土曜深夜の視聴覚室

Saturday midnight audio-visual room.

「南海キャンディーズ初単独ライブ「他力本願」」(2018年4月11日)

2018年2月16日・17日に東京グローブ座で開催されたライブを収録。

結成十五周年という節目の年に初めての単独ライブを敢行した南海キャンディーズ。ライブタイトルは『他力本願』。これはプロの芸人がラジオリスナーの考えたネタを舞台で演じる企画ライブ“他力本願ライブ”に由来している。そして“他力本願ライブ”と同様、この舞台でもリスナーたちが投稿した漫才台本によるネタが数多く演じられている。イベント性の高い“他力本願ライブ”のシステムを自身の単独ライブに持ち込む姿勢は、南海キャンディーズ……もとい、TBSラジオでディスクジョッキーを務める冠番組山里亮太の不毛な議論』を抱えている山里のリスナーに対する絶対的な信頼を感じさせられる。

本編を再生すると、ライブの幕開けを告げるように、ドキュメンタリー番組「情熱大陸」のテーマが流れ始める。劇場ではお馴染みとなっている南海キャンディーズの出囃子だ。そして一本目の漫才が始まる。医者になりたいという山里に対して、火を恐がるイノシシを演じようとする山崎。彼らが注目を集めるきっかけとなった「M-1グランプリ2004」決勝戦で演じられた、伝説の漫才だ。だが、観客のウケを見ると、あまり芳しくはない。当然といえば当然の結果なのかもしれない。何者でもなかった当時とは違い、今の南海キャンディーズはそれぞれのキャラクターがはっきりと自立している。観客が求めているのは、あの時代を振り返ることではなく、今の彼らに出来る最新の漫才なのだ。

一本目の漫才が終わると、クールなオープニング映像が始まる。『不毛な議論』オープニング曲を採用しているところがニクい。映像が終わると、今回のライブのメインともいえるラジオリスナーが投稿した漫才パートへ突入。山崎が山里のセッティングする合コンで大暴れする『カレーよりハヤシの作品』、干支に入りたいという山崎が現在のメンバーを独自の解釈で倒していく『注文の作品』、普段は自由奔放にボケ倒している山崎が逆に山里のフリに対してノリツッコミを強いられる『月ムーンの作品』などなど……いずれのネタも従来の南海キャンディーズの漫才とは少しズレている感が。しかし、そんな両者の齟齬によって、むしろ二人がこれまであまり見せられていなかった魅力を引き出している。

そんなラジオリスナーたちの投稿作品の流れの中に、何故かラブレターズ・塚本による作品も。クラブで刺激的な女との出会いを期待している山里の前に、独特の雰囲気を漂わせながら我が道を貫き通す山崎が現れ、なんやかんやあって恋に落ちてしまう『#15点の女』というコントだ。南海キャンディーズがコントを演じているというだけでも新鮮味があるのだが、純粋にネタとしても面白い。しかし中盤から、話は思いもよらぬ地獄の展開へ。実に面白く、恐ろしかった。

ここからライブは後半戦へ。まずは新作の夢占いをテーマにした漫才。夢占いが特技だという山里が山崎の見た夢の内容から深層心理を読み解こうとするのだが、話を紐解いていくと、それらの夢には理由があることが発覚する。版権を取り扱っている点が少し引っ掛かるが、細かい要素が鮮やかに回収されていく様は見事だった。今後はこういうスタイルのネタもやっていくのだろうか。

そして最後は、M-1の予選用に作られたという漫才。ママタレやドラマの主演女優やモデルになりたいという山崎のために、山里がそういった職業の人たちの人となりを全身全霊込めて解説する漫才で、そのあまりの熱弁ぶりに40分以上にも渡って繰り広げられる。山里のママタレ・女優・モデルに対する悪意と山崎の我が道を行くディープなボケを混在させながら、今回のライブで披露してきた漫才をフリとしたフレーズも詰め込まれ、まさに圧巻の出来映え。M-1予選ではウエストランド井口と比較する声も散見されたが、こうしてフルバージョンで見ると、きちんと現在進行形の南海キャンディーズの漫才として完成されていることがよく分かった。南海キャンディーズにとってM-1ラストイヤーの年となる今年、彼らはどんなネタを用意しているのだろうか。楽しみだ。

これらの本編に加えて、特典映像として、ライブのおよそ十日後に放送された「山里亮太の不毛な議論」(2018年2月28日)の模様を撮影した映像を収録。この日、番組は「単独ライブ延長戦」と題し、ライブでは時間の都合で演じられなかったリスナー投稿作品をオンエア。きちんと舞台衣装を着て、センターマイクも用意して、漫才師として投稿作品に臨む二人の姿勢はとても真摯で、改めて漫才・リスナー・番組に対する愛を感じさせられた(あんなにママタレや女優に毒をブチ撒けていた人とは思えない)。更にライブ本編には南海キャンディーズの二人(+構成作家・セパタクロウ)によるオーディオコメンタリーまで収録されている。ああ、なんと揺るぎないサービス精神!

個人的には、初単独への思い入れが強すぎて、喜びの感情がダダ漏れになってしまっている山里に注目してもらいたい。きっと心の中で「漫才楽しい!」と思っていたに違いない……いや、それはまた別のコンビのフレーズか……。

■本編【145分】

「漫才①(医者)」「オープニング」「漫才②「カレーよりハヤシの作品」」「漫才③「注文の作品」」「漫才④「月ムーンの作品」」「VTR しずちゃんVR体験」「コント「ラブレターズ塚本の作品」」「VTR ラジオディレクター」「漫才⑤(夢占い)」「VTR 楽屋の山ちゃん」「漫才⑥(○○になりたい)」

■特典映像【25分】

南海キャンディーズがライブを振り返るオーディオコメンタリー」

「「山里亮太の不毛な議論」(2018年2月28日)・単独ライブ延長戦」

「各公演のジャケット撮影写真スライドショー」