白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

新年のご挨拶。

あけましておめでとうございます。

菅家しのぶです。

 

昨年、最後の記事をDVDレビューで締めることが出来たので、

今年最初の記事もDVDレビューにしようと目論んでいたのですが、

まんまと正月特番にうつつを抜かしてしまった挙句、

めでたい空気から大量のアルコールを摂取してしまったために、

このような挨拶文で茶を濁すこととなりました。

今年もそんなゆるーい感じで更新していくと思います。

コマッタモノデスネ。

 

ところで、私事ではございますが、

2018年3月に芸人DVD収集生活十五周年を迎える運びとなりました。

それに伴い、何かをやりたいと思います。

思っているだけなので、何もやらないという可能性もあります。

むしろ、その可能性の方が高いです。

面倒臭いから。

何か新しいことをやるのが面倒臭いから。

なので、期待しないで、テキトーにお待ちいただければと思います。

では、今年もよろしくお願いします。

 

さて、明日のウメサワー飲もっと。

「和牛 漫才ライブ2017 ~全国ツアーの密着ドキュメントを添えて~」(2017年11月15日)

和牛 漫才ライブ2017~全国ツアーの密着ドキュメントを添えて~ [DVD]

和牛 漫才ライブ2017~全国ツアーの密着ドキュメントを添えて~ [DVD]

 

2017年8月から10月にかけて、全国9都市を巡るライブツアー「和牛がチャンピオンになるための全国ツアー」を敢行した和牛が、同年6月に沼津ラクーンよしもと劇場でDVD収録用に開催したライブの模様を収録。また特典映像として、全国ツアーの舞台裏の模様がドキュメンタリー風に編集されて収められている。

◆本編【65分】

「なぞなぞ」

「ドライブデート」

「宇宙人」

「結婚式」

「ロボット」

「カツ丼の歌」

おっぱい星人

「オネエと合コン」

ティッシュ配りの女の子」

「花火デート」

◆特典映像【30分】

「「和牛がチャンピオンになるための全国ツアー」の舞台裏にカメラが潜入! 普段見ることのできない和牛の素顔にせまる!」

本編では11本の漫才が演じられている。幕間映像を挟み込まないシンプルな構成は、彼らのネタに対する自信の表れなのだろうか。事実、どのネタも完成度が高い。が、とりわけ「M-1グランプリ2015」決勝戦で披露された『結婚式』、「M-1グランプリ2016」敗者復活戦で披露された『手料理』、同大会決勝戦・一回戦で披露された『ドライブデート』、同大会決勝戦・最終決戦で披露された『花火デート』は圧倒的な面白さを見せつけている。『花火デート』で二人が必死になって蛙を探し回っている姿は、何度見ても笑わずにはいられない。無論、それはネタそのものの完成度が高いばかりではなく、彼ら自身が飽きることなく、それらのネタと真正面から向き合い続けている証明に他ならない。芸人がネタに飽きてしまった途端に、そのネタの鮮度は急速に落ちてしまうからだ。

M-1グランプリ2017」決勝戦で披露された漫才『ウェディングプランナー』『旅館の仲居』はそれぞれ未収録。但し、その予兆を感じさせるネタは見受けられる。『ロボット』がそれだ。漫才の舞台は未来の電器屋。なんでも家事をこなしてしまう最新型のお手伝いロボットを購入した川西が、水田演じるご説明ロボットからお手伝いロボットの起動方法から使用方法、モード設定などに関する説明を受けるのだが、その内容がところどころおかしい。とはいえ、一通りの説明を受けた川西は無事にお手伝いロボットを自宅へ搬入、友人の水田に見せびらかそうとするのだが……。前半と後半で水田が別人を演じてみせる構成は、『ウェディングプランナー』のそれを思わせる。視覚的面白さを想像させるくだりも多く、このネタをM-1決勝でかけられていたら……という気がしないでもないが、流石に九分近いネタを半分以下にまとめるのは難しいのだろう。

この他、印象に残っているのが『おっぱい星人』。いわゆる“おっぱい星人”な川西が地球の滅亡を目論んでいる宇宙人と遭遇するのだが、「地球人以外に手を出す気はない。お前は“おっぱい星人”なんだろ? 自分の星へ帰るがいい!」と勘違いされてしまうネタなのだが……終始一貫して“おっぱい星人”を異星人だと勘違いし続けている宇宙人の立ち振る舞いもさることながら、おっぱいの魅力について止め処無く語ってしまう川西の普段のイメージとのギャップがとてもバカバカしく、延々と笑い続けてしまった。……ちなみに、本編には川西がシンプルに異星人と遭遇する『宇宙人』というネタも収められていて、このネタが『おっぱい星人』のちょっとしたフリのようになっているので、視聴する際には合わせてご覧いただきたい。

……というわけで、和牛といえば男女のコミュニケーションに軸を置いたネタを得意としているイメージが浸透しているように思うのだが、実はSF的な設定も得意なのではないかという期待が自分の中で膨らみつつある。『ロボット』にせよ、『おっぱい星人』にせよ、その舞台や状況は未知との遭遇であり、それを川西というツッコミ役を通じて体感するように作られているからだ。現在、そういう設定はハライチが得意としているが(2017年の敗者復活戦で披露していた『未知の生命体が身体に寄生する』は名作!)、その方面に切り込んでいくと、また新たな道が開けるのではないか……という予感がしている。とりあえず、来年のM-1に期待したい。

あ、そうだ。よいお年を!

