土曜深夜の視聴覚室

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「アンジャッシュ ~クラダシ~」(2002年10月23日)

アンジャッシュ~クラダシ~ [DVD]

アンジャッシュ~クラダシ~ [DVD]

 

 

アンジャッシュの初期作品集。当時、既にリリースされていた『爆笑オンエアバトル アンジャッシュ』(2001年6月20日発売)に収録されていないコントから選出されているため、「クラダシ」というサブタイトルになっている。それぞれのコントは独立しているが、幕間映像を含めた全編を鑑賞すると全体が一つに繋がるという凝った構成を取っており、単なるベストセレクションとは一線を画した作りになっている。また、東京03を結成する前の飯塚悟志豊本明長が、当時のコンビ“アルファルファ”としてゲスト出演している点も見逃せない。

 

アンジャッシュといえば“すれ違い”を取り入れたコントで知られているが、本編に収録されているネタは、その印象を塗り替えるほど多種多様に富んでいる。公園で偶然出会った見覚えのある人物が何者なのか思い出せない二人が会話を重ねながらお互いに探りを入れる『Who are you? Jazz』、音楽番組のために撮影されたアーティストとパーソナリティのトークをダメなアシスタント・ディレクターがダメな編集を施してしまう『Edit Rock’n Roll』、ちょっとした口論をきっかけに友人を殺してしまった男がその事実を別の友人に知られないように隠し通そうとする『Dead Body Blues』、とあるお笑いコンビの感動的なエピソードをショートストーリー形式で描いた『Dramatic Episode Serenade』……どれ一つとして類似するフォーマットは存在しない。

 

だが、一つ一つのネタをよく見てみると、そこでは確かに“すれ違い”が起きている。お互いを誰なのか分かっていない男たちは勝手な想像を繰り広げて“すれ違い”、事前に流れる正しいトーク番組の映像は間抜けなアシスタント・ディレクターによって作られた映像と観客の記憶の中で“すれ違い”、友人が死んでいるとは気付いていない男は彼が生きていると思い込んでその非日常的なシチュエーションと“すれ違い”、あからさまに感動的に作られたショートストーリーは出演者の感情とは裏腹に観客と“すれ違い”を起こす。だから笑える。

 

とはいえ、それをアンジャッシュ以外の芸人が演じても、ここまで大きな笑いにはならないだろう。本作を鑑賞して、それを再認識させられた。とにかく児嶋の演技が上手い。笑いを自主的にもぎ取ろうという貪欲さを全く見せることなく、ただただ間抜けな人間を的確に演じている。特に印象に残ったのは、『Dead Body Blues』での渡部の告白を聞いた直後に顔を上げた瞬間。真剣な表情を崩さないようにこらえながらも喜びの感情を抑えられない気持ちが見事に表現されている。一方の渡部は、実は児嶋よりもコント的な演技をしているように思う。彼に役者の仕事が来ないのは、きっとそういうことなのだろう。

 

特典映像は『The Peach Boy Pops』。二人の保育士が、学芸会で桃太郎のキャラクターの顔のお面を駆使した劇を披露しようとするのだが、片方が緊張してしまってお面を取り違えてしまう……というコントである。こちらも一般的に知られている『桃太郎』の内容とコントの中で描かれている物語の内容が“すれ違い”……って、この表現を、ここまで万能に使ってしまってもいいものなのか。流石に少しどうかと自分でも思ってしまう。『桃太郎』という偉大なる原作をモチーフとした作品は数多く存在するが(それこそ古典落語にも『桃太郎』という演目が存在するほど)、本作は『桃太郎』のパロディであると同時に「学芸会」という設定を上手く利用したボケを散りばめた秀作だ。

 

本作のリリース後、アンジャッシュアンタッチャブルハリガネロックチュートリアルスピードワゴンテツandトモテンダラーなどの強豪を抑えて『爆笑オンエアバトル』五代目チャンピオンに君臨。そのことをきっかけに『エンタの神様』への出演が決定し、コント師として注目を集めるようになっていく。

 

■本編【43分】

「Who are you? Jazz」「interlude-1」「Edit Rock'n Roll」「interlude-2」「Dead Body Blues」「interlude-3」「Dramatic Episode Serenade」「interlude-4」「interlude-0」

 

■特典【7分】

「The Peach Boy Pops」