土曜深夜の視聴覚室

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「江戸むらさき B.M.W ~BEST MEETS WORST~」(2004年12月1日)

江戸むらさき B.M.W~BEST MEETS WORST~ [DVD]

江戸むらさき B.M.W~BEST MEETS WORST~ [DVD]

 

2004年9月12日に新宿スペース107で開催された単独ライブを収録。

2015年9月にしもきた空間リバティで開催された単独ライブ「レインボーマン」がソフト化されるらしいという話を耳にして、なんだか懐かしい気持ちになって、久しぶりに鑑賞した。アーカイブによれば、2008年1月以来のことになるらしい。思えば遠くへ来たもんだ。

当時、賞レースを制したわけでもなければ、何かしらかの番組で注目を集めたわけでもないのに、何故か2004年の学園祭キングになった江戸むらさきのショートコントを集めた作品である。思うに、小道具も衣装も必要としないショートコントというスタイルのフットワークの軽さに加え、ブリッジ(※ネタとネタの間をつなぐギャグのようなもの)に頼らないいぶし銀な芸風が評価されたのだろう。実際のところ、私もそんな江戸むらさきのネタが大好きだった。彼ら以後、さくらんぼブービーモジモジハンターアンガールズ360°モンキーズイシバシハザマ、有刺鉄線など、個性的なショートコント師が数多く登場したが、最後に戻ってくる基準点はあくまでも江戸むらさきだと思っていた。

しかし、それも今は昔のことである。本作がリリースされた頃に比べて、ショートコントを見る機会も随分と減ってしまった。思うに、「M-1グランプリ」「キングオブコント」などといった賞レースを制して注目を集めるというルートが一般的になってしまったため、それらの大会で評価されにくいショートコントをスタイルとして選ぶ芸人がいなくなってしまったためだろう。【ショートコントの帝王】との異名を取る江戸むらさきですら、ゼロ年代末期には漫才に力を入れていた。なんとも寂しい話である。

話を戻す。

本作はショートコントだけで構成されている。彼らが様々な舞台で披露してきたベストネタ、ここで初めて披露する新作、時代の変化によって意味が伝わり辛くなってしまったり内容に偏りがあったりするワーストネタ、「教室」「交番」など設定を固定したシチュエーションネタなどが収録されている。もちろん、どのネタもちゃんと面白いのだが、90分近い時間をかけて見ていると、流石にちょっと飽きてしまう。演じている彼ら(というか野村)自身、たまーに緊張の糸が切れてしまうのか、ときどきセリフを間違えてしまっていた。ところが、それが逆にアクセントとなって、こちらの見ようという気持ちを引き戻してくれたりするから、なんだか皮肉めいている。

久しぶりに江戸むらさきのショートコントを見ていて思ったのは、その発想の上手さだ。例えば、『わんこそば時々ラーメン』というネタがある。このタイトルだけだと、ちょっと内容の想像がつかない。しかし、矢継ぎ早に注がれるわんこそばを食べている磯山が、時々その箸を止め、麺に対して息を吹きかける姿を見て、その意図を……そこにどういう面白味があるのかを……理解する。この瞬間的な演出。ショートコントにこだわりのある彼らならではの見せかたといえるだろう。このシステムでいえば、『ノリの良い料金所』も印象的。高速の料金所を通るときにハイタッチするという、ただそれだけのことなのだが、やはりショートコントのスタイルで見るとやたらに面白い。あと、個人的に好きなのは、『すてきなカウボーイ』というネタなのだが……あんまりネタバレすると、実際に見てもらう際の楽しみが減るので、これ以上は控えておこう。それにしても、なんと普遍的な面白さであろうか……。

特典映像は『ネタ供養』。ワーストネタにも食い込めなかった二度とやりたくないネタを披露、供養している。どのネタも供養されるに相応しいレベルで、演じた後に苦笑いを浮かべたり、オチの後に言い訳めいたことをつぶやいたりするのも仕方がないと感じさせられる。ただ、それらのネタの中に、かつて「爆笑オンエアバトル」でも披露していた『外国人とコギャル』があったのには、少しばかり驚いた。当時はウケたネタだが、コギャルブームが終わって伝わり辛くなったために供養するということだった。いやー、本当に、思えば遠くへ来たもんだ……。 

■本編【79分】

「NEW 1」「BEST 1」「設定コント 学校」「設定コント 交番」「設定コント M」「WORST」「NEW 2」「BEST 2」

 

■特典映像【14分】

「ネタ供養」