2018年1月の入荷予定+2017年のリリース総決算

31「ナイツ独演会 味のない氷だった

あけましておめでとうございます。まだ明けてないけれど、どうせすぐに明けてしまうから、事前にあけおめを済ませておきます。無論、予定通りに生きていれば、当日もあけおめるのですが。あけおめ。ことよろ。お互いにとってネット環境に依存し過ぎない健やかな一年になりますように。そんな2018年1月ですが、気になる作品が少ないです。しかも、唯一気になっている作品が、地方公演を観に行っているライブという。なにやら盛り上がりに欠けますが、とはいえ、あのバカで下らないライブを改めて楽しめる喜びはあります。テレビでも披露されていた、様々な芸人のフォーマットをカバーする漫才も収録される筈なので、今から楽しみですね。それはそれとして、amazonで話題の「HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル」が31日にソフト化されるようなので、こちらも気になるところではあります。DVD版とBlu-ray版が同時発売。楽しみですね。

……と、お馴染みの入荷予定情報はここまで。ここからは2017年リリース情報の総決算です。私が購入している・してない関係無く、2017年にリリースされた芸人関係のDVD(※私判断)を総まとめしております。このリストを見て、買い漏らしなどを確認していただければと思います。今年、初めてDVDをリリースした芸人さんも少なくないしね。見逃すな!

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「バイきんぐ単独ライブ「クローバー」」(2017年10月25日)

バイきんぐ単独ライブ「クローバー」 [DVD]

バイきんぐ単独ライブ「クローバー」 [DVD]

 

「大丈夫じゃねえよ! だってお前、完全に狂ってんじゃねえかよ!」

これは、一日にタバコを八箱も吸っているヘビースモーカーの西村が禁煙を決意するコント『タバコ』において、あまりにもタバコが吸いたくてトイレの中で猿のように吠えてきた西村に対し、その声が全て耳に入っていた小峠が言い放つ台詞である。あくまでも、このコントの中でだけ使われている言い回しだが、この言葉ほど、本作を明確に表しているものはないように思う。そう。本作は狂っている。“クレイジー”などという英語表記で印象を和らげてしまう必要はない。ただ、純粋に狂っている。

以前のバイきんぐはもっとバランス感を意識したコントを作っていたように思う。例えば、彼らの代表作である『卒業生』は、かつての恩師(小峠)の元に卒業生(西村)がやってくる……というありきたりなシチュエーションの舞台を“自動車学校”にズラしているだけなので、西村の言動は常識外れではあるものの、常軌を逸しているいう段階には至らない。個人的には、クレイジーというよりも、むしろ天然と呼ばれる領域に留まっているように見える。その後、西村のボケとしての濃度が高まるにつれて、天然から確固たるクレイジーへと移行していくことになるのだが、よもやここまで純度の高い狂気を見せつけられる日が来ようとは。

なにしろオープニングコントの『退院』からして狂っている。足にギブス、頭にネットを装着している、まさしく満身創痍な状態で病院から出てきた小峠の目の前に、「どっきり!!」と書かれた看板を片手にテレビディレクターの西村が姿を現し、小峠がこんな状態になってしまった原因である落とし穴が番組のドッキリであったことを明かす。ある種、シンプルでありきたりな設定といえるのかもしれないが、まったく謝罪する素振りも見せず、ただただドッキリをかけられた小峠の醜態を評価し続ける姿は、完全に狂っていた。

その後のコントも、ライフル片手にターゲットを狙う殺し屋風の西村が、実はスコープである人物を覗き見していただけだったことが発覚する『屋上』、じっくりと一人でサウナを楽しんでいた小峠の隣に西村がやってきて、ただただ一方的に勝負を挑んでくる『サウナ』、夕飯を食べようとしていた小峠の部屋に、大きなしゃもじを持った西村がやってくる『晩ご飯』などなど……どのコントでも西村がとことん狂っている。とりわけ『落語』には度肝を抜かれた。西村扮する落語家が高座に上がって「時そば」を演じるのだが、声と口の動きが明らかにズレていて……終始一貫して狂い続けている、なんとも恐ろしいコントだった。

この本編に対して、特典映像では小峠が狂っていた。

例年、バイきんぐの単独ライブにおける幕間映像では、二人が何かしらかの遊びに興じている様子が収められているのだが、今回は「はじめて2人で西村プロデュースキャンプ」と題し、今やキャンプ芸人という謎の地位を確立してしまった西村が小峠をキャンプでもてなしている様子が収録されている。西村は様々なアイテムや多様な料理でもてなそうとするのだが、度重なるテレビ収録にストレスが溜まっていたのか、小峠はひたすらに荒くれた言動を取り続ける。ノンアルコールビールを買おうとする西村に長時間の説教を始めたり、西村が来ることにテンションが上がったというキャンプ場のスタッフをブン殴ろうと宣言したり、西村に裏拳を食らわせたり(半ば事故ではあったが)、何処までもアグレッシブ。

