白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

コント知新の大阪旅行(2019年7月13日~15日)

七月十三日、土曜日。

午前五時起床。身支度を済ませ、午前六時に自宅を車で出発。途中、うどん屋に立ち寄って朝食を取る予定だったが、予想以上に時間に余裕が無かったため断念。替わりに、マクドナルドのドライブスルーに立ち寄り、ソーセージマフィンとソーセージエッグマフィンを購入する。日頃、朝マックを注文することがないので、その値段の安さに驚かされる。直後、コンビニに立ち寄る。バスの中で口寂しくなったときに飲む500ミリリットルのペットボトルジュースを買い求めるためである。個人的にはフルーツジュース系が好ましいのだが、見当たらなかったので、果物フレーバーウォーターを購入する。結局、それらしい味がしていれば、それで納得してしまえる。午前六時四十五分ごろ、善通寺インターバスターミナルに到着、駐車場に車を停車する。午前七時、大阪行きの高速バスで出発。道中はradikoで『神田松之丞 問わず語りの松之丞』『シソンヌの「ばばあの罠」』『爆笑問題カーボーイ』を聴く。

午前十時半ごろ、OCAT(大阪シティエアターミナル)に到着。天候は芳しくない。一応、折り畳み傘を用意しているが、使わないに越したことはない。午前十一時、とある雑居ビルに押し掛け、とても重要な契約を交わす。重要である。あまりに重要なので、ここで詳細は書けない。午後一時に再びこの場所に戻ってくるようにいわれ、また街中へと飛び出す。ひとまず昼食を取るために、なんばwalk(なんばの地下街)を彷徨い歩いてみるが、元来の優柔不断が災いし、どの店にも入れず途方に暮れる。さんざん歩き回った午前十二時半ごろ、他の店舗には入ったことがあるラーメンチェーン店「三豊麺」を見つけたので、ここで昼食を取る。特性濃厚魚介つけ麺(大盛)を注文、軽やかにこれを食す。正午であるにも拘わらず、店内には私以外の客の姿が見えない。味は悪くなかったので、単純に立地が良くないのだろう。そもそも、どうしてインド料理店とビデオ個室店の間に店舗を構えようと思い至ったのか。

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午後一時、先程の雑居ビルを再度訪れる。それから近隣のホテルに移動し、とても重要なミッションを完遂する。重要である。あまりに重要なので、やはりここには書けない。ただ……人それぞれに好みはあるのだろうが、個人的には未経験者よりも経験豊富なベテランの方が有難い。どうでもいいことだが。

午後二時二十五分、ミッションを終える。御堂筋線なんば駅から本町駅へと移動し、駅から歩いて数分のところにある書店「toi books」を訪れる。以前、かつて一緒に大喜利をやっていたこだま氏がオススメしていて、少し気になっていた書店である。実際に突入してみると、とても雰囲気が良く、自宅の近所にあれば月に一度は訪れていただろう。こだま氏も参加している同人誌『でも、こぼれた』を発見、購入する。来客者用のノートが置かれていたので、「こだまさん、買ったよー」と乱雑に書き込む。外へ出ると雨が酷くなっている。もはや傘がないとどうにもならない。折り畳み傘を取り出し、駅へと戻る。御堂筋線本町駅から梅田駅へ移動。

午後四時、「サウナ&カプセル大東洋」を訪れ、チェックイン。大きいキャリーバッグと現時点では不必要な荷物を預ける。午後四時半、ホテルの近くにあるメロンブックスを訪れ、何冊かの同人誌を購入。以前にも書いたような気がするが、若い頃に比べて、性欲を煽られるようなエロティックな版権パロディ作品よりも、見せ方を工夫しているオリジナル作品に魅力を感じるようになってきた。とりわけ同人誌は一期一会の出会いとなる確率が一般流通本よりも格段に高く、だからこそ出会いそのものが尊い。午後五時、大阪環状線大阪駅から福島駅へ。「街かど屋福島店」で夕飯。チキン南蛮定食を食べる。チキンは大したことがなかったが、タルタルソースの量に幾分か驚く。

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午後六時、この日のメインイベントである『チョップリン結成20周年単独ライブ「7300days」』が開催されるABCホールに向かう。雨が酷くなっていく最中、雨のあたらないところで待機している人々の列に紛れ込む。こういう事態は想定されているのだから、喫茶室のようなスペースを設けてくれても良さそうなものだ、などと施設に対する不満を膨らませる。午後六時半、開場。チケットをもぎってもらい、中に入ると、ロビーに物販コーナーが設置されていたので覗き込む。ポストカードやステッカーなどとともにコント台本が数量限定で売られていたので、迷わず購入する(帰宅後、中身を確認したら、いわゆるシナリオ本の類ではなく、本当に印刷されたままの台本が透明な袋の中に詰め込まれていたので驚いた)。ホールへ移動し、席に着く。前から三列目の好ポジションである。

午後七時開演。午後九時過ぎ終演。

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ソフト化を予定しているため、細かい内容には触れられないが、驚きの多い公演だった。チョップリンのコントといえば、これといったカタチを持たないナンセンスな笑いのイメージがあったのだが、本公演で披露されているネタは風刺が色濃く盛り込まれていて、しかもそれがなかなかに生々しかった。特に、オープニングコント後、一発目のコントには度肝を抜かれた。かつて、大竹まことが「シティボーイズの次はチョップリンかもしれない」とコメントしていたが、その言葉がいよいよ現実味を帯びてきたように感じられた。終演後、ロビーに西野が現れた気配を感じ取りながらも、心身ともにすっかり疲れ切ってしまったので、とっとと退散する。大阪環状線で福島駅から大阪駅へ戻り、すぐさまホテルへ……戻ろうとするも、迂闊にも道に迷ってしまう。阪急の方に出なくてはならないと頭の中では理解しているのだが、阪急へと通じる道が分からない。あっちこっちを歩き回って、午後十時にようやくホテルへと戻る。大浴場で風呂に浸かり、食堂で『激レアさん』を見ながら酒を飲み、良い心持ちになりながら午後十一時ごろ就寝。

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ハコのサイズはどんなかな?

