白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「M-1グランプリ2018」敗者復活戦(2018年12月2日)

1.ウエストランド(24位)「女の子に井口を紹介」

2.ダンビラムーチョ(22位)「カラオケバイトの年上の新人」

3.さらば青春の光(16位)「ものまねでネタバレ」

4.ミキ(15位)「サザエさんのじゃんけんで勝つ練習」

5.たくろう(12位)「おしゃれな美容室」(タイムアップ)

6.からし蓮根(10位)「ホストになりたい」

7.アキナ(18位)「結婚の挨拶」

8.金属バット(21位)「お見合い」

9.マユリカ(25位)「受験に失敗した幼馴染みを慰める」

10.東京ホテイソン(11位)「入学式」

11.侍スライス(20位)「裁判の雰囲気を味わいたい」

12.ニッポンの社長(17位)「荷物が多い女の子」

13.マヂカルラブリー(14位)「高級フレンチのマナー」

14.三四郎(23位)「マジ卍」

15.プラス・マイナス(13位)「野球のスイング」

16.インディアンス(19位)「元ヤン」

司会は陣内智則ホラン千秋。レポーターに「M-1グランプリ2015」王者のトレンディエンジェル。また、客席には、有名人ゲストとして、あき竹城、羽田圭介池田美優。十六組の漫才師による熱演を鑑賞した視聴者が、その中から面白かった漫才師を三組選び出し、投票する。Twitterのタイムラインでは「たくろう」「からし蓮根」「プラス・マイナス」「マヂカルラブリー」が好評。私は「ウエストランド」「金属バット」「インディアンス」に投票した。

結果は以下の通り。

続きを読む

「うしろシティ単独ライブ「どこが海のみえるまち」」(2018年11月14日)

うしろシティ単独ライブ「どこが海のみえるまち」 [DVD]

うしろシティ単独ライブ「どこが海のみえるまち」 [DVD]

 

2018年6月16日から7月29日にかけて全国五都市をツアー展開した単独ライブより、同年8月8日に座・高円寺2で行われた追加公演の模様を収録。

うしろシティといえば、「キングオブコント2012」決勝の舞台で披露された『転校生』(阿諏訪演じる目立ちたがり屋な転校生が、金子演じるもう一人の転校生の転校生としてのステータスの高さに恐れ戦くコント。コントの中で不意に登場する謎のアイテム“もぎぼっこり”が話題となった)のイメージが今でも根強いのではないだろうか。しかし、近年の彼らは、そういったナンセンスな面白さだけに重点を置いたコントから脱却し、人間同士の考え方のズレによって生じる理不尽をテーマにした深みのあるコントを表現しようと努めている。

本作でも、その傾向は色濃い。例えば『焼き鳥屋』。焼き鳥をメインで取り扱っているのに、常連だけに出していた裏メニューのラーメンが焼き鳥以上の人気を集めてしまった焼き鳥屋(阿諏訪)に、ラーメンを目当てにやってきた客(金子)が入店するコントだ。お店の新しい魅力を次々に見出していく客に対し、お店を褒められながらもメインの焼き鳥がどんどん放置されていってしまうことに釈然としない店主の構図がたまらない。また、山奥で絵を描き続けている画家(阿諏訪)の元へ、とある客(金子)が画家のまったく想像していなかっただろう理由で彼の絵を買いにやってくる『山奥の画家』というコントも、とてもイヤらしい切り口で実に面白かった。このコントに関しては、詳細を書いてしまうと面白さが半減してしまうので、実際に確認していただきたい。

