白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

トップリードの件について

単独ライブ 二日坊主 [DVD]

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トップリードが解散するという。

当然、想定される展開である。他人の家に土足で踏み込んだ男が穏やかに芸能活動を継続することは無理というものだ。

だが、そこを敢えて、そんなどうしようもない人間ですらも包み込んでくれるのが芸能という世界なのだから、赦されても良かったのではないか。そんなことを言いたくなってしまうのは、本件において、私がまったくの部外者であるためである。無責任な立場から語っている。

実際、彼は加害者であるから、言うまでもなく被害者が存在する。被害者にしてみれば、また、被害者と同等の体験をしている方々にしてみれば、今後も彼が芸能の世界でのうのうと生きていくことなど、とても許し難いだろう。分かっている。分かっているが、どうもやりきれない。

1998年に幼馴染み同士でコンビを結成。東京アナウンス学院在学中の2001年に太田プロよりデビュー。しばらく芽の出ない日々が続いたが、2008年ごろからコント師としての才能を開花。2011年に「オンバト+」初代チャンピオンに選ばれる。2011年、2012年に「キングオブコント」決勝進出。2014年からは漫才にも挑戦し始め、「THE MANZAI」「M-1グランプリ」にも出場している。

決して目立つタイプのコンビではなかった。だが、それでも地道に、自らが出来るコントを作り続けていくだろうコンビだった。どうしてそれが出来なかったのか。そのことが腹立たしく、哀しく、惜しい。

昨年のタイタンシネマライブで彼らのコントを観た。父親に娘との結婚を嘆願する男のコントだ。娘との結婚を断られるたびに、男が時間を過去へと巻き戻し、父親が結婚の申し出を断る理由を一つ一つ潰していくという設定が、とても素晴らしかった。ありがちな状況にSF的要素を絡める面白さ。それを観た私は「ああ、トップリードはやっぱり、いつでも面白いコントを作り続けてくれるのだな」と感慨深い気持ちになった。それなのに。

せめて、解散するのであれば、限界点に辿り着いてもらいたかった。同じラーメンズファンとしても頑張ってもらいたかった。こんなことで終わってもらいたくなかった。でも解散するというのだから仕方がない。それぞれにそれぞれの道を邁進してもらいたい。

……ほとぼりが冷めたら、また復活してもいいのよ?(諦めが悪い)

さらば愛しきスマホ

私の傍らでスマホが揺れている。

着信があるわけではない。人付き合いの良くない私と連絡を取ろうという奇特な人間は少ない。無論、メールが届いているわけでもない。とはいえ、スヌーズ設定にしているわけでもない。ただ延々と、ひたすらに延々と、再起動を繰り返しているのである。どうしてこのようなことになってしまったのか。

事の起こりは昨晩である。家族がインフルエンザに倒れ、自分も二の舞を演じないように早く眠って健康的に過ごさなくては……と、昼間のうちに強い意志を抱いていたにも関わらず、何故か午前一時半にベッドに潜り込んでいた私は、それでも来たる月曜日の到来に悲観していたのか、現実から目を背けるように、ベッド脇で充電中だったスマホを手に取った。その瞬間、違和感が訪れた。熱い。滅多に降らない筈の雪がそこいらの畑の土を真っ白に汚す極寒の冬を迎えていた香川県。確かに私の部屋も暖房機をガンガンブイブイいわせていたが、それにしても熱を持ち過ぎている。もし、水を浸した洗面器に放り込んでみたら、途端に蒸気で部屋をサウナにしてしまうだろう熱だ。

驚いて画面を見てみると、何も操作していないのに再起動の真最中。過去にも何度か経験した状況である。こちらの都合など知る由もなく、自由気ままに再起動してしまうスマホ。文明の機器とは思えぬ身勝手さ。ところが、どうも様子がおかしい。再起動が終わらない。再起動が終わり、トップ画面が表示されたかと思うと、そのまま即座に改めて再起動が開始される。それが終わると、また再起動。それが終わると、また再起動。それが終わると……そんなことが延々と続いているのである。どうも宜しくない。そこで私は、強制的に電源を落として、自主的に再起動を試みることにした。なんてことはない。家電にはよくある状況だ。ビデオデッキだって、パソコンだって、どんなに様子が悪くなってきたとしても、強制的に再起動するとどうにかなった。しかし、どれほど再起動しても、再起動する状況は変わらない。再起動に次ぐ再起動。延々再再起動に至り。こちらの言うことなど聞きゃしない。何がなんだか。