「シソンヌライブ08[huit]」大阪公演のチケットが売れていないらしい。

キングオブコント2014』での華々しい優勝から五年が経過している今も尚、年に一度のペースで開催されている単独公演を継続し、その舞台が高く評価されているシソンヌ。完成された世界観のコントを作り上げる職人気質な性格とともに、テレビでも受け入れられるような奇妙奇天烈なキャラクターを生み出す才能も兼ね備えている彼らのライブチケットが売れていないとは、まったくもって由々しき事態である。既に終了している東京公演の評判も上々で、敢えて大袈裟な表現をするならば“今の彼らを見ない理由はない”筈だ。確かに、笑いの聖地と称されることも多い大阪では、対して、都会の匂いが鼻につく東京スタイルのパフォーマンスは受け入れられにくいといわれている。とはいえ、それでも、今のシソンヌを無視する理由が、あっていいわけがない……。

と。ここまで文章を書き殴ったところで、ある疑問にぶち当たった。その疑問とは「そもそもライブ会場の規模はどれほどなのか」というものだ。もう少し明確に言葉を詰めると、「東京公演のライブ会場と大阪公演のライブ会場のキャパシティの差が開き過ぎているのではないか?」と思い至ったのである。とはいえ、ただ東京・大阪の会場のキャパ差だけを確認しても本質的なところが分かりにくいので、これまで『シソンヌライブ』が行われた会場のキャパシティを全てチェックし、それが果たして正当なものであったのかを確認することにした。

以下、『シソンヌライブ』が過去に行われた会場のリストである。

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2019年7月の入荷予定

24「ラバーガールLIVE「お前ら愛してるぜ」
24「NON STYLE LIVE ~38サンパチ~ (仮)
31「アンガールズ単独ライブ「俺の個性が暴走しちゃう日」

どうも菅家です。気が付けば上半期も終わりだってんで、また少しずつ死に近付いていることを実感しながら日々を過ごしております。皆さんも着実に死へと近付いていますよ。良かったですね。そんなつまらない浮世を楽しく生き抜くためのお笑いDVD、七月のラインアップは以上となります。ラバーガールNON STYLEアンガールズという安心の布陣。先日、放送された『水曜日のダウンタウン』によると、ノンスタは女子中高生に未だに人気があるそうですよ。確かに彼らの漫才は面白いですけど、若い人にはもうちょっと若い芸人に興味を持ってもらいたいもんですね。いつまでも夏はTUBEやサザンや言うてる場合やないねんからね。別にええねんけど。では、また。

「タイムマシーン3号単独ライブ「餅」」(2019年4月17日)

タイムマシーン3号単独ライブ「餅」 [DVD]

タイムマシーン3号単独ライブ「餅」 [DVD]

 

2019年1月12日・13日に全電通労働会館で開催された単独ライブより、13日の模様を収録。作・演出はタイムマシーン3号。彼らの単独ライブがソフト化されるのは、2017年8月にリリースされた『タイムマシーン3号単独ライブ「米」』以来、およそ一年十ヶ月ぶりとなる。太田プロダクションは自社の芸人の単独ライブのソフト化に積極的ではない印象があったので、このペースでのリリースはとても嬉しい。この調子で、他の芸人の単独ライブも同様にソフト化してもらえると大変に有難いのだが。

本編を再生すると、早々に漫才が開始される。出囃子が流れる中、センターマイクの前にやってくるタイムマシーン3号の二人。とはいえ、まずは緩やかにオープニングトークからスタート。客層の年齢が上がってきていること、遂にライブチケットの転売が発見されたこと、他愛のない話が軽妙なトーンで語られる。そして始まる一本目の漫才は、関が考えてきたオリジナルアニメの内容を山本に聞かせる『オリジナルアニメ』。数多くの漫才師たちが手をつけてきたベタな設定だが、タイムマシーン3号お得意のデブ要素を随所に散りばめていて、他の追随を許さないクオリティに仕上がっていた。なにせボケのはめ込み方が上手い。かなり序盤で観客に「デブを主軸としたネタ」であることを認識させているにも関わらず、想定していない角度から的確にデブ要素を投げ込んでくるので、ついつい笑ってしまう。身体的特徴を取り入れている漫才・コントを低レベルであると捉えている人も少なくないが、少なくとも彼らの“デブ”を笑いに転換する技術は、間違いなく一級品である。

二人が餅つきに興じるオープニング映像を挟んで、続いて披露された漫才は、関が友達に誕生日のサプライズパーティに誘い込む練習を始める『サプライズ』。相手にバレないようにこっそりとパーティに誘わなくてはならないのに、サプライズを仕掛けていることが完全にバレてしまうような言動を取り続ける関のゴキゲンな振る舞いが面白い。このネタも、先の『オリジナルアニメ』と同様に、序盤で漫才の方向性を明らかにしているのだが、やはりボケの角度の絶妙さで着実に笑いを引き出している。そのまま暗転することなく、次のネタへ。引っ越しを考えている山本が関の演じる不動産屋と共にタワーマンションの内見に向かう漫才コント『不動産』。先の二本と同様、ボケの角度は絶妙なのだが、関が暴走するくだりが随所に見られ、ややライブ感の強い内容に。また、漫才コントにしては、あまりシチュエーションに重きを置いていないような印象も残った。彼らの芸風と漫才コントはあまり合わないのかもしれない。

幕間映像を挟んで、本作唯一のコント『カツアゲ』へ。「キングオブコント2016」決勝の舞台で披露された、あのネタである。不良(山本)に言いがかりをつけられた気弱そうな学生(関)がお金を持っているかどうかを確認するために「飛べよ!」と言われ、嫌々ながらジャンプすると、全身から小銭が溢れ出し……。先の漫才と同様、これもまたパターンを観客に理解させた上で更に笑いを引き出していく手法を採用している。この手法、下手すると先細ってしまいかねないのだが、このコントでは「全身から小銭が溢れ出る」というトリッキーな設定と画の異常な強さが与えるインパクトを最後までしっかりと維持している。この見事な着想、確かな技術よ。驚いたのは、大会で披露されたものとはオチが違っていたことである。聞くところによると、当時の予選ではこちらのオチを採用していたらしい。まあ、多くの視聴者の目に留まる決勝戦には、あの不気味なオチは不適切といえるのかもしれない。

