土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDについてなんやかんやいう

「お笑い評論家ほどお笑いから遠い人いないですからね」

「お笑い評論家ほどお笑いから遠い人いないですからね」

某月某日。Twitterのタイムラインを眺めていたら、こんなことをテレビで千原ジュニアが言っていたというツイートが流れてきた。お笑い評論家を名乗っているわけではないが、お笑いについてあーだこーだと宣うブログを運営している身としては、些か引っ掛かる物言いである。とはいえ、このような退屈な戯言を、かの天才・千原ジュニアがそう簡単に口にするわけがない。余程のつまらぬお笑い評論家に神経を逆撫でされるようなことを言われたのだろう……と、思っていたのだが、そのお笑い評論家が西条昇だと知って、頭を抱えてしまった。まったく冗談じゃない。

一般にはあまり知られていないが、西条昇氏は賞レースが開催されるたびに水たまりか何処かから孵化して大量発生するようなそんじょそこらの自称・お笑い評論家などと野次られるような輩とは比較することも愚かしい、正真正銘のガチのお笑い評論家である。構成作家・舞台演出家として現場を経験し、現在は大学でお笑い学の講師を務めている。氏が2003年に上梓した『ニッポンの爆笑王100―エノケンから爆笑問題までニッポンを笑いころがした面々』はお笑い芸人解説のマスターピースだ。是非ご購読を。

無論、「西条氏の言うことは絶対だ!」などと能天気なことを申し上げるつもりはない。ただ、この本意気のお笑い評論家を捕まえて、先述のようなことを言ってのけたのだとすれば、それはまったくもって愚かであるとしか言いようがない。安易におっとり刀で切り捨てていい人ではないのだ。あの立川談志をして西条昇は藝に惚れた。芸能に惚れたのである。その芸能の内に入る演芸に惚れた。軽演劇に惚れたのである。その惚れ様が家元に酷似する。価値観が共有するのである」と言わしめた人物だぞ! 余程の理由もないのに、そのようなことを言ってしまっていい人物ではないのである。

というわけで、実際のところはどうだったのか、番組の再放送を確認してみることにした。

2017年10月12日放送ハートネットTV

番組のテーマは「“マイノリティ”と笑い」。先日、放送された「とんねるずのみなさんのおかげでした 30周年記念スペシャル」において、石橋貴明が「とんねるずのみなさんのおかげです」時代の人気キャラクター・保毛尾田保毛男として登場したことがネットで物議を醸した件を受けて、番組内では様々な意見が飛び交っていた。ゲイの弁護士・南和行氏は「批判的な気持ちでまず見たっていうのもあるんですけど、やっぱりなくてもいいのになとか、あと、誰かが「これはちょっと……」って言わなかったのかなっていうのはありました」とコメント。一方で、ゲイの女装ライター・ブルボンヌ氏は、個人的には好意的に捉えていたと話しながらも「どこを見てたかとか、その子の周りにどんな環境があったかで、全然意見が違っちゃったんだろうな、とは思います」と慎重なコメントを残していた。

この他にも、議論の俎上に上げられるようになっただけ時代は変わった、メディアが表現と向き合うきっかけとしての抗議の大切さ、「ホモ」という言葉の持つ意味の変容など、メディアとマイノリティの有り様について様々な意見が交わされていた。その流れの中で、「そもそもどうして人は笑うのか、お笑い論の専門家に話を聞いてみた」として、西条昇氏がVTR出演を果たしていた。

以下、西条氏のコメント。

「もともと、お笑いっていうのは、どこか差別的な部分っていうかな。そういうことをネタにすることが多くて、狂言なんかにも身体の不自由な方なんかが登場して、それを真似するネタとかね……そういうのもあったりして」

「“人の不幸は蜜の味”っていうような言葉もありますけど、それと通じる部分とかもあるのかもしれませんね」

「その、どっか常識・良識をふっと忘れたときに見たら、現象として面白いなって思っちゃったり、笑ってしまう部分は、人間はどこかあるんじゃないですかね」

「だから、芸人の本能としては、そういう逆に扱いにくいところでも、出来れば上手く扱ってみたい、みたいな……そういう欲もあると思うんですよね」

「そういう問題を扱っているんだけども、誰も傷つかないようにするとか。やっぱり、そこが逆にいえば、芸人の腕の見せどころのような気もしますけどね」

これに対して、ジュニアは具体的に以下のように発言した。

「お笑い評論家ほどお笑いから遠い人いないですからね」

「まったく芸人は誰も傷つけたくないですし、ただ面白いことを提供したいということだけで、傷つけてしまったことには「申し訳ないな」と思いますけれれども、そんな気さらさらないです」

