白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

TKO「ゴールデン劇場6」(2017年12月6日)

TKO ゴールデン劇場6 [DVD]

TKO ゴールデン劇場6 [DVD]

 

2017年8月に赤坂レッドシアターで開催された単独ライブを収録。

本編に収められているコントは全部で六本。お化け屋敷のバイトにて、お化けになって人を驚かせることに対して異常なほどの情熱を燃やしている先輩と、そんな先輩に対して気持ちが引いている後輩のやり取りを描いた『お化け屋敷』、完全にオフの状態だった怪人がヒーローに襲われ、拳で背中を貫かれてしまう状況をボヤき続ける『ヒーローと怪人』、テレビドラマのワンシーンで悪目立ちしているエキストラが、注意されるごとに新しい方法で目立とうとする『エキストラ』など、どのコントも安定して面白い。熟練の技術が活かされている。

特に面白かったのは『関係者受付』と『BBQ』。

『関係者受付』は文字通りライブ会場の関係者受付を舞台としたコント。サカナクションのライブ会場にやってきた関係者を名乗る男性の名前が、関係者リストの中に記載されていない。詳しく話を聞いてみると、男の正体はラジオDJで、番組に出演したサカナクションから「ライブ来てくださいよー」と言われ、それを真に受けてやってきたらしく……。木下演じるラジオDJの胡散臭さもさることながら、ライブ会場に入り込むために無茶苦茶なことを主張し始める流れがヒド過ぎて、笑わずにはいられない。それよりなにより“関係者受付”というニッチなシチュエーションがたまらない。コントが終わった後にもおたのしみが……。

そしてオープニングコント『BBQ』。これが抜群に良かった。木下に誘われて、バーベキューにやってきた木本。現地に到着すると、そこには一人で肉や野菜を焼いている木下の姿が。買ってきた飲み物をクーラーボックスに入れながら、今日のバーベキューに誰が来るのかを確認すると、他には誰も来ないと言われて……。バーベキュー、インスタ、ボール遊びなどを“おっさん二人”でやることに違和感を覚えている木本。一方、たとえ“おっさん二人”であっても、それらの遊びを楽しめばいいじゃないかと主張する木下。一般的には木本の方に共感できる人の方が多いのかもしれないが、私はまんまと木下の言い分に感動してしまった。私もアラサーと呼ばれる年齢になって、世間がイメージしているアラサーの在り方に捉われかけていたからだろう。これからの人生、「感じたら動く! 動いたら出来んねん!」という台詞を胸に、おっさんになっていこうと思う。オチも最高。

これほどにネタの内容が充実している本作だが、全体を通してみると、ほのかな物足りなさを感じる。何故か。ネタの本数が感覚的に少ないからである。そこで、当時のライブレポを漁ってみると、実際の公演から二本のコントが削られていることが判明した。しかも、そのうちの一本は、あの「キングオブコント2010」決勝戦で披露されたコントに登場した“モロゾフ後藤”が再登場するネタだったらしい。恐らく、版権絡みのネタだったのだろうが、なんとかして収録してもらいたかったなあ……。

これら本編に加えて、特典映像としてTKOが声を当てているショートアニメ「三角関係ギドラ」「キツイ言葉とオブラート」を収録。ライブの幕間で流された映像らしいのだが、本編で披露されているようなTKOのコントの世界観とは打って変わって、こちらは徹底的にシュールで不可思議な内容となっている。“オモコロ”に掲載されているような漫画が好きな人ならハマると思う。しかし……誰が仕込んだんだコレ。

◆本編【61分】

「BBQ」「お化け屋敷」「フラッシュ暗算」「ヒーローと怪人」「関係者受付」「エキストラ」

◆特典映像【6分】

【TKOショートアニメ劇場】「三角関係ギドラ」「キツイ言葉とオブラート」