二人が軒下で餅を食べる謎のワンカット映像が流れ(実際のライブでは別の映像が流されていたのだろうか?)、次の漫才へ。関がとある旅館で体験したという恐怖のエピソードを語り始める『怖い話』。一応、基本的にはちゃんとした怖い話なのだが、所々で挟み込まれるメインのストーリーとは無関係な部分が引っ掛かってしまって、話に集中出来ない……という、近年では割とベタな手法を取り入れた漫才である。ただ、その引っ掛かる部分の表現がやけに豊潤で、なんだか妙に楽しかった。

この『怖い話』からの流れを受けて始まる『悪魔の○○えもん』は、あの国民的人気キャラクターのダークサイドの部分を強めた版権ネタ。ただ、その内容は安易な版権ネタの域を軽やかに飛び越え、普段のタイムマシーン3号の漫才からは想像もつかないレベルのアウトローな発想が次々に飛び出している。とりわけ、何の理由もなくヘリコプターのプロペラでス○夫の頭をふっ飛ばした悪魔の○○えもん(関)が、とてつもない恐怖心から思わず激しく腕を叩いてきたの○太(山本)に対し、見せたリアクションは最高の一言。版権ネタをやるならばここまでやらないといけない、という一つのお手本のような漫才だった。絶対にテレビでは出来ないだろうけれど。

再び幕間映像を挟んで、いよいよライブは終盤へ。まずはエアコンの温度設定の権利を懸けてじゃんけんで勝負する『じゃんけんできめよう』。じゃんけんをテーマにした漫才といえば、じゃんけんを右手でやるか左手でやるかというようなレベルの話を延々と繰り広げる中田ダイマル・ラケットの名作を思い出さずにはいられないが、タイムマシーン3号のそれは、じゃんけん勝負を決めるためにじゃんけんをする……というような無駄なくだりが何度も何度も何度も何度も積み重ねていくスタイル。ダラダラしていたら飽きられるだろうことを見越していたのか、なかなかなスピード感で展開していた。そして、オーラスの漫才『一昨日の食事』へ。年を取り、記憶力が弱まり、一昨日の食事が分からなくなり始めているという山本に対し、そんなの簡単だと豪語する関が一昨日に食べた料理の名前を挙げ始める。テーマを見ても分かるように、ここで再び彼らが得意とするデブメインのネタが始まるわけだが、途中から食事の内容がドラマチックな展開へと舵を切り始める。年齢からの脳の衰えの話から、どうしてこうも飛躍的なストーリーを思い描けるのだろうか。その発想力に感心させられた一本だった。

これら本編に加えて、特典映像として12日の公演でのみ披露された漫才『お年寄りに席を譲りたい』『エロくする』を収録。お年寄りに席を譲りたいのに譲れなかったという関の話に隠された真実が明らかになる『お年寄りに席を譲りたい』もトリッキーで面白い漫才だったが、やはり注目すべきは関のなんでも太らせる才能を下ネタ方面に開花させた『エロくする』だろう。恐らくは「ゴッドタン」の下ネタ企画〈ネタギリッシュNIGHT〉向けに作られたのだろうが、下ネタのイメージがない彼らが演じるにしては強めの下ネタが盛り込まれていて、中盤では観客の悲鳴が上がっている。はっきり言って、本編で披露されている漫才を観て、「もはや彼らはベテラン漫才師の域に入っているな!」と感心した購入者の気持ちを粉砕するに足る内容なので、これはむしろ是非とも多くの方々にご覧いただきたい。いやー、ヒドかった……。

・本編【69分】
「オリジナルアニメ」「サプライズ」「不動産」「関太コミケに行く!![前編]」「カツアゲ」「怖い話」「悪魔の○○えもん」「関太コミケに行く!![後編]」「じゃんけんできめよう」「一昨日の食事」

・特典映像【8分】
「お年寄りに席を譲りたい」「エロくする」

「ナイツ独演会「ワッショイ」でない事だけは確か」(2019年1月30日)

ナイツ独演会「ワッショイ」でない事だけは確か [DVD]

ナイツ独演会「ワッショイ」でない事だけは確か [DVD]

 

2018年10月から11月にかけて全国11都市を巡るツアーを展開した独演会より、11月17日に横浜にぎわい座で行われた公演の模様を収録。作・演出はナイツ、構成は小川康弘・鏑木将宜・吾郷大介。ライブ・ビューイングが行われた日の公演なので、その時に使われた映像がそのままソフト化されているのではないかと思われる。お手軽だ。ちなみに、当時ゲストとして登場している、「昔昔亭A太郎」「キンタロー。」「かが屋」によるパフォーマンスは未収録。様々なジャンルの芸人たちによるパフォーマンスが楽しめてこそのナイツ独演会であるような気もするが、そこは何かしらかの事情があるのだろう。

本編を再生すると、まずは開演前の横浜にぎわい座の様子が映し出される。幕の下がっている舞台には、【本日の公演は契約上の問題が発生した為中止とさせていただきます】と書かれたメッセージボードが。説明するまでもなく、当時話題となった沢田研二の公演中止に絡めた時事ネタだ。ライブツアー中に起きた出来事をこうしてネタにしてしまえるところに、彼らの芸人としての身軽さを感じずにいられない。そこへ、もはやナイツ独演会ではお馴染み、シャープでホットなハイヤングこと漫談家中津川弦が司会として登場。なんとも掴みどころのない不思議な空気の前説で、会場を良くも悪くも一つにまとめてみせる。この唯一無二の魅力、歌手で俳優の方のゲンさんにもきっと負けてない。多分。