ただ、全体を通してみると、まだまだスタイルを掴み切れていない印象を与えられた。いずれのコントも、確かに安定して面白い。だが、人間同士のギクシャクを描いたコントにしては、同様の方向性で大きな笑いを掴み取っている、東京03さらば青春の光に比べると、明らかに笑いの量が少ない。思うに、この二組がコントの切り口の核となっている部分と実直に向き合っているのに対して、うしろシティは設定を深追いしようとしていないためだろう。先の『焼き鳥屋』にしても、本来ならば焼き鳥屋の店主の複雑な心境に注目すべきところを、お店の新しい魅力を次々と発見してしまう客の異常性を広げてしまっている。そのため、折角の設定が活かしきれていない。いわば、彼らが以前から大事にしていた、ナンセンスな表現に固執してしまっているのである。そこにこだわるのであれば、無理に凝った着眼点を見せる必要はない。面白い視点で日常を切り取るか、ヘンテコな人たちのナンセンスな笑いを繰り広げるか、どちらかを選ぶべきだろう。勿論、このまま続けることで、まったく新しい地平を見つけることが出来る可能性は否定できないが。……いや、しかし、そうなると、そこにはシティボーイズがいるのでは……。

これら本編に加えて、ライブの幕間映像に使用された「ルールも分からずやってみた」(未公開映像含)と副音声解説が収録されている。幕間映像は毒にも薬にもならないようなゆるい内容だったが、副音声解説はなかなかに面白かった。なんと、この副音声の音声録りの日に阿諏訪が遅刻、その後の予定も控えていたため、急遽として金子とコンテンツリーグ関係者の平山聡氏が収録に臨んでいるのである。なかなかに珍しい事態だ。しかも、この金子と平山氏のコメンタリーが、かなり興味深い。ライブを鑑賞した一個人としての立ち位置を崩さない平山氏の素朴な質問に対し、金子がフザケることなく、かなりきちんと答えている。DVDコレクターとしては、「他の芸人のDVDを観ることはあるんですか?」という質問にはちょっとシビれた。しばらく録音したところで、阿諏訪が遅れてやってくるのだが……正直、来なくても良かったのでは(流石にそれはダメか)。

◆本編【101分】
「帰省」「予約の青木です」「焼き鳥屋」「駄菓子屋」「僕は変わるんだ」「おじいちゃん大好き」「山奥の画家」「ひさしぶり」「陶芸家」「才能とは」

◆特典映像「ルールも分からずやってみた」【23分】
「はじめての空手の形」「はじめての新体操」「はじめての空手 1回目 フルVer.」「はじめての新体操 リボン編」「はじめての痛い空手編」

◆音声特典
うしろシティの副音声解説」

2018年12月の入荷予定

19「爆笑問題のツーショット 2018 結成30周年記念Edition ~爆笑問題が選ぶBest Selection~

19「落語研究会 柳家喬太郎名演集

19「佐久間一行SHOW2018「FORTY」(豪華盤)

どうも菅家です。暑い夏が終わり、涼しい秋がやってきたと思っていたら、もう年末ですね。一年が過ぎていくペースがいよいよ早いです。知らず知らずのうちに、タイムマシーンが何かに乗せられているのではないかという気さえしてきます。この分だと、東京オリンピックなんて、本当に直ぐですね。生きていればの話ですが。

そんなこんなの十二月ですが、なにやら各レーベルの代表格が出そろったようなラインナップであります。我らがコンテンツリーグからは爆笑問題によるベストセレクション。二枚組ということなので、単独ライブの模様がちょっとは収められているのではないかと期待しております。よしもとからは天下御免ピン芸人佐久間一行の最新ライブ。豪華盤は脅威の四枚組であります。うち一枚はタナゴ釣りだそうです。実に恐ろしいですね。そしてソニーから、柳家喬太郎の名演集です。古典も新作も器用にこなす実力派による落語が三枚組にパッケージ。落語にちょっとでも興味があるなら、是非とも手に取ってください。決して損はさせません!