一年と数か月の付き合いとはいえ、日々を共に過ごしてきたスマホである。突然、言うことを聞かなくなってしまえば、こちらも不安にならずにはいられない。とはいえ、日曜の夜中である。もう数時間も経てば、憂鬱な月曜日が始まってしまう。心配していても仕方がないので、その日は穏やかに眠ることにした……のに、これがなかなか眠れない。午前四時ごろに目が覚めてしまったので、パソコンで対処法を調べてみることに。どうやら同様のケースに見舞われている人が少なからず存在するようだ。データ容量に余裕がないだとか、SIMカードの接触不良だとか、色々な原因が考えられるらしい。そこで、試しにSIMカードを引っこ抜いてみたのだが、どうも様子が変わらない。ついでにSDカードを抜いてみても梨のつぶて。どうにもこうにもならなかったので、これはもう覚悟を決めて、そのまま不貞寝した。

翌朝。仕事を終えた私は直ちに近所のケータイショップへ飛び込んだ。対応してくれたのはメガネをかけた女性だった。一見、少女のように溌剌としていたが、手や指のしわの深さが、年齢の積み重ねと経験の深さを感じさせていた。事実、彼女の対応はとても事務的で、まるで手練れのダンサーのように自然に状況を処理していた。結局のところ、私のスマホはやはりどうしようもなくて、電話帳から何から全てのデータを引き継ぐことも出来ないらしい。そのこと自体は大した哀しみではない。ただ、文明の利器たるスマートフォンの中には、あれだけ多量の情報が詰め込まれているというのに、こんなにもあっさりと失われてしまうのだろう……という空虚に見舞われてしまった。そして、それは人間も同じなのである、などと恰好つける余裕も見せながら。

現在、私の手元には二台のスマホがある。一台はケータイショップで借りた代替機。すぐさま中身を自己流に改装してしまいたい衝動に駆られるが、借り物だから返さなくてはならず、どうも躊躇してしまう。そして、もう一台は、相変わらず再起動を続けている私の愛機。どうにもこうにもエンドレス再起動。どのみち、二日後には新しいスマホが届くことになっているので、残り僅かの命である。それまでに蘇ってくれれば良いのだが、きっと無理だそうなあ。はあ、空虚。紛れもなく空虚。

「うしろシティ単独ライブ「とはいえ外はサンダー」」(2017年11月22日)

うしろシティ単独ライブ「とはいえ外はサンダー」 [DVD]

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2017年6月から8月にかけて全国五か所で開催された単独ライブより、8月24日に座・高円寺2で行われた東京追加公演の模様を収録。

うしろシティのコントといえば、良くも悪くも安定感バツグンというイメージが自分の中にはあったのだが、本編を再生し始めてしばらく、決してつまらないわけではないのだけれども薄味で物足りないコントが続いたので、だんだんと「あれ? もしかして調子が悪いのかな?」とうっすらとした不安を抱き始めることに。

その後、だんだんといつもの調子を取り戻していったので安心したのだが、あれは一体なんだったのか? ……と首をひねりながら特典映像のアフタートークを視聴したところ、今回のライブは意図的に“ポップな順”でネタを並べていたことが語られていて、大いに腑に落ちた。なんでも、ポップなネタから少しずつエグいネタになっていく構成を取ることで、観客にエグめのネタに対する耐性を付けさせようという意図だったらしいのだが、これからは出来ればそういう戦略は控えてもらいたい。本当にドキッとしたから。

そんな構成の影響もあってか、印象に残っているコントは中盤以降のネタが多め。人気が出始めているガールズバンドの古参ファンたちがちょっとしたことで言い争いを始め、絶対に触れてはならない悲しい話題に突入してしまう『ガールズバンド』、自分が仕事としてやっている作業が生徒たちへの罰扱いにされていることに意義を唱える用務員の哀愁を描いた『職員室にて』、妻の不倫を疑っている男が探偵に調査を依頼したところ、彼女がこっそりアパートを借りて謎の作業を行っていることが発覚する『探偵』など、やや妙な余韻の残るネタが多め。とりわけ奇妙だったのが『へんなやつ』というコント。その内容は、阿諏訪演じるヤバめのおじさんの前に、金子演じる好青年風の男が現れ、おじさんよりもヤバい言動を延々と繰り広げる……というもの。内容が内容なだけにテレビなどで披露されることはないだろうが、金子のイノセントな雰囲気が上手くコントに取り入れられていて、これまでとは違った新しい切り口を感じさせられた。