そして独演会の幕が開く。

最初の漫才は『2018年をヤホーで調べました』。2018年を彩った事件の数々を、ナイツの二人が次々に漫才のネタへと昇華する。近年、時事を取り扱った漫才師といえば、爆笑問題の一強という状況が続いていたが(続けてますだおかだロケット団といったところか)、今やナイツの漫才はその対抗と成り得るレベルへと駆け上がってきているように思う。相撲協会の揉め事を漫才協会に絡め、関ジャニ∞のメンバー脱退の真相をジェスチャーで語り、話題の人物のイニシャルにKが多い“イニシャルKの法則”が昨年に引き続いて今年も検証される。素知らぬ顔で毒を撒き散らす、寄席芸人の本領をまざまざと見せつけたパフォーマンスだった。

次に披露された漫才は、自己紹介ギャグを考えてきたという塙が、どこかで聞いたことのあるフレーズばかりを口にする『インクロスバッグ』。しかし、この漫才の肝は、その後に繰り出される「○○入ってるよ!」「え? ××入ってました?」というやり取り。丁寧に織り込まれた言葉遊びと随所に挟み込まれる悪意がたまらない。更に、夢オチのシステムを逆手に取った『夢寝落』、サッカーのユニフォームに身を包んだ塙がワールドカップをおバカに振り返る『ノブユキ・ハナワ』と、バカバカしいネタが続く。

と、ここで企画のコーナー。塙と中津川弦が舞台に登場し、これから始まるパフォーマンスについての説明が始まる。二年前に亡くなったマセキ芸能社の柵木会長の「母親が演歌歌手だった土屋も演歌歌手にして売れさせたかった」という意志を受けて、これから土屋がオリジナルの曲を披露するのだという。なんだそりゃ。説明を終えた二人は舞台から姿を消し、代わりに現れたのはマイクを手にした着物姿の土屋。地味で目立たず世界に紛れて生きている自身の境遇をカメレオンに例えたオリジナルソング『変色龍』を歌い上げる。なんだこりゃ。会場内を練り歩き、観客と握手する土屋。なんなんだこれは……。

突如として挟み込まれた謎の歌のコーナーが終わると、再び漫才が始まる。まずは、アイドルの名前が覚えられないという塙が、土屋に協力してもらいながらアイドルの名前を思い出そうとする『クイズ』。このネタがどうしてクイズというタイトルなのかは、実際に観てみないと分からないだろう。なかなかに絶妙な捻りを加えているように思う。続いて、某ドラマのヒットを受けて、ナイツの漫才にボーイズラブの要素を加えてみようと試みる『ラブ』は、結果として他の漫才師のスタイルに似通ってしまう……そんな、お笑いフリーク大好物な漫才。否、確かな技術があってこそ、成し得る技である。しかと見よ。

中津川弦による軽妙なトークを挟んで、オーラスで披露されたのはなんとコント! 塙が出演していたドラマ『警視庁・捜査一課長』をモチーフに、浅草東洋館で起きた殺人事件を解決する漫才協会副会長を塙が見事に(?)演じる『そうさ副会長』である。被害者は浅草を中心に活動しているベテラン芸人たち。そして、調査の結果、明らかにされてしまう不穏な実話の数々。いつものナイツの師匠イジりに、かなり強めのスパイスを加えた、天下御免の悪ふざけ時間だった。まったく、もう。

これら本編に加えて、特典として『Documentary of ナイツ独演会「ワッショイ」でない事だけは確か』を収録。ライブツアーの舞台裏が収録されているのだが、ゲストの人数があまりにも多すぎるために、かなり豪華な面々が名前を連ねているにもかかわらず、とても勿体無い使い方をしている。中川家ますだおかだ、オードリー、サンドウィッチマンかもめんたるさらば青春の光……これほどの面々が一瞬しか映っていない。にゃんこスターに至っては背中しか映っていない。とはいえ、よしもと、松竹、ナベプロケイダッシュ太田プロサンミュージックなどなどの事務所の垣根を超えて、この短時間の映像に収まっているのは脅威の一言。一見の価値があるかもしれない。

・本編【84分】
「2018年をヤホーで調べました」「インクロスバック」「夢寝落」「ノブユキ・ハナワ」「変色龍」「ゲーム」「ラブ」「そうさ副会長」

・特典映像【15分】
「Documentary of ナイツ独演会「ワッショイ」でない事だけは確か」

「タイタンシネマライブ」(2019年6月15日)

ダニエルズ「コント:宝くじ」
脳みそ夫「ペペロンチー子」
 ゲスト:空気階段「コント:EXILEオーディション」
 ゲスト:アイデンティティ「漫才:野沢雅子に挨拶を」
まんじゅう大帝国「漫才:ゆるキャラ
日本エレキテル連合「コント:朝礼」
 ゲスト:シソンヌ「コント:同居人と」
ウエストランド「漫才:解明されない謎」
 ゲスト:神田松之丞「講談:中村仲蔵
 ゲスト:BOOMER&プリンプリン「ゆうひが丘の総理大臣(令和版)」
爆笑問題「漫才:山里亮太蒼井優の結婚、元KAT-TUN田口の逮捕、丸山穂高議員の失言、原田龍二の不倫騒動」

イオンシネマ高知で観賞。過去のブログ記事によると、最後にタイタンシネマライブを鑑賞したのは2017年10月のことになるらしい。よもや一年以上も期間が空いてしまうとは。当時のメンバーを見てみると、トップリードの名前が。かなり面白いコントをやっていた記憶がある。この直後、あんなに面白いコントをやっていたコンビの片割れが、あんなことをやらかして、コンビを解散してしまうことになろうなどと、当時の私は想像もしなかっただろう(普通はしない)。