「M-1グランプリ2018」準々決勝敗退者・オススメの五組(2018年11月5日・大阪予選)

どうも菅家です。

東京予選バージョンがそこそこウケたので、大阪予選バージョンも更新する運びとなりました。これでアクセス数が伸びなかったら、ちょっと寂しいかもしれません。嘘ですが。M-1勝戦の日まで、ゆるーくぬるーくお楽しみください。ちなみに東京予選バージョンはこちら。

正直、独自性の強いコンビが多かった東京予選に比べて、大阪予選は悪い意味での漫才の堅さが目立っていた印象があります。安定して面白いんだけど、パンチが足りないというか。そのため、五組を選んでおりますが、ドカンと爆発するような面白さはなかったかしらんと。というわけで、以下は来年もうちょっとトバしてくれると嬉しいような、そんな五組であります。ご賞味ください。

ロングコートダディ

f:id:Sugaya:20181123223410j:plain

よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。堂前透(左)と兎(右)によって2009年に結成。コンビ名は兎がロングコートを着たおじさんを見かけて思いついたという。ちなみに、兎という名前は「本名がダサいから」という理由でつけられた芸名である。三回戦「忍者の飼いかた」準々決勝「シンデレラっぽい話」。「家で忍者を飼っている」「家族がダンスパーティに出かけ、招待状を貰っていない自分だけ家に残っている」などのように、あまりにも突飛だが妙に筋道の立っている話を繰り広げる堂前に対し、それを否定せずに「マジで!? めっちゃええやん!」と完全に受け入れてしまう兎というコンビとしての関係性が良い。金属バット、Aマッソ等に通じる、浮世離れしたヘンテコ世界の幕開けだ。とはいえ、きちんと随所に絶妙なボケが散りばめられていて、マメに笑えるのがとても嬉しい。タキシードに関するくだりは全て好き。

 

ヒガシ逢ウサカ

f:id:Sugaya:20181123223424j:plain

よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。高見雄登(右)と今井将人(左)によって2010年に結成。コンビ名は高見の出身地「東大阪」と今井の出身地滋賀県大津市にある地名「逢坂」を掛け合わせたもの。三回戦「ヘンなヤツを見た」準々決勝「ヘンなヤツを見た」。最初は、スキンヘッドの今井がボケで、スーツの高見がツッコミのように見える。事実、序盤のやり取りでは、今井の方が素っ頓狂なことを言っているし、それを高見が適切にツッコんでいる。ところが、高見が見かけたという「ヘンな人」の話が始まった途端に、事態は急変する。明らかに話の内容がヤバい。ただヤバいのではない。先程までボケを冷静にツッコんでいた人がヤバいのである。しかも、当然のことのように、しれっと話してみせるのである。これはもう、ただごとではないぐらいにヤバい。しかし、そのヤバさとともに、得も言われぬ笑いがどっと押し寄せてくる。今はまだヤバさが勝っているが、笑いの方が多くなったとき、このコンビはスゴいことになるかもしれない。

 

プリマ旦那

f:id:Sugaya:20181123223434j:plain

よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。野村尚平(右)と河野良祐(左)によって2008年に結成。野村は高校生の頃に“デロリ庵”というコンビでM-1甲子園2006に出場、決勝進出を果たしている。三回戦「友達をつくろう」準々決勝「子どもは大変」。話芸という点においては、もはや完成されているといってもいいのではないだろうか。どうでもいいようなことに引っかかって、ボヤキの口調でくどくどと話し続ける野村と、そのリズムを崩さないアクセントとしてのツッコミを適切に投げ込む河野によるオーソドックスなしゃべくり漫才。しかし、準々決勝において、そのボヤキがピタッと止まってしまった瞬間……じわっとした静寂の、なんともいえない面白さ。これもまた良い。復活後のM-1では一度も準決勝戦に進出できていないが、来年あたり、そろそろまた……。

 