「誰かを差別して笑いを取ろう、誰かを嫌な気持ちにさせて笑いを取ろう、うーん、どんなネタを作ろうって考えている人、一人もいませんから、芸人で」

このジュニアの発言に、スタジオの人たちは共鳴するかのように頷いていたのだが、西条氏のコメントとジュニアの発言がまるで噛み合っていないことに誰も気付かなかったのだろうかと、少し頭が痛くなった。

西条氏の発言を要約すると「大衆は差別的な笑いを求めるところがある。だから芸人は本能として、そういった本来は扱いにくいテーマを扱ってみようという欲があるのではないか。そういったテーマを扱っているのに、誰も傷つかないようにするところが芸人の腕の見せどころ」ということにある。芸人が差別的な笑いを意欲的に作ろうとしているという話ではなく、大衆がそれを求めているからこそ、芸人はあえてそういった笑いに本能的に切り込もうという欲があるという話なのである。だから、ここでジュニアが芸人を代表するかのように、「私たちは差別的な笑いを作ろうと思っていない!」とでもいうような宣言をするのは、むしろ自身の笑いが差別性を孕んでいることについて認識できていないことの表れになってしまっていて、なんとも宜しくない。それ単なる自爆やぞ。

ただ、この件に関しては、ジュニアばかりを責められない。そもそも「“マイノリティ”と笑い」などというテーマを掲げていながら、笑いの持つ差別性についての解説を短く編集されたVTRだけで処理しようとした番組の姿勢が良くないのである。もし、本当に真剣に語り合うのであれば、せめて生放送なんて土壇場でやらずに、きちんと細かい説明なども交えた上で議論すべきだった……とはいえ、こんな安易な言葉で切り捨てることはないと思うが。せめてジャックナイフ抜いてほしかったぜ。

「ヨーロッパ企画 第36回公演「出てこようとしてるトロンプルイユ」」(2017年10月14日・高知)

午前9時半起床。午前11時チェックアウト。

ひとまず車をホテルと提携している駐車場から別の有料駐車場へと移動させる。三十分200円・最大料金800円のところに停車したのだが、今にして思うに、すぐ近くにあった一時間100円の方を利用すべきだったような気がしないでもない。八時間も停めることはないだろうし。空腹だったので、漁師料理の店として知られている「明神丸 帯屋町店」で朝食兼昼食を取る。藁焼き鰹のタレたたきと塩たたきを一緒に楽しめる定食を頼む。とても美味しかったのだが、それぞれ三枚ずつしかなかったので物足りず。次回はどちらかに味を絞ろうと心に誓う。

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あちらこちらを散策しつつ、高知県立県民文化ホールへ移動。同施設で行われるヨーロッパ企画の公演を観るためである。「タイタンシネマライブ」の翌日に高知で公演が行われるという情報を得ていたので、これは渡りに船とチケットを購入していたのだ。ちなみに、同施設には「オレンジホール」と「グリーンホール」の二つのホールが備わっており、ヨーロッパ企画の公演はグリーンホールの方で行われたのだが、もう一方のオレンジホールの方では、「大政奉還150年 第29回全国龍馬ファンの集い 志国高知大会」なるイベントが催されていた。内容の想像つかなさもさることながら、過去に28回も行われているという事実に驚くばかりである。このイベントに伴い、ホール前にはやけにイケメンに描かれた坂本龍馬のイラストの半被を着たスタッフがウロウロしていて、なんだか落ち着かない気持ちに。

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午後1時半に開場となったので、ロビーへ移動。物販コーナーで大量のDVDとサントラCD、パンフレットなどといった公演グッズが大量に売られていて、少しパニックに陥る。しばし悩んだ挙句、第3回公演「ムーミン」と第24回公演「ビルのゲーツ」のDVDを購入。3,500円以上の購入者にプレゼントされるトートバッグとともに受け取ったので、これをカバンに速やかに押し込んだ。トイレで用を足し、自らの指定席へ。やや後方ではあったが、真ん中でとても見やすい席だった。