今回は神田松之丞が出演するということもあって激しいチケット争奪戦が繰り広げられている……という事前情報を受けていたので、いつもなら当日券をササッと入手していたところを、今回はローソンチケットで前売り券を購入して臨んだ。しかしながら、結果的に高知の劇場はさして埋まらず、他に空席が幾つもあるにも関わらず、前売り券を購入した人たちが無駄に指定席に固められてしまうという哀しい事態に。とはいえ、以前に鑑賞したときのガラガラぶりを思うと、かなりマシな集客数になっていたように思う。シソンヌ、空気階段の影響も大きいのだろうが、ここは松之丞様様といったところだろうか。

オープニングは事務所売り出し中の若手・ダニエルズ。長髪で細身なあさひの女装に定評のあるコンビである。今回も女装して舞台に臨んでいた。ネタは『宝くじ』。宝くじが当選し、舞い上がる夫婦の姿を描いたコントである。二人とも演技力が安定しているだけに、台本によるパフォーマンスがもう少し欲しい気もする。インプラントのくだりは笑った。続けて、お馴染みの脳みそ夫は、全ての登場人物が麺類にちなんでいるコント『ペペロンチー子』。いつもと同様、ことあるごとに台詞に面を絡ませていくバカバカしさがたまらない。一組目のゲスト・空気階段EXILEのメンバーオーディションにやってきたヘンなおじさんのコントを披露。彼らのコントに登場する珍奇な人々はどうしてこうも不思議なパワーを持っているのだろうか。続けて、二組目のゲスト・アイデンティティは、ネタにさせてもらっている野沢雅子の元へいつものモノマネメイクのまま挨拶に行くという漫才コント。野沢雅子の声で失礼な言動を取り続ける田島とそれにしっかりツッコミを入れていく見浦によるいつもの漫才……かと思いきや、終盤でまさかの展開に。あの角度は漫才の発明だ!

初単独ライブを控えているまんじゅう大帝国は、ゆるキャラをテーマに不条理な世界を展開する。途中、某夢の国の住人について触れるくだりがあって、ちょっと冷や冷や。意図的に触れたのか、それとも天然なのか。日本エレキテル連合はとある企業の朝礼風景を描いたコント。ボケらしいボケがあるわけではないのだが、それをコントとして表現するという視点の角度が悪辣とした笑いを誘ってくる。今回、最もヤバかったのは、このコンビだろう。三組目のゲスト・シソンヌは、単独公演でも披露していたコント『同居人の』を披露。ある日、何の相談もなく仕事を辞めて、家に閉じこもり、何も喋らなくなってしまった同居人のとある行動を描いたコントである。伝えようとする意志をもって行動することの大切さを感じさせられるネタなのだが、それと同時に、堪えられない笑いが生み落とされる、この表現力の凄まじさ。とてつもなかった。

そろそろM-1の決勝戦に進出したいウエストランドは、二人がお互いに解明されていない謎について話し合う漫才。爆発力という意味ではイマイチだったかもしれないが、井口の卑屈さ、河本の不敵さ、そして井口の真顔の面白さが引き出されていて、方向性としては良いように思えた。年末に向かって突っ走れ! 四組目のゲスト・神田松之丞はマクラ無しで『中村仲蔵』。役者の血筋ではないために不遇な扱いを受けるも戦い続けた中村仲蔵が『仮名手本忠臣蔵』の五段目に苦心する姿を描いた講談である。冒頭、幼い仲蔵が、役者の仲蔵にすぐさま切り替わる映画的演出にグッと胸を掴まされた。あれは元来の構成なのだろうか。あまりにもドラマチックで、すっかりメロメロになってしまった。それ以降の展開も、まったくテンションを落とすことなく、グググーッと迫力ある高座を見せていた。本来の持ち時間が30分のところを45分も演じてしまった、まさしく熱演であった。そんな松之丞の後を受け取ったのは、もはやゲストと呼ぶには出演頻度が高すぎるBOOMER&プリンプリン。平成の時点で古臭かった質感のコントを、そのまま令和まで持ち込んでいた。彼らの芸もいつかは『中村仲蔵』のように古典になっていくのだろうか。ならんだろうなあ。

そして大トリは爆笑問題南海キャンディーズ山里亮太蒼井優の結婚報道に始まり、ここ最近の時事ネタをこれでもかと漫才にぶち込んでいる。そのいずれもが一級品の面白さ。ただ、最近の爆笑問題は、ネタではない素の状態で二人がやり取りする瞬間が魅力になっている部分も。今回は、田中が太田のボケに「落ち着けよ!」とツッコミ、それに対して太田が「落ち着けよってツッコミはなんだよ」と田中のツッコミとしてのボケに対する優しさの無さに苦言を呈するくだりが笑えた。

エンディングには、予定が詰まっていた空気階段以外の出演者が全員登場。高身長をイジられるシソンヌ、楽屋で自身のラジオを聴きたがっていることを注意される神田松之丞も面白かったが(太田が「ピカソ」の話題を振ったのはアツかった!)、BOOMER&プリンプリンによるおぼん・こぼん情報が最も会場を盛り上げていたように思う。よもや令和の時代におぼん・こぼんがブレイクするとは。……あっ、この場合のブレイクっていうのは売れっ子になるって意味で、決して壊れるという意味では……。

次回は八月末に行われる予定とのこと。また観に行きたいな。

「山里亮太の140 高知公演」(2019年6月1日)

今年もまた山里亮太が高知にやってくる。

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昨年の六月、友人夫婦とともに鑑賞した「山里亮太の140」が今年も高知県で開催されるというので、今回も観に行くこととなった。当時の会場は高知市にある【高知県立県民文化ホール】(500席)だったが、今回の会場は【須崎市立市民文化会館】(964席)。須崎市といえば、つい先日、ゆるキャラ絡みの騒動を巻き起こした町として知られている。恐らくは何の意図も含みも無かったのだろうが、結果として胡散臭い煙の立つ場所を嗅ぎ付けてしまうところに、山里亮太の異常な嗅覚の鋭さに感じ入らざるを得ない。