ジソンシン

f:id:Sugaya:20181123223449j:plain

よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。酒井孝太(右)と下村啓太(左)によって2013年に結成。コンビ名は酒井の元相方であるヘンダーソンの中村によって付けられた。三回戦「休んだ友達の家にプリントを届ける」準々決勝「おるすばん」。三回戦、準々決勝、ともに酒井が演じている小学生のキャラクターが絶妙。ただ、単に小学生を演じているだけではなく、そういうヘンテコなことを喋る小学生が実際にいるのではないか……と、そんな風に思わせてくれるような、適度なラインを突いてくる。準々決勝戦、掛かってきた電話の相手をデブと決めつけるくだりなど、とても子どもらしい。また、そんな子どもらしいキャラクターを、三十歳とは思えない老け顔で渋いスーツを着こなした酒井が演じているのが、実にたまらない。その井出達で、いちいち笑顔で「ぼくはさかいこうた」と応対する、なんともいえない面白さ。今後の進展がとても気になるコンビだ。

 

【ミルクボーイ】

f:id:Sugaya:20181123223516j:plain

よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。駒場孝(左)と内海崇(右)によって2007年に結成。大阪芸術大学落語研究会出身。今年四月より大阪市天王寺区住みます芸人に就任。三回戦「SASUKE」準々決勝「SASUKE・玉せん」駒場が母親の好きな番組のタイトルが思い出せないというので、母親の証言ヒントを元に内海が正解を出そうとする。16年大会での『田舎に住みたい』、17年大会での『叔父』と同様、ネタのテーマに対する「あるあるネタ」と「なしなしネタ(からのテーマについての説明)」を交互に繰り出すことで、テーマに対する底意地の悪いイメージを表出する手法の漫才である。直にテーマを攻撃するのではなく、あくまで解説するために結果として厳しいことを言ってしまう、という遣り口がとても性格が悪い。でも、そのおかげで、見ているこちらも自らの中にある性格の悪さを感じつつ、気兼ねなく笑える。有難いことである。こういうスタイルの笑いは、同じTBS系列の番組を手掛けている藤井健太郎に通じるところがあるように思うので、どっかで上手く繋がってくれないものかと思わなくもない。

この他、Dr.ハインリッヒありんくりん、丸亀じゃんご、ダブルヒガシ、ガーベラガーデン、セルライトスパさや香 が面白かったです。Dr.ハインリッヒに関しては、「青春ゾンビ」さんが記事に書いているので、そちらを読まれるとどのような漫才だったか非常に理解しやすいのではないかと思われます。ことによると、私たちは誰しもが、何も失っていないのに何かを取り戻そうとしてるような気がする。

以下、準々決勝(大阪)のネタまとめ。

続きを読む

「M-1グランプリ2018」準々決勝敗退者・オススメの五組(2018年11月6日・東京予選)

M-1グランプリ2018」の決勝戦が12月2日に行われる。

それまでの期間、お笑い好きが出来ることといえば、未だに配信され続けている若き漫才師たちの動画を漁って、これから売れるかもしれない芸人たちに目星をつけるぐらいのものだろう。少なくとも、私はそうしている。

というわけで、今年もM-1の準々決勝敗退者が披露した全てのネタについて、ああだこうだと感想文を書き連ねようと思っていた……のだが、如何せん組数が多く、それらを客観的に分析してテキスト化する作業は困難を極めた。そのうち、どの漫才師を見ても、不足している部分ばかりが気になるようになってしまった。完全にストレスである。このままでは、私にとっても、漫才師たちにとっても、読者にとっても、良い顛末を迎えられはしないだろう。そこで、今年は無理せず、気になったところだけをピックアップして紹介することにした。おかげで随分と作業は楽になった。やれやれ。

