という状態とでもいうのだろうか。しかし、コントが始まると同時にアニキが退店するボケ、二人の立ち位置に適したコント設定をあっさりと見つけてしまう展開、ノブオが律儀に設定を守ってタクシーを出てから「アニキアニキーッ!」と声をあげるボケなど、舞台での見られ方をきちんと認識しているからこそ出せるネタも多い。この辺りのアクセントをどれだけ続けられるかが今後の重要ポイントか。

  • 空気階段【88点】

「コント:賄賂」。賄賂を受け取っていたことを喋ってしまった大臣をハメるために秘書が発言を録音していたのだが、いざ音声を再生してみると語り口が何故かトシちゃんに。ナンセンスな設定もさることながら、あまりにも異常な事態に大臣が保身を捨てて録音に固執してしまう展開がとんでもなくバカバカしい。ただ、そのバカバカしさが、あんまり観客に伝わっていなかったのが些か残念。あと、トシちゃんとか、郷ひろみとか、ネタの軸となっている部分が昭和で止まってしまっているのも、ちょっと勿体無いような気が。

「コント:ブランコ」。男の子たちにブランコを取られたという小学生の女の子のために立ち上がった青年だったが、その男の子たちというのがなんと高校生の不良で……。青年に巻き起こった状況を思うと、これはとんでもない悲劇でしかないのだが、不良に対してあっさりと引き下がって女の子に諦めるように断言するみっともない姿勢が故に、悲痛な印象を与えない。否、これもそんじょそこらの芸人が同様のことをやれば、観客に引かれていただろう。ほしのディスコというみっともなさの権化のような人間が演じるからこそ、この状況が笑いに昇華されている。「今回はお嬢ちゃんが勝手にブランコに乗っていたのが悪い!」「お兄ちゃんも同じ被害者の会です」「うるさくするのも刺激に繋がるかもしれない!」などの台詞回しも絶妙。しかし、これだけの目にあっているのに、こんなにペーソスを感じさせない芸人も珍しい……。

「漫才:芸能人のイメージ」。反町隆史松嶋菜々子に対して特殊なイメージを持っている南川が、そこから想定されるシチュエーションをコンビで再現しようと試みる。昨年のM-1予選でも披露されていた漫才。勝手なイメージによって生み出されたシチュエーションの歪みと、ピーマンズスタンダードの二人によるクオリティの低い反町隆史松嶋菜々子の会話の歪みが最高潮に達したところで、なんとなくスルーされかけていたツッコミどころが強く指摘される展開がとても気持ちいい。こういう仕掛けを内包した漫才は退屈になりがちだけれど、きちんと熱量を保って演じられていたように思う。また、ツッコミを浴びている最中の、南川のなんともいえない表情がいい。無感情とも茫然とも戸惑いとも表現できない表情なのだ。この表情がもっと活かされたネタも観てみたい。

  • ZAZY【74点】

「紙芝居:転校生」。昔、プレイしたテレビゲームで、どんな危機的状況でもラップで解決してしまう……という設定のゲームがあったけれど、それを思い出した。内容に整合性が取れていなくても、ノルマがあって、クリアすべき障害があって、そこにナンセンスでもストーリーが組み込まれていれば、なんとなく納得してしまえる。そんなリズムゲーのノリをそのままスケッチブックに詰め込んだような。感覚としては「面白い」より「楽しい」に近い。そこへ分かりやすい笑いのエッセンスを組み込むことで、芸人のネタとして成立させている。「途中から無になって、何も考えずに見ていました」という近藤春菜のコメントが最適。

  • 馬鹿よ貴方は【64点】

「漫才:カラオケ」。一人でカラオケにやってきた新道が、ファラオ演じる店員に雑に扱われ続ける。ひとつひとつのやり取りは不条理で面白い。ただ、どちらも感情表現に乏しいため、全体の流れをやり取りから感じ取ることが出来にくいので、「一本の漫才を観た」というより「複数のボケとツッコミのやりとりを観た」という味気ない印象を残す。それでも以前は一貫性を表現しようとしていたように思うが、少なくとも今回のネタからはそれが感じられなかった。以前ほどネタの構成に頓着しなくなったのかもしれない。……したほうがいいと思う。

1位のジェラードン、2位のペンギンズが勝ち上がり。

【次回(4月8日)の出場者】

うしろシティ

鬼越トマホーク

3時のヒロイン

脳みそ夫

ハナコ

プラス・マイナス

モグライダー