これら本編の映像に加えて、特典映像として、ライブの幕間映像「うしろシティが旅してみた」、および、うしろシティの二人が公演後の客席でライブの感想を語り合う「千秋楽・・・そのあとに」を収録。「うしろシティが旅してみた」はライブタイトルにちなんで石川県へ雷を見に行くために二人がヒッチハイクする……という企画モノ。二人の頑張りによって、それなりに面白い映像に仕上がってはいるものの、その日のうちにヒッチハイクで石川県へと向かうという設定がそもそも実現不可能なので、もうちょっと真剣に取り組める企画にした方がきちんと映像として面白くなっていたのではないか?という疑問が残った。うーん……。

◆本編【90分】

「ふみきり」「河原」「刑事の仕事」「ミステリー作家」「ガールズバンド」「職員室にて」「アジト」「へんなやつ」「探偵」

◆特典映像【21分】

「【幕間映像】うしろシティが旅してみた」「千秋楽・・・そのあとに」

◆音声特典

うしろシティの副音声解説」

2018年2月の入荷予定

07「bananaman live Super heart head market

07「チョコレートプラネット vol.2

14「シソンヌライブ [six]

21「第19回東京03単独公演「自己泥酔」

28「小林賢太郎コント公演 カジャラ#2『裸の王様』

トップリード新妻が逮捕されたニュースで頭がいっぱいになってしまった一日でした。いや、まいったね。本当にまいったね。去年、タイタンシネマライブで観たネタがきちんと面白くて、そのコントに対する誠実さを再確認したばかりだったのにね。実際、どうだったのか、所属事務所からの処分はどうなってしまうのか、今の時点では何も分からないので、ひたすらにやきもきするばかりである。決して売れているといえるような状態ではなかったが、コント師としての力量は確かなコンビなので、ここはなんとか穏健な結論を出してもらいたい。

そんなタイミングでのリリース状況だが、なにやらとんでもないことになっている。なんだこのコント濃度の高さ。バナナマン小林賢太郎ラーメンズ)が揃っているだけでも濃いいのに、そこへキングオブコント王者の東京03とシソンヌ、「キングオブコント2014」二位のチョコレートプラネットが入り込んでくる。こんなにコントが充実している二月を目前に控えているというのに……。

いずれまた、この入荷予定にトップリードの作品を記載できる日が来ることに期待したい……いや、本当に、お願いしますよ。

“ガチョウ”を求めて大阪へ(2018年1月19日~21日)

THE GEESEが大阪で単独公演をやるというので、観に行ってきた。

THE GEESEとは、尾関高史と高佐一慈によって2004年に結成された、お笑いコンビである。過去に二度ほど「キングオブコント」で決勝進出を果たしているので、その名を聞いたことがあるという人もそれなりにいるのではないかと思う。近年、尾関がカープ大好き芸人として、或いは、娘に手作り弁当を作り続けているパパ芸人として、メディアに出演する機会が増えているので、それをきっかけに知っているという人もいるだろう。所属事務所はASH&Dコーポレーション。同事務所に所属する“シティボーイズ”の大ファンだったことからインディーズ時代より所属を熱望、2005年に入社した。

そんなTHE GEESEが東京・大阪・広島の三都市で単独ライブを敢行すると聞きつけ、馳せ参じようと決意した次第である。……本来ならば、大阪では大阪で活動する芸人こそを見るべきなのだろうが、まあ、それはまた別の機会にということで(後になって、このライブの一週間後に大阪でチョップリンの単独ライブが開催されると知り、ちょっとだけ後悔したのはここだけの話)

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「THE GEESE 第13回単独ライブ「果てしなきガム」」(2018年1月20日・大阪)

大阪へTHE GEESEの単独ライブを観に行く。

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ライブの会場は“道頓堀Zaza”というところ。なかなかにクールな名前だが、大阪を象徴するモニュメントの一つ“くいだおれ太郎”が正面に飾られている「くいだおれビル」の地下一階にあるので、馴染みのない人でも気軽に立ち寄ることが出来る。むしろ、大阪土産も沢山売られているので、観光客も安心だ。