会場も変わればメンバーも変わる。先述した通り、前回の公演は友人夫婦とともに鑑賞したのだが、今回はなんと母と鑑賞することになってしまった。実は母は山里亮太のことが大好きで、私が友人夫婦とともに彼のトークライブを鑑賞したことも羨ましいと思っていたらしい。母がマイケル・ジャクソンやクィーンのファンだったことは知っていたが、ある意味、それらのポップスターとは真逆の存在である山里亮太のことをそれほど好んでいたとは知らなかった。……尤も、母がどれほど山里亮太の本質を認識しているのかは、私もよく分からないのだが。あのワルい山里の面白さを理解することが出来るのか、些か心配ではあった。

ライブ当日の六月一日、午前十時半ごろに自宅を出発する。移動手段はお馴染みの愛車。一度は高知まで電車で移動したみたい気持ちもあるのだが、なかなか踏み出せない。山中を駆け抜ける電車から見える景色はきっと素晴らしいだろう。最寄りのインターチェンジから高知県須崎市に在る道の駅“かわうその里すさき”へと向かう。移動時間はおよそ一時間半。長いといえば長く、短いといえば短い。据わりの悪い長さだが、道中における母との雑談は思っていたよりも白熱し、さして長さを感じることはなかった。

正午を過ぎたころ、最初の目的地である“かわうその里すさき”に到着。すっかり空っぽになってしまった胃袋を満たすべく、二階の“レストランとれた亭”に駆け込む。名前のセンスは荒々しいが、注文した鍋焼きラーメンちりめんセット(1,200円)はとても美味しかった。まさかラーメンの中に牛モツが入っていようとは……。

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食後、一階のお土産物のコーナーを物色し、手ぬぐいタオルを二本ほど購入する。それぞれラムネとかき氷をテーマにしたデザインで、鮮やかな青からは涼しげな印象を与えられる。これからの季節に最適といえるだろう。

午後一時ごろ、かわうその里すさきを出発。そのまま何処にも立ち寄ることなく、トークライブの会場である須崎市立市民文化会館へと向かう。時間的な余裕は十二分にあったのだが、どれほどの規模の駐車場が設備されているのか分からなかったので、早めに到着しておこうと判断した次第である。ナビの指示通りに車を走らせて、出発からおよそ十分後に到着。驚くべきことに、開演時刻までまだ一時間以上も余裕があるにもかかわらず、既に駐車場にはみっちりと車が詰め込まれていた。その中で、まだ辛うじて空いていたスペースを見つけ出し、無事に停車。もしも開演直前にやってきていたとしたら、駐車場を求めて近辺を探索する羽目になっていただろう。

周辺の車を見ると、車内に留まっている人がやけに多い。近隣に退屈を凌げるような施設が存在しないのだろう。とはいえ、見知らぬ土地に身を置きながら、車内でじっと時計の針が開場時刻である午後二時を差すのを待ち続けるというのも、あまりに芸がない。そこで、ひとまず車を降りて、会場へと向かうことに。会場そのものは駐車場の目の前に建っているのだが、間に土讃線の線路が引かれているため、わざわざ遠回りをする必要がある。どうも利便性が良くない。回り道をして、会場の中へ突入する。すると、目の前にはロビーのような狭い空間があり、そこで沢山の人たちが雑談を交わし合っていた。まさしく吹き溜まりである。恐らくは、彼らの多くが山里亮太トークライブを目的に集まり、その開場時刻を今か今かと待ち構えているのだろう。

これからライブが行われる大ホールへと通じる入口は封鎖されていたので、それ以外の施設で時間を潰すことに……したのは良いのだが、とにもかくにも何もない。テレビもなければ図書館の類もない。辛うじて、大会議室という空間で雑貨バーゲンが行われていたので、そこで売られているものを物色してみたのだが、それでもまだまだ開場時刻はやってこない。何処かのなんとかいうお店の閉店セールを兼ねていたためか、売られている品物はやたらめったに安かったのだが、こんなところで要らないサングラスや双眼鏡やアウトドアチェアを購入しても仕方がない。荷物が増えるだけだ。ただ、ひたすらに、開場時刻を待ち続ける。

午後一時四十分ごろ、予定よりも早めに開場。その頃には、ロビーに集まる人の数が随分と増えていたので、このまま窮屈な場所に客を押し込んだままにしておくのは申し訳ないという判断だろう。有難い。チケットをもぎってもらい、大ホールのある二階へと通じる階段を上がると、そこにもロビーのような広々とした空間が存在していた。その一角に長机が設置され、そこで山里の近著が売られていた。『天才はあきらめた』と『あのコの夢を見たんです。』である。サイン本であるという。

天才はあきらめた (朝日文庫)

天才はあきらめた (朝日文庫)

 

どちらも持っていなかったので、一冊ずつ購入する。いずれかの本を持参していると、公演後の撮影会に参加できるとの触れ込みであった。性根がミーハーな私には非常に有難い話なのだが、前回のライブの公演時間が二時間四十分だったことを思うと、その後から始められる撮影会への参加を希望する観客たちの列に参加できるほどの体力が残されているのか、些か不安も感じていた。

購入した本を片手にホール内へ。洒脱ではないが古びてもいない、きちんと落ち着いた雰囲気の漂う客席がとても良い。舞台のモニターには、海外のオシャレな街を歩いている山里亮太のイラストが映し出されている。誰だお前は。全席指定である。私の席は一階の八列目にあった。端っこではないが真ん中でもない、丁度良い席である。そこに座り、後はじっくりと開演時刻を待つ。待っている最中、母に「スマホの電源は切るの?」と聞かれる。「そりゃ切るよ」と返すと「飛行機モードでもいい?」と更に返される。「いや、アラームが作動する可能性もあるし、切った方がいいよ」と説明すると、ようやく電源を切る準備を始めた。舞台観賞に慣れていないと、そういう認識になってしまうものなのだろうか?