以下、来年以降に売れるかもしれない、素敵な漫才師たちである。

【納言】

f:id:Sugaya:20181120195128j:plain

太田プロダクション所属。薄幸(右)と安部紀克(左)によって2017年に結成。薄幸(すすきみゆき)という芸名は、番組の企画でビートたけし命名した。三回戦「ラーメン屋の店長から口説かれる」準々決勝「キャバ嬢のスカウトを断る」。紆余曲折の人生を歩んでいそうな雰囲気を醸し出している薄幸が、様々な状況で男性から口説かれ、一度は断ろうとするも最終的に“お持ち帰り”されてしまう様子をショートコント形式で披露する。一貫して、すれた女で有り続ける薄幸のキャラクターが、とにかく魅力的。乱暴な言葉遣いの向こう側に人生の深みが感じられて、漫才というよりも、一昔前の人間ドラマを見させられているような気分になる。ショートコントに入る際に、必ず煙草で一服しながら特定の街に対して偏見にまみれた毒を吐き散らすのもいい。もしかしたら、本当にそうなのではないかと思わせるような、妙な説得力がある。そんな薄幸の相方である安部も、また独特の色気を放っているのが良い。今後の更なる進展に期待が持てる男女コンビだ。

 

【シシガシラ】

f:id:Sugaya:20181120221354j:plain

よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。浜中英昌(左)と脇田浩幸(右)によって2018年に結成。浜中は“春夏秋冬”、脇田は“ヨコハマホームラン”というコンビでそれぞれ活動していた。三回戦「五十音」準々決勝「五十音」。デブ、チビ、ハゲなど、自らの身体的特徴を笑いに転換する手法は、今や完全に頭打ちの状態だ。デブというだけで、チビというだけで、ハゲというだけで笑いを取ることが出来ないわけではないが、その程度の個性しかないようでは、この生き馬の目を抜くメディアの世界において、あっという間に大衆からそっぽを向かれてしまう。それらの要素をエンターテインメントへと押し上げるための更なる切り口が必要だ。シシガシラの漫才は、それが出来ている。脇田の個性的なビジュアルをイジるため、丁寧に仕込まれた言葉遊びの妙。そして、そのトリックが発覚してからの、更なる展開の上手さ。同じく、見た目を利用した漫才で高く評価されていたギャロップが、今年になってようやくファイナリストに選ばれた今、その枠に彼らが飛び込むことが出来るだろうか。

 

【ういろうプリン】

f:id:Sugaya:20181120232433j:plain

プロダクション人力舎所属。内間一彰(左)と丸山雄史(右)によって2007年に結成。当初は“ブルーセレブ”という名前で活動していたが、2018年に改名。三回戦「キスしようよ」準々決勝「タトゥーを入れよう」。漫才とは、得てしてボケ役とツッコミ役の掛け合いが基本だと思われがちだが、もっと根本的なところをいえば、それは個性と個性のぶつかり合いである。例えば、ブラックマヨネーズの漫才について、思い出してもらいたい。彼らの漫才は、吉田がボケで小杉がツッコミだと思われがちだが、では必ず小杉が正しいことを言い続けているかというと、そうでもない。頑なに意見を受け入れようとしない吉田に、自分の意見を押し通そうとするあまり、異常な言動を取ってしまうこともある。その瞬間、小杉はツッコミではなく、ボケに転じてしまう。ういろうプリンの漫才にも、そんなブラックマヨネーズの漫才に通じるところが感じられる。自らの主張を押し通そうとする丸山と、それを頑なに拒否し続ける内間の激しい攻防戦は、熱気を帯びれば帯びるほど異常性を増していく。しかし、個人的には、今のタイミングで「タトゥーを入れようと提案される」というテーマの漫才を用意してきた、時事に対する敏感な対応に感心させられる。「そんなことでしか愛を感じられない人間は、弱い人間だ。カタチあるものでしか愛を感じられないなんて……」という漫才中の発言とは思えない重みよ。

 