地下へと向かうエスカレーターを下ると、真ん前に二つの入り口が待ち構えている。道頓堀Zazaには「HOUSE」と「Pocket's」の二つのホールが存在していて、左手側が「HOUSE」、右手側が「Pocket's」の入り口だ。THE GEESEの単独が行われるのは「HOUSE」の方である。入口でチケットをもぎってもらい、会場内に入ったのは午後一時四十五分ごろだっただろうか。既に客席は沢山のお客さんで埋まっていた。大阪のお笑いファンは東京からの芸人に厳しいという話を聞いたことがあるが、それが本当だとすれば、THE GEESEは大阪に大いに受け入れられているということになる。喜ばしい話である。

午後二時開演。

この記事を書いている頃には全公演が終了しているので、もうネタバレなども気にせずにネタの内容についても書いていこう。どうやらソフト化もされなさそうだし。以下、ネタのラインナップ(タイトルは勝手に付けてます)。

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「キンタロー。初単独ライブ「Kintalo。TV」」(2017年10月4日)

キンタロー。初単独ライブ「Kintalo。TV」 [DVD]

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2017年6月10日に松竹芸能新宿角座で開催された単独ライブを収録。

宮沢りえのヌード写真集「Santa Fe」を思わせるパッケージから、本編はキンタロー。お得意のモノマネ芸を軸に構成されているのだろうと事前に想定していたのだが、いざ蓋を開けてみると、そのパフォーマンスの大半がオリジナルの一人コントだったので、非常に驚いた。舞台上で演じられるモノマネは、オープニングで披露された欅坂46のパロディユニット“松木坂46”による『サイレントマジョリティー』だけで、それ以外の演目は完全にオリジナルの一人ネタとなっている。

正直、キンタロー。の一人ネタに果たして見る価値があるのか、不安を覚える人も少なくないのではないだろうか。実のところ、私もキンタロー。について、モノマネ芸における独自の着眼点と類い稀なる巨大な顔面による表現力は抜きん出ているように思うも、それ以外の演技力や話術に関しては、さほど評価できるものではないと踏んでいた。だが、これがなかなか悪くない。

新人気象予報士が初めてのお天気コーナーに緊張して余計なことを喋り続けてしまう『お天気キャスター』、万引きを疑われていた主婦が盗ったモノとは?『万引き』、SNSで自慢する女子を取り締まる捜査官に扮したキンタロー。が様々なフェイクツイートを暴いていく『FTI』など、いずれのネタも傑作……とまではいかないにしても、実に的確に笑いを取っている(うっすら笑い声が足されている気がしないでもないが)。あまりに良く出来ているので不思議に思っていたのだが、スタッフロールを確認してみると、脚本担当として「大輪教授」「久馬歩ザ・プラン9)」らの名前が。なるほど。つまり、これらの名だたる作家たちが、キンタロー。の魅力を引き出せるネタを考えた結果、これだけ面白い内容になったのである。縁の下の力持ちに感謝せざるを得ない。

では、キンタロー。本来の持ち味である、モノマネ芸は殆ど見られないのかというと、そんなことはない。キンタロー。のモノマネは幕間映像として本編にしっかりと収められている。そこには、デヴィも、ヨーコも、光浦も、あとアンジーも居る。実に嬉しい。更に、映像のみのゲストとして、ジョンに扮したキートンキンタロー。から誇張し過ぎたモノマネ返しを食らって苦笑が止まらないハリウッドザコシショウまで登場するのだから、実にたまらない。正直、これだけでも作品として成立するのではないか、と錯覚させられるほどに楽しい映像群だった。

これらの本編に加えて、某番組でキンタロー。の相棒を務めているロペスとともにガチの社交ダンスを披露する「社交ダンス~エンドトーク」、大人の事情で本編に入れることが出来なかったPerfumeのダンスパフォーマンス後に繰り広げられた三人のトークを撮影した「キンタロー。×misono×ほりゆうこ(たぬきごはん)トーク」を特典映像として収録。正直、たぬきごはんのファン(といえるほどの立場でもないが)としては、松木坂46の『サイレントマジョリティー』が収録できたのだから、なんとか本編に食い込ませることは出来なかったのか……と追求したい気持ちもある。とはいえ、なんとかトークだけでも残してくれたことに感謝したい。あと、もし良かったら、いつかたぬきごはんのDVDを出してほしい。うん。よろしくお願いします。