しかし、そんなバイオレンス小峠も、いざキャンプが始まると、西村自慢のアウトドアチェアに身を任せて、西村が自慢したサーバーから注がれたビールで喉を潤し、西村の料理に舌鼓を打つ。全ての言動は、長年に渡ってコンビを組み続けている西村に対する信頼感があってこそなのだということが、そのリラックスした姿から伝わってくる。バイきんぐというコンビの愛おしい関係性を再認識させられる映像だった。以前にも書いたような気がするが、このコンビで「気分は上々」みたいなロケをやってもらいたい。関係者各位、どうですか。

◆本編【57分】

「退院」「キャバクラ」「屋上」「サウナ」「キャンプ」「落語」「タバコ」「晩ご飯」「閉店」

◆特典映像【31分】

幕間映像「はじめて2人で西村プロデュースキャンプ」

「THE MANZAI 2017」(2017年12月17日)

NON STYLE「ヒーローインタビュー」

 最高顧問ビートたけし開会宣言

フットボールアワー「道案内」

とろサーモン「万引きGメン」

トレンディエンジェル「流行語」

千鳥「好きな娘の前でカッコつけたい」

テンダラー勝利者インタビュー」

サンドウィッチマン「家庭訪問」

タカアンドトシ「突撃インタビュー」

矢野・兵動「新幹線」

キャイ~ン「セクハラ/アルハラ/カラオケハラスメント」

銀シャリ「子どもの頃の遊び/ピアノ」

海原やすよ ともこ「大阪と東京の違い」

 プレ:流れ星「お祭り」

 プレ:和牛「牧場デート」

 プレ:ジャルジャル「決めポーズ」

ナイツ「新スタイル」

博多 華丸・大吉「名言を残したい」

おぎやはぎ「グルメレポーター」

パンクブーブー「驚かせてしゃっくりを止める」

ウーマンラッシュアワー福井県の話/愛さえあれば」

ハマカーン「意見を合わせたい」

笑い飯「昔話にハエ」

チュートリアル「炊飯器」

中川家「温泉の従業員」

爆笑問題紅白歌合戦/流行語/AI/日馬富士の暴行問題/AbemaTV」

とりあえず言わせてほしい。プレマスターズシステムいらないだろ! まだまだ名前の知られていないウエストランドやAマッソ、霜降り明星トットあたりが予選を受けさせられるのはかろうじて分かるけれど、既にテレビで売れっ子の尼神インターや三四郎ジャルジャルM-1ファイナリストのカミナリや和牛を同様に扱うのはどうにも納得できない。特にフジテレビの特番「笑わせたもん勝ちトーナメント KYO-ICHI」王者であるタイムマシーン3号とミキは、むしろここで出すことで、自社ブランドとしての強みをアピールできると思うのだが。大会に権威付けしたい気持ちがあるのだろうが、それにしても、色々とヘタを打ち過ぎではないだろうか。いやホント。

印象に残っているのは、M-1優勝直後ということもあって脂が乗りまくっていたとろサーモン、センスよりもバカバカしさを強調することでよりポップになっていた千鳥、バカバカしい下ネタで一気に駆け抜けたタカアンドトシ、『トムとジェリー』ギャグの連発する力技で観客の笑いをもぎ取った流れ星、自己紹介ギャグの押し合いへし合いぶりの意味の無さがたまらなかったジャルジャル、フォーマットで売れた芸人として現代の漫才を自己流に再構築したナイツ、まさかの完全新作漫才コントを見せつけたおぎやはぎ。どのコンビもサイコーにバカバカしく、面白かった!

……そして、自身の芸風を社会問題を切り取る漫才へと上手く改変してみせたウーマンラッシュアワー。見事だった。正直、漫才のクオリティとして見ると、まだまだ完成度は高くない。村本自身の生まれ故郷である福井県の現状を訴えかけた前半パートではシャープな視点が見られたが、日本全体の問題について訴えかける後半パートはただただ運動家の青年によるシュプレヒコールの域を出ていなかった。とはいえ、これはあくまで発展途上。あえて強く否定することはない。これからの進展を期待したい。

ただ、文化人と呼ばれているような人たちが、この漫才をむやみやたらに絶賛されている姿を見ていると、「この人たちは社会を切っているという行為、とりわけ“日本の真実”とかいう代物を大衆の面前に晒している行為だけを評価しているのではないだろうか……」と、なんともいえない気持ちになる。かつて、同じような人たちが、爆笑問題が出てきたときに同じようなことを言っていたんだろうな。まあ、別にええねんけど……。

しかし、こういう風刺ネタが出た回に、ますだおかだの不在は残念。