【モンローズ】

f:id:Sugaya:20181120234814j:plain

サンミュージックプロダクション所属。宮本勇気(下)とまえのりょうた(上)によって2016年に結成。宮本はかつて菅谷直弘(カカロニ)とともに“ベアードノーズ”というコンビで活動していた。三回戦「弱小野球部の監督」準々決勝「世界中がゾンビまみれになったら」。漫才におけるツッコミはボケの引き立て役になりがちである。だが、ツッコミ役の個性が強すぎると、その立場は途端に逆転する。ボケよりもツッコミの方に注目が集まり、人気を獲得するようになることもある。一見すると、モンローズはその典型に見える。如何にも気力の無さそうなまえのに対し、スーツ姿で挨拶も元気いっぱいな宮本を見比べると、どちらがボケでどちらがツッコミか一目瞭然だ。だが、実際に漫才が始まってみると、どうも様子がおかしい。確かに、まえのが宮本にちょっと雑な要求を押しつける導入の時点では、二人の関係性はイメージ通りなのである。ところが、そのまえのの要求を、宮本が完全に再現してしまうのだ。その過剰な説得力。もはや個性的なツッコミなどという段階をとっくに呼び越し、完全にボケになってしまっている。だが、漫才の流れを見ると、あくまでもまえのがボケで、宮本はツッコミの関係性が維持されている。この絶妙さ。是非、実際に視聴して、確認してもらいたい。

 

シンクロニシティ

f:id:Sugaya:20181121000458j:plain

フリー。西野諒太郎(左)と吉岡陽香里(右)によって2017年に結成。吉岡は2016年に飯森七重とのコンビ“晴天サンティ”でM-1グランプリに出場、アマチュアながら準々決勝に進出している。三回戦「タトゥーショップ」準々決勝「オークションに参加したい」。徹底的にダウナーな口調で繰り出される吉岡の不条理な言動は、どこまでも掴みどころがなく、それに対応させられる西野やそれを見させられている観客に留まらず、コントの世界の住人たちすらも翻弄していく。そこには信念がない。純然たる欲望だけが渦巻いている。そこに悪意がない。だからこそ底知れない。そんな吉岡の不気味さが特に反映されたのが、準々決勝で披露されたオークションのネタ。ただオークションに参加したいという欲求を満たすためだけに、悪戯にオークションに参加して金額を釣り上げていく様がたまらない。また、類似したシチュエーションを何度も繰り返すタイプのネタなのに、最初の「四万円しか持っていない」という設定が延々と引き継がれている点も、少し面白かった。この危うさ、何処まで伸ばせるか。

この他、ロングロング、ぺこぱ、ダイヤモンド、マドンナ。、ストレッチーズが印象に残っている。時間があれば、見てみるといいかもしれない。

以下、準々決勝(東京予選)のネタまとめ。

続きを読む

「M-1グランプリ2018」ファイナリスト発表!

和牛(昨年2位)
霜降り明星
ゆにばーす(昨年8位)
見取り図
かまいたち(昨年4位)
スーパーマラドーナ(昨年4位)
ジャルジャル(昨年6位)
トム・ブラウン
ギャロップ
 +敗者復活枠

上記は発表順。エントリーナンバー順や出番順というわけではないようなので、準決勝の順位なのではないかと勝手に思い込んでいる。しかし、だとすれば、ゆにばーすはどんなネタをやったのだろうか。とっても気になる。準々決勝戦での内訳は、東京予選から2組(ゆにばーす、トム・ブラウン)、大阪予選から6組(和牛、霜降り明星、見取り図、かまいたちスーパーマラドーナジャルジャルギャロップ)。大阪の漫才師の層の厚さをまざまざと感じさせられる。

とにかく驚かされたのはトム・ブラウン。インターネット上でも話題になっていた地下芸人コンビが、まさかまさかの決勝進出だ。あのトリッキーな芸風が受け入れられるとは思えないので、これは準決勝で審査員も無視できないレベルの大爆笑が巻き起こったのだろう。楽しみだ。そして、昨年、一昨年と高い漫才の技術を見せていながら、何故か準々決勝の壁を超えられなかったギャロップが、満を持しての決勝進出である。残念な見た目を逆手に取ったストロングスタイルを見せてもらいたいところ。

そして気になる十番目の枠、敗者復活戦のメンバーはこちら。

ダンビラムーチョ
マユリカ
ウエストランド
たくろう
からし蓮根
インディアンス
侍スライス
三四郎
ニッポンの社長
マヂカルラブリー(昨年10位)
金属バット
プラス・マイナス
東京ホテイソン
さらば青春の光
ミキ(昨年3位)
アキナ

