白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「THE GEESE 第13回単独ライブ「果てしなきガム」」(2018年1月20日・大阪)

大阪へTHE GEESEの単独ライブを観に行く。

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ライブの会場は“道頓堀Zaza”というところ。なかなかにクールな名前だが、大阪を象徴するモニュメントの一つ“くいだおれ太郎”が正面に飾られている「くいだおれビル」の地下一階にあるので、馴染みのない人でも気軽に立ち寄ることが出来る。むしろ、大阪土産も沢山売られているので、観光客も安心だ。

地下へと向かうエスカレーターを下ると、真ん前に二つの入り口が待ち構えている。道頓堀Zazaには「HOUSE」と「Pocket's」の二つのホールが存在していて、左手側が「HOUSE」、右手側が「Pocket's」の入り口だ。THE GEESEの単独が行われるのは「HOUSE」の方である。入口でチケットをもぎってもらい、会場内に入ったのは午後一時四十五分ごろだっただろうか。既に客席は沢山のお客さんで埋まっていた。大阪のお笑いファンは東京からの芸人に厳しいという話を聞いたことがあるが、それが本当だとすれば、THE GEESEは大阪に大いに受け入れられているということになる。喜ばしい話である。

午後二時開演。

この記事を書いている頃には全公演が終了しているので、もうネタバレなども気にせずにネタの内容についても書いていこう。どうやらソフト化もされなさそうだし。以下、ネタのラインナップ(タイトルは勝手に付けてます)。

オープニングコント「脱出ゲーム」

オープニング映像

さすまたの里」

「ギネスに挑戦し続ける男」

「喫茶エンドロール」

「地下ゲーム」(一発ギャグのコーナー)

「いじめられっ子とリコーダー」

「女子力潜水艦」

「旅館で金縛り」

「果てしなき経歴」

「分校」

エンディング映像

アフタートーク

いきなり客席側から登場するというトリッキーな始まり方のオープニングコントが楽しい。こういう攻めた手法で観客の意識を引き込もうという魂胆か。それから始まるコントは、もうひたすらにバカが止まらない。久しぶりの再会を果たした友人が同時進行で様々なギネスに挑戦しているヤバいヤツになっていたり、先生にいじめられていることを直接告白できない生徒がリコーダーの音程で会話をしようとしたり、大手会社の社長に一分半だけプレゼンの猶予を与えられるも自身の経歴の濃さが故にプレゼン内容が頭に全然伝えられなかったり、とにかく下らない。二人のギャグをメインにしたネタでは、意外にも高佐のギャグがハマるハマる。観客の反応に当人のテンションも上がってしまったのか、やらなくてもいいのに三本もギャグを披露していた。実際、面白かった。尾関も頑張れ。

一番好きだったのは、閉店時刻になるとエンドロールが流れ始める喫茶店のコント。THE GEESEのネタには何故か喫茶店を舞台としたものが少なくないのだが、その最新版を見られたのは嬉しかった。あと、やたらと印象に残っているのは、舞台上で二人が衣装を着替えている様子を観客に見せる幕間の演出。うっすらとした暗闇の中で着替えが行われるのだが、先に着替えた尾関がまだ着替えている最中の高佐をじっと見つめたり、高佐が半裸で観客に自らの筋肉をアピールしてきたり、尾関の背広を高佐がマントに見立てて振っているところに闘牛のように尾関が突っ込んだり……単なる着替えに留まらないサービス満点のパフォーマンスを見せてくれた。ああ、舞台で生きていく人たちなのだなあ、などと妙にしみじみ感じ入った。

全てのコントが終わると、エンドトークへ。話の内容は、主にコントの中で使用された「さすまた」について。さすまた知名度はどれほどのものなのか、どのようにしてさすまたを入手したのか、持ち運びがどれほど不便だったか……さすまたに関する話が湯水のように溢れ出る。なにやら新製品を購入してテンションが上がっている人のそれに似ていた。この後、二人はすぐさま大阪を出て、日曜日に公演を開催する広島へと移動するのだそうだ。

午後四時半終演。この後、待ち合わせの予定が入っていたので、ササッとアンケートを書いて出ていってしまおうと思っていたのだが、他の観客たちがガッツリとアンケートを書いていたらしく、誰も出ていこうとしないので、思わず出ることを躊躇してしまう。しかし、いつまでも待っているわけにもいかず、思い切って立ち上がり、客席を後にする。通路で書き殴ったアンケート用紙を係員に手渡し、そのまま会場の外へ飛び出すと、入口のすぐ脇にある受付でTHE GEESEの二人がベストDVDを手売りしようと待ち構えていたので驚いた。

その距離の近さと、既に二人がスタンバッていたという事実に驚き過ぎて、思わず「す、すいません! 持ってるんです!」と言ってしまい、THE GEESEの二人に「あ、大丈夫です!」と大いに気を使われてしまった。申し訳ない。でも、興味がないから買わないのではないのだとアピールできたので、ちょっとだけ安心した。

それにしても面白かった。東京のナンセンスなコント師が見せるオシャレな雰囲気はもはや皆無に等しかったが、二人だからこそ出来るバカバカしいステージをきちんと作り上げていて、それが不思議と唯一無二の空気感を生み出していたように思う。事務所の社長は今後も大阪公演を開催していきたいと言っていたらしいので、その時には是非ともまた足を運びたいと思う。よろしくね。