午後二時、開演。

モニターにカウントダウンを告げる映像が映し出される。カウントされると同時に、様々なタッチで描かれた山里亮太のイラストが飛び出していく。幾つかのイラストには見覚えがある。過去にTwitterアイコンに使われていたイラストだろうか。カウントがゼロになると、彼のホームグラウンドである冠番組南海キャンディーズ 山里亮太の不毛な議論』のオープニングテーマが流れ始める。SUEMITSU & THE SUEMITSUの『Soul Accident』だ。元来、テレビドラマのために作られた曲だが、今やすっかり山里亮太のテーマとなっている。曲が盛り上がってきたところで、山里が客席後方の入り口から登場。パリッと決めたスーツ姿で、観客たちの合間をゆっくりと降りてくる。その姿はまさしくスターそのものだ。丁度、私の席から手の届く距離だったので、山里が近付いてきたときにそっと手を伸ばしてみた。一瞬、触れた。とてつもなく冷たかった。

そしてゆっくりと舞台に上がってきた山里。ご満悦の表情だ。軽い挨拶を済ませ、まずはライブの趣旨を説明……するよりも先に、彼の高知県に対する思い入れの深さを語り始める。前回の公演でも高知に対する思いを語っていたが、「今年に入って六度目の高知」と聞いたときには、流石に耳を疑った。単純計算すると、月に一度のペースで高知を訪れていることになる。どれほど高知を愛しているのか。前回と同様、今回も高知には前日入り。市場で呑み、高知の空気を実感して、本日に至ったのだという。私は別に高知県民ではないが、高知に対しては思い入れがあるので、こういう話を聞かされるととても嬉しい。

そして、話はライブの趣旨へ……至る前に、地方で仕入れたとある情報について……話していた筈なのだが……何故か記憶が……他にも何か話していたが……何の話をしていたか……思い出せない。そういえば、オープニングトークで山里が「皆さんはあそこの出口を出た瞬間に全ての記憶を失う魔法にかけられている」と話していたような気がする。さては、このあやふやな記憶も、その魔法によるものか。魔法……魔法と夢……何かを思い出しそうな気がしたが、やはり思い出せない。ただ、普段から山里が書き残している地獄のメモ帳を公開していたような記憶がある。内容はまったく覚えていないが、なかなかにとんでもない話をしていたような気がする。

気が付くとライブは終了。時刻を確認すると、既に午後五時二十分を回っていた。およそ三時間にも及ぶ白熱したトークライブだった、ということなのだろう。内容をまるで覚えていないが。母も笑っていたような気がする。内容はまるで覚えていないが。

ホールからロビーに出ると、ちょうど撮影会の参加者が並ばされ始めていたところだったので、慌てて後ろに並ぶ。四人で横並びになった、太めの列だ。幸い、前から五列目ほどのところに入り込むことが出来た。列の先には簡単な仕切りが作られている。恐らくは、あの裏で撮影してもらえるのだろう。カバンの中から本を取り出し、スマホのカメラアプリを起動させ、じっと待つ。しばらくして、後ろを振り返ると、そこにはとんでもない人数が列を成していた。早めに並んでおいて良かった。

再び、前を向いて待ち続けていると、後ろの方がザワザワとどよめき始める。振り返ってみると、そこにはスタッフに案内されながら、ファンへと慈愛の目を向ける山里の姿が。やはりスターにしか見えない。案の定、山里は仕切りの裏に入った。そして列が動き始める。やがて自分の番がくる。仕切りの裏に入ると、そこには先程まで舞台上で何かを喋っていた山里亮太が。スタッフにスマホを渡して、ツーショットを撮ってもらう。その際、言わなくてもいいのに、ついつい「リトルトゥース(※『オードリーのオールナイトニッポン』リスナーの通称)です」と言ってしまい、「ありゃー」とリアクションしていただく。はぁ、有難い。私の後には母が撮影してもらっていた。「アレの母です」と言っていた。親子して言わなくていいことを言っている。血筋か。

目的を果たした我々は、すぐさま車に乗り込んで、本日の宿“ホテルタウン錦川”がある高知市へと移動する。およそ一時間かけて、午後六時四十五分ごろにホテルと提携している駐車場へ到着。荷物を下ろし、ホテルまで徒歩で移動して、午後六時五十分ごろチェックイン。早めに予約しておいたからだとはいえ、ビジネスホテルで一泊3,400円という金額は破格である。少し体を休ませたところで、ホテルを出て夜の街へと繰り出す。目指すは無論、山里もライブ前日に訪れていたという“ひろめ市場”である。

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しかし、時刻が午後七時という最繁時ということもあって、座れる席が何処にもない(ひろめ市場は様々な店が屋台のように連なった商店街で、適当な席に座って各店舗から酒や料理を調達するという酔いどれ版フードコートとでも呼ぶべきシステムを取っている)。しばらく中を歩いてみたが、まったく空く様子が見られなかったので、ひとまず外の店で軽めに呑むことに。そこで向かったのは、前回も訪れた“土佐のいごっそう 亀次”である。鰹のタタキで知られる明神丸の姉妹店で、味は確かなのだが、いつも空いている。人気がないのだろうか。心配だ。この日も鰹のタタキを注文、塩で頂いたところ、大変に美味しかった。その他、土佐巻(鰹のタタキの巻き寿司)、四万十鶏の唐揚げなどを、ハイボール片手に頂く。

三十分ほど経ったところで店を出て、再度ひろめ市場へ。すると、入口から入ってすぐのところにあるテーブルが、まさに空いたばかりの状態になっている。なんという好機。すぐさま二人で席を陣取り、すぐ近くの店舗“本池澤”で酒を注文する。つまみは“吉岡精肉店”の唐揚げである。山賊風味、バジル風味、カレー風味と多種多様な味付けの唐揚げがとても美味しい。しかし、屋外では落ち着いて呑めないためなのか、なかなか酔えない。仕方がないので適当に切り上げる。最後に、ひろめ市場の入り口にあるラーメン屋“神”でシメに黒こげラーメンを食べる。美味しかった。

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午後九時四十分、ホテルに戻る。翌日のスケジュールを考慮して、すぐさま風呂に入って床に就く……つもりだったのだが、うっかり無料公開されている『ワンパンマン』を読みふけってしまい、ついつい夜更かししてしまう。