最有力候補は、やはり昨年大会で最終決戦に勝ち進んだミキだろう。話術が安定しているコンビだけに、更なる成長を求められたのだろうか。とはいえ、ここがストレートに勝ち上がってくるというのは、あまりにも芸がない。どうせならば、準々決勝では大爆発していたインディアンス、粗い言葉遣いの繊細な漫才で人気急上昇中の金属バット、ラストイヤーのやりたい放題プラス・マイナス、地味な見た目から繰り出されるハードなワードセンスが魅力のからし蓮根、挙動不審の野心家たくろう、ねたみそねみひがみの塊ウエストランドあたりの活躍に期待したい。果たして、どうなるか。

(訂正:魔人無骨は「GYAO!復活枠」なので、例年通りなら敗者復活戦には参加できません。ルール変更の可能性もありますが、ひとまず彼らの名前は消しておきます。ひとつよしなに)

敗者復活戦・決勝戦は12月2日(日)放送予定。

大園桃子について書いてみよう!

ブログを怠けている。

他に書きたいことがあり、そちらの方にばかり力を注いでいるためである。とはいえ、私の文筆活動の中心は、あくまでも本ブログなので、そこをおざなりにしてしまっているのは宜しくない。

そこで、日曜深夜の寝る直前に、Twitterで募集したお題に沿ったテキストを書いてみようと思い立ち、実行してみたところ、芸人でもバラエティ番組でもない“大園桃子”という題材を押しつけられてしまった。

知らない人のために説明すると、大園桃子とは乃木坂46のメンバーである。1999年生まれの鹿児島県出身。2016年に第三期メンバーオーディションで合格、ステージデビューを果たしている。2017年、シングル『逃げ水』の表題曲センターに選出され、同じくセンターに選ばれた与田祐希とともに初回仕様限定版Aのパッケージを飾っている。……アイドルには詳しくないので、この解説がちゃんと正しい説明に成っているのかどうか、ちょっと不安である。許せ。

どうして大園桃子というお題が与えられたのかというと、私が過去に「乃木坂工事中」を見ながら、彼女に対してTwitterで何度か言及しているためらしい。らしい、という曖昧な表現をしているのは、私がそのことをまったく自覚していなかったためである。しかし、過去のツイートを振り返ってみると、確かに大園桃子に対して言及していることが少なくない。それも、「かわええなあ」などと、鼻の下をだらしなく伸ばしきったようなツイートをしている。実にみっともない。つまり、第三者からの意見を受けて、初めて彼女に対して無意識のうちに好意を抱いていたらしいことが発覚した次第である。なんとも情けない話である。

とはいえ、与えられたお題を無碍に突き返すわけにもいかないので、こうして書き始めている次第である。大変だ。なにせアイドル界隈には詳しくない。ももいろクローバーZPerfumeのアルバムを持ってはいるが、ファンと呼べるほどには肩入れしていない。ももクロのメンバーに関しては名前も危うい。Perfumeは分かる。三人しかいないから。そんな程度の私が書くのであるから、大した内容にはならないことをご理解いただきたい。ハードルを下げるのに必死だと思われるかもしれないが、まさしくその通りである。他ジャンルの話題で炎上なんてしたくない。どうせなら芸人の話題で炎上したい。いや、炎上自体、出来ればご遠慮願いたいところではあるのだが。

私が大園桃子の存在を始めて認識したのは、2017年4月に放送された「乃木坂工事中」の企画【3期生PR大作戦】だったように思う。当時の12福神(フォーメーションの1~2列目のメンバーのこと)が3期生の魅力をアピールする……という内容で、大園のことは高山一実が担当していた。この時、二人は小五から中三まで続けていたという大園の剣道の実力を見せるため、剣道着を着用していた。実に勇ましい姿である。しかし、その服装とは裏腹に、とてつもなく緊張していた大園は、テレビ番組の収録中にも関わらず、今にも泣きそうなほどに声を震わせていたのである。その姿がなんとも可笑しくて、とはいえ、この人は本当にこれからやっていけるのだろうか……と、妙に心配した記憶がある。それがよもやセンターに選ばれようとは。