午後2時開演。

物語の舞台はとある売れない画家の部屋。川に飛び込んで帰らぬ人となってしまった彼の部屋に新しい住人を招き入れようと考えていた大家は、遺品を片付けるために家賃を滞納している三人の若き画家たちを呼び集める。同じ画家として忍びない気持ちになりながらも、渋々ながら、故人の遺した絵を処分していく三人。しかし、騙し絵(トロンプルイユ)を得意としていた彼の作品がいちいち気になって、なかなか作業は進まない。そんな中、こちら側へと出てこようとしているトロンプルイユの連作を見つけて……。

まだまだ具体的な内容には触れられないが、とてつもなく面白かった。それぞれの絵が織り成す大喜利のような面白さから、トロンプルイユの連作が発掘され、そこに様々な新たなる登場人物たちが絡み合い、それから予想外のストーリー展開を迎える……舞台演劇ならではの演出とさりげない言葉選びで確実に笑いを取りに行く台本がたまらなかった。あんなにフザケた会話のやりとりをどうやって台本に落とし込んでいるのだろうか……。その結果、私としては珍しくアンケートを書き、次回公演の予定を知らせてもらうためのダイレクトメールも要望した。完全に心を射止められたらしい。

午後4時過ぎ終演。

ひろめ市場へ移動。「吉岡精肉店」で唐揚げとハムカツを購入。食べながら帰ろう。「黒潮水産」で土佐巻(鰹のたたきの巻き寿司)を二本購入。こちらは家族への手土産だ。いつかここでしっぽりと飲み明かしたいものである。ひろめ市場を出て、一度車に荷物を預け、夕飯にラーメン屋「しなとら 天神橋通店」へ。高知県でやたらと見かけるお店だったので、以前から気になっていたのである。しなとらラーメンを注文。特筆するほどの味ではないが、とてもベーシックで奇をてらわない美味さがあった。

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食後、車で出発し、往路と同様に高知自動車道を辿って、午後6時半に帰宅した。お疲れさまでした。

「タイタンシネマライブ」(2017年10月13日・高知)

10月13日、午後6時。

私は激しい雨が降り注ぐ高知自動車道を愛車で走り抜けていた。愛媛県四国中央市川之江ジャンクションから高知県高岡郡四万十町へと続く高速道は、四国のど真ん中に入ったひび割れのように繋がっている。その途中、四国山地を縦貫するルートにおいて、まさしく豪雨に遭遇してしまった次第である。否、日常生活の中で出くわしたのであれば、脅威とも猛威とも呼べない程度の雨ではあった。しかし、ただでさえ頼りとなる灯りの限られた山間部での走行において、その雨はフロントガラス越しの視界を遮るには十二分だった。もはやそれは恐怖そのものである。

何故に、善良なしがない一般市民である私が、かような酷な目に合わなくてはならないのか。強くハンドルを握っている私の脳裏には、あの男の姿が浮かんでいた。

今年の8月25日。その日も私は高知自動車道を走り抜けていた。この日のタイタンライブにおいて、ゲストとしてビートたけし……もとい落語家の“立川梅春”が高座に上がるという情報を手に入れていたからだ。好事家ならば見逃せない絶好の機会である。だからこそ、タイタンライブの模様を生中継する“タイタンシネマライブ”を配信している直近の映画館であるTOHOシネマズ高知を目指していたのである。ところが、ライブ直前になって、梅春が多忙を理由に出演をキャンセル。しかし、この時「次回は必ず出演する!」との告知があり、そこで私は次もまた観に行かなくてはなるまいと固く誓ったのである。

そして、当日を迎えたわけだ。

TOHOシネマズ高知を有するイオンモール高知に到着した頃、時刻は午後6時半を過ぎたところだった。上映まで一時間ほどの余裕があったが、油断は禁物である。すぐさまチケット売り場へと移動し、販売機からチケットを引き出す。周りの客のリアクションが気にならないように、最前列の席を陣取った。後は上映時刻まで時間を潰すだけである。幸い、多種多様の店舗が居並ぶショッピングモールにおいて、それはあまりにも容易なことだった。書店を回ったり、CDショップを眺めたり、楽器屋で試し弾きをしようとして躊躇したり……ああだこうだとやっているうちに気が付けば開演五分前となったので、映画館へと飛び込んだ。最前列の席はスクリーンがとても近かったが、鑑賞が苦になるというようではなかった。むしろ、前列の客を気にしなくても良いので、足をとことん伸ばすことが出来て、とても快適だった。