◆本編【66分】

「【ものまね】松木坂46」「はじめての…①」「【コント】お天気キャスター」「思い出の地で①」「【コント】万引き」「しげ子に会いたい①」「【コント】初夏の怪談話」「キンタロー。の逆襲」「【コント】ダンス THE フリップ SHOW」「はじめての…②」「【漫談】嘆きの扉」「プロフェッショナル キンタロー。の流儀」「しげ子に会いたい②」「【コント】2軒となりのしげ子さん」「キンタロー。が勢いで色んなものまねをやってみる」「【コント】FTI」「キンタロー。の逆襲には続きがあった。」「【コント】昼の顔」「思い出の地で②」

◆特典映像【12分】

「社交ダンス~エンドトーク

キンタロー。×misono×ほりゆうこ(たぬきごはん)トーク

TKO「ゴールデン劇場6」(2017年12月6日)

TKO ゴールデン劇場6 [DVD]

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2017年8月に赤坂レッドシアターで開催された単独ライブを収録。

本編に収められているコントは全部で六本。お化け屋敷のバイトにて、お化けになって人を驚かせることに対して異常なほどの情熱を燃やしている先輩と、そんな先輩に対して気持ちが引いている後輩のやり取りを描いた『お化け屋敷』、完全にオフの状態だった怪人がヒーローに襲われ、拳で背中を貫かれてしまう状況をボヤき続ける『ヒーローと怪人』、テレビドラマのワンシーンで悪目立ちしているエキストラが、注意されるごとに新しい方法で目立とうとする『エキストラ』など、どのコントも安定して面白い。熟練の技術が活かされている。

特に面白かったのは『関係者受付』と『BBQ』。

『関係者受付』は文字通りライブ会場の関係者受付を舞台としたコント。サカナクションのライブ会場にやってきた関係者を名乗る男性の名前が、関係者リストの中に記載されていない。詳しく話を聞いてみると、男の正体はラジオDJで、番組に出演したサカナクションから「ライブ来てくださいよー」と言われ、それを真に受けてやってきたらしく……。木下演じるラジオDJの胡散臭さもさることながら、ライブ会場に入り込むために無茶苦茶なことを主張し始める流れがヒド過ぎて、笑わずにはいられない。それよりなにより“関係者受付”というニッチなシチュエーションがたまらない。コントが終わった後にもおたのしみが……。

そしてオープニングコント『BBQ』。これが抜群に良かった。木下に誘われて、バーベキューにやってきた木本。現地に到着すると、そこには一人で肉や野菜を焼いている木下の姿が。買ってきた飲み物をクーラーボックスに入れながら、今日のバーベキューに誰が来るのかを確認すると、他には誰も来ないと言われて……。バーベキュー、インスタ、ボール遊びなどを“おっさん二人”でやることに違和感を覚えている木本。一方、たとえ“おっさん二人”であっても、それらの遊びを楽しめばいいじゃないかと主張する木下。一般的には木本の方に共感できる人の方が多いのかもしれないが、私はまんまと木下の言い分に感動してしまった。私もアラサーと呼ばれる年齢になって、世間がイメージしているアラサーの在り方に捉われかけていたからだろう。これからの人生、「感じたら動く! 動いたら出来んねん!」という台詞を胸に、おっさんになっていこうと思う。オチも最高。

これほどにネタの内容が充実している本作だが、全体を通してみると、ほのかな物足りなさを感じる。何故か。ネタの本数が感覚的に少ないからである。そこで、当時のライブレポを漁ってみると、実際の公演から二本のコントが削られていることが判明した。しかも、そのうちの一本は、あの「キングオブコント2010」決勝戦で披露されたコントに登場した“モロゾフ後藤”が再登場するネタだったらしい。恐らく、版権絡みのネタだったのだろうが、なんとかして収録してもらいたかったなあ……。

これら本編に加えて、特典映像としてTKOが声を当てているショートアニメ「三角関係ギドラ」「キツイ言葉とオブラート」を収録。ライブの幕間で流された映像らしいのだが、本編で披露されているようなTKOのコントの世界観とは打って変わって、こちらは徹底的にシュールで不可思議な内容となっている。“オモコロ”に掲載されているような漫画が好きな人ならハマると思う。しかし……誰が仕込んだんだコレ。

◆本編【61分】

「BBQ」「お化け屋敷」「フラッシュ暗算」「ヒーローと怪人」「関係者受付」「エキストラ」

◆特典映像【6分】

【TKOショートアニメ劇場】「三角関係ギドラ」「キツイ言葉とオブラート」