そんな大園のエピソードで、最も印象に残っているのは、2017年8月に「乃木坂工事中」で放送された企画【Wセンターのことをもっと良く知ろう】での一幕である。『逃げ水』でセンターに選ばれた大園・与田についてもっと知るために、二人のあまり知られていない一面を他のメンバーが紹介するという内容だったのだが、その流れで、二人のことを最もよく知っている母親に電話をつなぐ流れがあったのである。ここで衝撃の事実が発覚するのだ。以下、そのやり取りを書き起こす。

設楽「今回、娘さんが18枚目のシングルで、センターっていうのを聞いたときはどうでした?」

大園・母(電話)「えっ? えっ?」

設楽「はい?」

日村「はい?」

大園・母(電話)「まだ、知らなかった……」

日村「えっ!?」

 ざわつくスタジオ内

設楽「まだ知らなかった!? 大園言ってないの!?」

大園「言ってないです……」

設楽「なんで言わないの!?」

大園・母(電話)「(笑)」

設楽「あっ、あのーっ……ウソでしょ!? もうけっこう前に決まったんですよ!」

大園・母(電話)「えーっ!」

あの手練れのバナナマンがここまで狼狽えるのも珍しい。ちなみに、大園が母親にセンター入りしたことを伝えなかったのは、「テレビで観たら分かるかなと……」「一個のことに対して何百個のことを聞いてくるから」というものだった。無論、そんな言い訳が通るわけもなく、設楽に「完全に反抗期だろ」とツッコまれていたが。なかなかに面白い人材として成長していきそうな予感を漂わせた、強烈な出来事だった(ある種、現代的な行為といえなくもないが)。

そんな大園桃子のことを、皆さんも良かったら覚えておいてください。

じゃあ私は寝ます。おやすみ。

「M-1グランプリ2018」準決勝進出者決定!

というわけで、結成年別にまとめてみました。

【2003】

ジャルジャル(よしもと)

スーパーマラドーナ(よしもと)

プラス・マイナス(よしもと)

【2004】

かまいたち(よしもと)

ギャロップ(よしもと)

【2005】

三四郎マセキ芸能社

【2006】

金属バット(よしもと)

和牛(よしもと)

【2007】

マヂカルラブリー(よしもと)

見取り図(よしもと)

【2008】

ウエストランド(タイタン)

さらば青春の光(ザ・森東)

【2009】

トム・ブラウン(ケイダッシュステージ

【2010】

インディアンス(よしもと)

ダンビラムーチョ(よしもと)

【2011】

マユリカ(よしもと)

【2012】

アキナ(よしもと)

ミキ(よしもと)

【2013】

からし蓮根(よしもと)

霜降り明星(よしもと)

ニッポンの社長(よしもと)

ゆにばーす(よしもと)

【2015】

東京ホテイソングレープカンパニー

【2016】

たくろう(よしもと)

【2017】

侍スライス(よしもと)

今年はなかなか波乱の様で、昨年のセミファイナリスト全三十組中十六組が不在という事態に(但し、そのうち四組は不出場)。その中には、昨年ファイナリストのさや香、準決勝戦の常連である相席スタートアインシュタインの名も。この他にも、ニューヨーク、囲碁将棋、Aマッソ、ランジャタイといった個性派たちが姿を消した。……もしかしたら、GYAOワイルドカード枠で復活する可能性もあるのだが。昨年はアキナ、一昨年は馬鹿よ貴方はが滑り込んだこの枠、今年は誰が入るのか?

楽しい楽しい準決勝戦は11月15日(木)開催予定。