午後7時半、開演。

ゆりありく「BAR」

ウエストランド「漫才:顔芸」

脳みそ夫「温泉お化け・お湯うれい」

XXCLUB「漫才:道に迷っている外国人」

トップリード「コント:娘さんをください」

長井秀和「コント:池○大○の霊言」

日本エレキテル連合「コント:日本の明日を考える」

パックンマックン「漫才:MANZAI、マックンの英語力」

BOOMER「コント:演歌歌手ジュンジョウジ」

友近「スタイリスト マイコ」

爆笑問題「漫才:小池百合子、給食トラブル、ノーベル文学賞、芸能界の出来事」

立川梅春「落語:大工調べ」

ゆりありくはBARのマスターを演じているりくにゆりあが恋の相談を持ち掛けるコント。アラフォー女性が猿に恋の相談をしているという画だけで、たまらなく面白い。ウエストランドは井口が「世の中は全て顔芸なんだよ!」という持論を展開する漫才。普段の卑屈な漫才とは少し違った趣向のネタで、一定の面白さはあるのだが、とはいえ井口にはもっと歪んだ主張をしてもらいたいと思ってしまうのはファンのエゴというものだろうか。脳みそ夫は音楽を用いたキャラクターコントで、普段のネタよりも漫談の色合いが強いネタ。ちょっとスベッていたが、それに戸惑う姿もまた面白い。XXCLUBは初見。コミカルなビジュアルの大谷小判に対して、斜に構えた態度の大島育宙がロートーンなボケを繰り出すスタイルの漫才で、とても面白かった。あんなに故意犯的なボケも珍しい。

一組目のゲスト・トップリードは、彼女の父親に「娘さんをください!」と懇願するも断られるたびに、時間を戻して失敗を修正していくコント。名作『先行く男』もそうだったが、トップリードはこういったSF的な要素をあまりにも小さくて狭い空間の中に盛り込んだネタがとても上手い。ただ、世界観だけではなく、展開そのものも広がらずに、設定の中に収まり過ぎてしまっているきらいがある。この面白さをもっと世間に知ってもらうためにも、更なるブラッシュアップを目指してもらいたい。長井秀和はいつもの漫談スタイルではなくコントで創○学○をイジり倒す。ネタの内容は相変わらずだっただ、表情にかつてのギラギラ感が取り戻されていたのが少しだけ気になった。立川梅春の登場に気持ちが引き締まったのだろうか。日本エレキテル連合は討論番組で激論を交わす男女を皮肉たっぷりに描いたコント。あからさまな差別を含んだボケが発せられるたびに、自分の差別心を確認させられて、なんとも不思議な気持ちにさせられた。今のタイミングで、このネタを引っ張り出してきた意味について、少し考えてしまう(けっこう昔のネタなのである)。

二組目のゲスト・パックンマックンは大半を英語のやりとりで占めたしゃべくり漫才。英語なのに不思議と内容が理解できる、その絶妙なバランスを保った技巧がたまらない。英語における「and」の使われ方について言及するくだりは、深く感心させられた。普段はプリンプリンと合同コントを披露することの多いBOOMER、今回は単独で登場。伊勢のどうしようもないキャラクターに対して、ダミ声の河田の味わい深いツッコミが絡み合う様が、どこまでも渋い。今の時代にはまったく適さないが、合間にこういうコントが盛り込まれると嬉しい。友近はおしゃれな雰囲気の番組に出演しているスタイリストのコント。ファッション用語に対する皮肉と言葉遊びが同時進行で繰り広げられるスゴさをまったく感じさせない、その恐ろしさを再認識。否が応でも笑わせられる徹底した強さよ。爆笑問題はお馴染みの時事漫才。「おはよう、たけしで すみません」の話題に始まり、小池百合子解散総選挙から給食トラブル、ノーベル文学賞の話題から何故か太田がドラマ版『消えた巨人軍』について熱弁するというバカバカしさ。そして終盤は、あびる優清水良太郎安室奈美恵の引退、新しい地図と芸能ニュースで畳み掛ける。最高の漫才だった……が、どうしても意識はこの後の人に……。

