土曜深夜の視聴覚室

芸人のDVDについてなんやかんやいう

「じわじわチャップリン」(2016年9月17日)

「ラッシュ」。コントとは思えない濃厚な内容に、どう感想を書けばいいのか分からなくなってしまった。そこで、とりあえず粗筋を書き出してみる。とある男が公園で愛犬のラッシュに関する情報を募集している。なんでも半年前、彼がラッシュと散歩をしていると、何処からともなく現れたUFOに連れ去られてしまったのだそうだ。空に向かって「返せーっ!」と声を張り上げる男。そこへ挙動のおかしい男が現れる。男は自らを人型に改造されたラッシュだと説明する。最初は信じようとしなかった飼い主だが、その瞳を見て、彼がラッシュであることを確信する。だが、人間の姿になってしまったラッシュの姿を見て、飼い主はとても当時の様に愛せるとは思えないと告白する……。改めて文章にしてみると、まるで映画のストーリーのようだ。……そして、だからこそ、このコントはこの低評価になってしまったのだろう。フィクションとしての世界観があまりにも現実離れしすぎていて、観客がついていけなくなってしまったのだ。無論、そうならないようにするために、彼らは彼らなりに説得力を強めるための要素をコントに盛り込んでいたのだが。せめて、人型のラッシュが、本当にラッシュであることの根拠がより明確であれば、もう少し票数を稼げたのではないかと思う。コントそのものは最高だ。飼い主の本質を読み取ったラッシュがその表面的な態度を完膚なきまでに否定するところなんか、たまらないものがあった。……まあ、そういう浅墓な人に対してあまりにもシビアな態度を取るところも、受け入れられにくい要因なのかもしれないが。でも、この観客の視点を上手く切り替える技術は、ちゃんと評価されるべきだ。あと、これはコントとは直接的に関係無いことだが、最初の説明で気持ち悪いとかなんとか言わないでほしい。観客が安易に引くきっかけを与えてしまっている気がした。

 

「思い出せないこと」。三十歳を超えてから物忘れがひどくなってきたという平岡が思い出せないことを、相方の西原と協力して思い出そうとする漫才。かもめんたるの濃厚過ぎるコントの後に、ここまでバカバカしくて下らない漫才がくると、高低差で頭がクラクラしそうになるな。ネタのフォーマットは悪くない。思い出せないワードを連想ゲームのシステムで強引に思い出そうとする下らなさが素晴らしい。バンドのメンバーの名前で畳み掛けるくだりもたまらないものがあった。ただ、単純に物足りない。ただでさえ、単なる知識自慢として捉えられかねないネタなのに、それをただ二本続けてやっただけでは、そりゃあ観客も納得できないだろう。もう一本、この流れを総括するようなネタがあれば、全体が締まったのではないかと思う。

 

【ふきだまりコーナー】

ローズヒップファニーファニー、田畑藤本、ゆにばーす、オジンオズボーン、サイクロンZ、ヤーレンズ、ハルカラ、スーパーニュウニュウ、ヒコロヒー、アナクロニスティック、平野ノラ、かもめんたるコーヒールンバが登場。「アートを感じるギャグ」というテーマの元に、レポーターの綾部祐二(ピース)を皮切りに、ヒコロヒー、サイクロンZ、平野ノラがギャグを披露した。

 

  • Aマッソ【24】

「思い出」。高校の友達四人と遊んできたという村上の話に違和感を覚えた加納が、「今までの人生の中で一番楽しかった話」を訊ねる漫才。最初は村上の話に荒々しい口調で相槌を打つ加納の方がボケなのかと思ったが、だんだんと村上の方がヤバいのではないかという風に切り替えられていく。この展開がオモシロイ。それでも止まらない加納の相槌もどんどんキレ味が鋭くなっていき、「思い出アップデートしすぎちゃう?」「思い出に三親等・四親等入ってけえへんやろ!」「癇癪で乗り切ろうとすな!」などのワードで笑いが止まらなかった。一点、惜しいところがあるとすれば、その口調のクセの強さがゆえに、ちょっと聞こえ辛くなってしまっている箇所があるくらいか。とはいえ、この辺りは技術的に改善されていくだろうから、まあ問題はないだろう。ウッチャンも言っていたように、次が見たいコンビ。

 

  • ヴィンテージ33

「引っ越し」。売れるきっかけに、引っ越しして運気を上げよう。東京ローカルに対する偏見を取り入れた漫才で、その場所を知っていれば面白いのだろう。が、こちらは地方在住の身なので、まったく笑えなかった。いや、もう本当に。微塵も笑えなかった。まあ、テレビの収録に参加できるほどの地域にお住まいであろう、目の前の観客を笑わせるための漫才としては良かったのかもしれない。ただ、まったく笑えなかったのは、漫才師としての技術的な問題も少なからずあったように思う。なんというか、面白そうなことを言っているのは伝わってくるのだが、その面白さを伝えるお膳立てが整っていないのである。例えば、甲州街道のくだり。「いや、もっとあるわ!」で留まるなーっ! 目の前を横切る相方にツッコミを入れろーっ! そのまま後ろを回ってきて、元の位置に戻る相方を処理しろーっ! 十六年間売れてなかった理由はそういうところだ!

 

【今週のふきだまり芸人】

オジンオズボーン「両腕を乗っ取られた」

 

次回の出場者は、ヴィンテージ(一週勝ち抜き)、オジンオズボーンかもめんたるヤーレンズ