午前三時ごろ就寝。

明けて六月二日、午前八時半ごろ起床。

身支度を済ませて、午前九時半ごろチェックアウト。外は雨。車に乗り込みながら、母と「昨日が雨じゃなくて良かったね」と話し合う。そのまま南国へ向かい、うなぎ料理の店として名高い“かいだ屋”へ。開店時刻は午前十一時だが、店舗には一時間前の午前十時に到着。なにせ待たされるということなので、早めに来る必要性があるのだ。ここで番号が書かれた伝票を受け取る。番号順に料理が出すことで、注文の流れを平等にしようという算段なのだろう。そのまま車内に戻り、そこで一時間待ち続ける。午前十一時、予定通りに店が開く。適当な席に座り、うな重の特上を注文。4,630円。なかなかの金額だ。四十五分後、料理が届く。食べる。サクサクとしていて、それでいてジューシーな鰻の身がたまらなく美味しい。

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食後、三十分ほどかけて、“道の駅南国 風良里”へ移動。お土産物を購入する。また、個人的に、ご飯に載せると美味しそうなアイテムを幾つか買い求める。これでまた食生活が豊かになりそうだ。

午後二時半、帰宅。お疲れさまでした。

「ENGEIグランドスラム」(2019年3月30日)

 オープニング:ビートたけし浅草キッド
NON STYLE「漫才:後輩の相談に乗る」
ジャルジャル「コント:歌手オーディション」
和牛「漫才:宇宙人にさらわれて」
 平成リズムネタ博物館
ロバート「コント:逆カラオケ」
フットボールアワー「漫才:冷蔵庫」
 ラウンジ:元「今昔庵」マスター(次長課長・河本)
ロッチ「コント:透視」
 被災地出張:サンドウィッチマン「漫才:謝罪会見」
ENGEI歌謡祭:水谷千重子×大黒摩季
ENGEI歌謡祭:TTT-BOLAN(TT兄弟×T-BOLAN
ENGEI歌謡祭:ココリコ遠藤×武田真治
スピードワゴン「漫才:結婚式のお祝いコメント」
 平成リズムネタ博物館
かまいたち「コント:放課後」
ナイツ「漫才:気になるアイドルグループ」
 ラウンジ:上沼恵美子(天才ピアニスト・ますみ)
 被災地出張:アンガールズ「コント:水族館」
陣内智則「コント:校歌」
アンジャッシュ「コント:バイトの面接と万引きの取り調べ」
 被災地出張:千鳥「漫才:音痴・顔で演技」
ENGEI歌謡祭:上杉みち(ロバート秋山)×May J.
ENGEI歌謡祭:トレエン斎藤×五十嵐結也
ENGEI歌謡祭:スペシャルものまねユニット「変人」
 被災地出張:タカアンドトシ「漫才:新婚」
 平成リズムネタ博物館
バカリズム「コント:誰がために」
ますだおかだ「漫才:岡田の離婚式・27時間TVランナーに森脇健児
 被災地出張:パンクブーブー「漫才:なぞなぞ」
バイきんぐ「コント:キャンプ」
平成生まれ:霜降り明星「漫才:アンパンマン
平成生まれ:ハナコ「コント:朝礼」
平成生まれ:ゆりやんレトリィバァ「What do you mean?」
平成生まれ:かが屋「コント:母親へのサプライズ」
平成生まれ:宮下草薙「漫才:先輩が家にやってくる」
平成生まれ:EXIT「漫才:サザエさんをチャラくする」
 ラウンジ:笑福亭仁鶴霜降り明星 せいや
インパルス「コント:ネタバレに厳しい奴」
 平成リズムネタ博物館
とろサーモン「漫才:自転車とクレーマー」
 ラウンジ:石田弘プロデューサー(石橋貴明)、前澤社長(チョコレートプラネット長田)、坂上忍(チョコレートプラネット松尾)
プラス・マイナス「漫才:野球のバッティング」
レギュラー「あるある探検隊」(平成リズムネタ投票第1位)
東京03「コント:企画会議」
中川家「漫才:電車内で電話、ヒーローインタビュー」
爆笑問題「漫才:平成の30年間」

“フジテレビ開局60周年記念番組”として放送。司会はナインティナイン山崎夕貴(フジテレビアナウンサー)。印象に残っているのは、冷蔵庫の機能を扱ったボケで想像力を掻き立てたフットボールアワー井戸田のピンネタを取り入れたオチを華麗に魅せたスピードワゴン、卓越した台本の精密ぶりを存分に見せつけたアンジャッシュ、キレ味が鋭すぎたますだおかだ、従来のスタイルとは違うオチでコミカルに落とした東京03。しかし、その中でも、やはり爆笑問題は強かった。平成30年間の出来事を取り入れた漫才で存分に観客を沸かしたところで、「タピオカを飲む太いストロー」→「韓国の紙幣を丸めて吸う」→「ピエール・タピ」と近々の時事ネタを見事にぶち込んだ。エンディングでつまづいて頭をぶつけて多くの視聴者を心配させたところも含めて、完全に生放送の場を席巻していた。素晴らしかった。本当に大事に至らなくて良かった。

ちなみに、「平成リズムネタ博物館」とは、平成に活躍したリズムネタ芸人たちが展示された博物館のことで、もう一度見たい平成リズムネタ芸人を決める視聴者投票で1位に選ばれた芸人だけがスタジオでネタを披露することが出来る……というコンセプトの企画が行われた。展示されていたのは、コウメ太夫、小島よしお、ジョイマン、にゃんこスター8.6秒バズーカー藤崎マーケット、レギュラー、吉村崇(平成ノブシコブシ)。視聴者投票の結果、第3位にジョイマン、第2位に藤崎マーケット、第1位にレギュラーが選出された。……ところで、この平成リズムネタ博物館の館長として、麒麟川島明が登場していたのだが、個人的には麒麟の漫才も見たかった。違う人でなんとかならんかったのか。