爆笑問題の漫才が終わると、舞台は暗転。荘厳な音楽が流れる中で、真っ暗な闇の中をスタッフが高座を組み立てている様子がほんのりと映し出されている。それらの作業が終わると、画面に浮かび上がる立川梅春の文字。やがて明転。出囃子「梅は咲いたか」が流れ始め、そして……舞台袖から、あの男が登場する。ビートたけしだ。ホンモノだ。否、今は立川梅春だ。本当に落語を演るのか。高座に上がって、座布団に座り、深く頭を下げる。まずは「おはよう、たけしで すみません」に出演しなかった回の話から。既に伝え聞いていた話だが、それでもとことん面白い。それから猥雑な小噺へ。ありとあらゆる下半身にまつわるジョークの連発は、今は亡き家元へのトリビュートのよう。更に話題は映画関係のエピソードへ。大島渚監督の映画に対する熱意が故にブッ飛んだ指示の数々を紡いでいく。

これらのマクラを経て、古典落語『大工調べ』へ。溜め込んだ家賃の代償に大工に必須の道具箱を大家に取り上げられてしまった与太郎。家賃を払えば返してくれるというので、見かねた棟梁が代わりにお金を出してくれようとするのだが、僅かばかり足りない。まあ、大半を払うのだから、少し足りないぐらいなら「あたぼう(当たり前ェだベラボーめの略)だ」と与太郎に言い聞かせ、大家の元へと向かわせる。ところが、大家はそのお金を受け取っておきながら、僅かに足りないからと道具箱を返してくれない。泣く泣く棟梁の元へと戻る与太郎。仕方がないので、今度は二人で大家の元へと向かうのだが……。棟梁が大家に向かって啖呵を切るくだりが話題になっているように思うが(実際そこがこのネタの見せ場ではある)、個人的には与太郎のヌケた態度に見入ってしまった。とにかく愚鈍で気が利かない。でも、その姿が妙に愛らしい。思えば、この棟梁と与太郎の兄弟分のような関係性は、たけし映画で少なからず見かけたような気がする。そして話は、通常は「つまらない」という理由からカットされがちなお白州のシーンへ。ここで梅春は悪ふざけで敷き詰めることで退屈さを回避、最後は強引に『三方一両損』にしてしまうというバカバカしさで走り抜けていった。

エンドトークは、出演者たちと梅春で。裏で梅春が友近をゆりありく・ゆりあだと勘違いしてしまい、やたらと馴れ馴れしい態度に「なんだコイツ」と思ったらしいという話がとてもバカバカしい。この他、初対面のトップリードに人見知りしたり、BOOMERを「ボキャブラ天国」で見た記憶があると話したり、軽妙な挨拶を繰り出す脳みそ夫に戸惑いを見せたり、梅春と芸人たちのやりとりがいちいち面白かった。

午後9時40分、終演。

ライブの興奮冷めやらぬまま、車に乗り込んで移動。以前から気になっていたつけ麺屋で夕食を取ろうと目論んでいたからだ。スマホのナビ機能を立ち上げ、音声案内に従いながら、夜道をしなやかに抜けていく。午後10時半、「つけ麺屋ちっちょ」にて夕飯を取る。高知では一番美味しいという噂を聞いていたのだが、そこまで魅力的な味でもない。ただ、妙に尾を引くところがあるので、ハマる人はハマッてしまうのかもしれない。

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食後、今宵の宿である「ホテルタウン錦川」へ移動。宿泊代と駐車場の使用料を合わせて3,500円というのは破格ではないだろうか。一瞬、コンビニに出かけておつまみを購入、ホテルに戻って事前に購入しておいたアルコール飲料とともに楽しむ。午前3時就寝。

続く。

「アンガールズ単独ライブ「俺、、、ギリギリ正常人間。」」(2017年7月26日)

アンガールズ単独ライブ「俺、、、ギリギリ正常人間。」 [DVD]

アンガールズ単独ライブ「俺、、、ギリギリ正常人間。」 [DVD]

 

2017年4月20日・21日に本多劇場で行われたライブを収録。アンガールズの単独ライブがソフト化されるのは、2016年7月にリリースされた『アンガールズ単独ライブ「~ゴミにも息づく生命がある~」』以来、一年ぶり。

◆本編【84分】

「洗濯機」

「新宿の家」

 VTR「ギリギリ正常クイズ」

「先輩の電話」

 VTR「お母さんに電話1」

「追跡」

 VTR「お母さんに電話2」

「水族館」

 VTR「山根良顕YouTuberへの道」

「泥棒」

 VTR「原付イントロクイズ」

「友達の彼女」

◆特典映像【18分】

「昔のネタ帳朗読1「高校球児」」

「昔のネタ帳朗読2「カヌー部」」

「昔のネタ帳朗読3「落とし穴大作戦」」

山根良顕YouTuberへの道(フルバージョン)」

「お母さんのネタ再現」

結論からいうと、傑作である。

人生のド真ん中を歩くことの出来ない、しかし異常と呼ばれるほど狂気の沼へ身を投じてはいない、そんな“ギリギリ正常人間”たちの生き様が哀愁たっぷりに描かれている。だが、彼らの思考や感情を表出させている田中卓志の台本からは、蔑みの意図は感じられない。恐らく、田中は知っているのだろう。彼らのようなギリギリ正常人間たちが、我々にとってまったく無縁の存在であるとはいえないことを。本編のオープニングコント『洗濯機』において、登場と同時に見知らぬ女性からゴミの入った袋を投げつけられ、自分について回っているストーカーに似ているといわれ、挙句の果てに、捨てられようとしていた洗濯機を譲ってほしいと申し出ただけで変態呼ばわりされた結果、「俺、そんなに変態に見えてるんだったら、もう変態になろう! 変態に見えてるのにマジメに生きてたら損だもん!」と間違った方向に振り切れてしまった青年のように……誰しもがギリギリ正常人間に成り得るのだ。

これ以降のコントも、実に多種多様なギリギリ正常人間たちが登場し、コントの世界の中で自らの感情を爆発させている。新宿に住みたいという気持ちが強すぎるあまり、安い家賃の事故物件を借りて、そこで起きている数々の心霊現象も甘んじて受け入れている男の夜を描いた『新宿の家』。恋人に二股をかけられるも、彼女のことを諦めることが出来ずに、彼女……ではなく、相手の男の方を付け回すようになったストーカーの告白があまりにも哀しい『追跡』。とある金持ちの家に忍び込んだ泥棒が、うっかり家の人間に見つかってしまうのだが、「好きなだけ持っていってください」「ただし、ゲームをやってもらいたいんです」と怪しいゲームを持ち掛けられる『泥棒』……。

どのギリギリ正常人間たちも共通して、誰もが独自の理論を展開し、自分なりの正論に辿り着いている。そこには確固たる理由が、根拠が、確信がある。だからこそ、そこはあくまで狂気の淵であって、狂気そのものではないのだろう……否、田中が彼女にプロポーズするため、友達の山根にサプライズの協力してもらおうとするのだが、いざ実行してみると、何故か山根には田中の彼女の姿が見えない『友達の彼女』に関しては、一瞬だけ狂気の沼にはまってしまったような気もするが。

その一方で、従来のアンガールズらしさの残る、ほのぼのとしたやりとりのコントも演じられている。『水族館』がそれだ。水族館を訪れた二人が、一緒に色々な水槽の中の魚たちを眺めていくのだが、山根の見て回るペースの早さに驚いた田中が、二人にとって適した水族館を回るペースを模索し始める。……ここまでギリギリ正常人間たちのことをさんざん持ち上げておいてなんだが、私が本編で最も感動したコントはこの『水族館』である。適度に共感を覚える絶妙な切り口もさることながら、このテーマをじわりじわりと掘り下げていく手堅い構成、そしてバカバカしくも慎ましいオチ。単純に水槽を眺めているだけの二人の表情の微妙さ加減も面白くて、まったく捨てるところがない。最高傑作でないかと思う。

これら本編に加えて、特典映像として、本公演では披露されなかった未公開映像「昔のネタ帳朗読」「山根良顕YouTuberへの道(フルバージョン)」、本公演終了後に披露された「お母さんのネタ再現」が収録されている。いずれも安定の面白さだが、とりわけ「昔のネタ帳朗読」は素晴らしかった。文字通り、アンガールズの二人が昔のネタ帳を朗読するだけの映像なのだが、本当に最初期のネタのようで、読み上げるネタがどれもこれも規格外に緩すぎて、笑いが止まらない。否、アンガールズがここから始まり、今に至ったのだと思うと、なんとも感慨深い映像である。

前作『アンガールズ単独ライブ「~ゴミにも息づく生命がある~」』もかなりの傑作ではあったが、本作はそのハードルを軽やかに飛び越えていった。こうなると、次回の公演がどうなるのかが気になるところ。「キングオブコント2017」で決勝進出を果たし、松本人志に審査してもらうという一つの目標を達成した今、彼らは今後も単独ライブを続けてくれるのだろうか。続けてもらいたいところだが……果たして。