今年の大型賞レースは史上初となる「優勝者が全員吉本興業所属じゃない芸人になる可能性がある」というポストを見かけたので、ちょっと調べてみた。対象となる賞レースは『M-1グランプリ』『R-1グランプリ(R-1ぐらんぷり)』『キングオブコント』『THE W』の四大会。『THE W』が始められた2017年以降の結果を振り返ってみて、本当に吉本興業所属の芸人による優勝がない年がなかったのかを調査する。
ちなみに、これは別に吉本所属の芸人に対するヤラセが行われていたのではないか、という邪推によるものではないことを先に書いておく。吉本ほどに幅広い仕事を手掛けている芸能事務所だったら、そんな手間をかけなくても、若手芸人を売り出すことは可能だろう。所属している芸人の数の多さと社の劇場で積み重ねてきた経験値の高さによるものだと考えるのが自然である。
というわけで、以下がそのまとめである(非吉本所属の芸人は太字表記)。
・2017年
R-1:アキラ100%(SMA)
KOC:かまいたち(吉本)
THEW:ゆりやんレトリィバァ(吉本)
M-1:とろサーモン(吉本)
・2018年
R-1:濱田祐太郎(吉本)
KOC:ハナコ(ワタナベ)
THEW:阿佐ヶ谷姉妹(ASH&D)
M-1:霜降り明星(吉本)
・2019年
R-1:霜降り明星 粗品(吉本)
KOC:どぶろっく(浅井企画)
THEW:3時のヒロイン(吉本)
M-1:ミルクボーイ(吉本)
・2020年
R-1:マヂカルラブリー 野田クリスタル(吉本)
KOC:ジャルジャル(吉本)
THEW:吉住(人力舎)
M-1:マヂカルラブリー(吉本)
・2021年
R-1:ゆりやんレトリィバァ(吉本)
KOC:空気階段(吉本)
THEW:オダウエダ(吉本)
M-1:錦鯉(SMA)
・2022年
R-1:お見送り芸人しんいち(グレープカンパニー)
KOC:ビスケットブラザーズ(吉本)
THEW:天才ピアニスト(吉本)
M-1:ウエストランド(タイタン)
・2024年
R-1:街裏ぴんく(トゥインクル)
KOC:ラブレターズ(ASH&D)
THEW:にぼしいわし(フリー)
M-1:【未定】
こうして表にまとめてみると、吉本興業の強さを改めて認識せざるを得ない。ただ、吉本所属の芸人によって四大会が制覇された年は2023年だけと意外に少なく、非吉本興業所属の芸人たちの奮闘ぶりも見えてくる。……となると、2024年の非吉本芸人たちの躍進は、2023年に吉本芸人たちによって制覇されたことへのなにかしらかの反動と捉えることも出来るのかもしれない。
非吉本芸人たちによる四大会制覇の可能性が起こり得た年は、2018年と2022年。それぞれ非吉本芸人が二大会を制している。
2018年のM-1は非吉本のファイナリストがケイダッシュステージ所属のトム・ブラウンのみだったので、そもそも厳しい年だった。そのトム・ブラウンが2024年のM-1で決勝進出を果たして、非吉本芸人による制覇にリーチをかけていることを思うと、なにやらアツい。同年のR-1はSMA所属のおぐ(ロビンフット)が健闘して最終決戦に進出しているが、若き天才二人(濱田・ゆりやん)に阻まれ、三位という結果に終わっている。ちなみに、この年のR-1は、霜降り明星の二人が揃って初の決勝進出。いわゆる第七世代ブーム前夜である。
2022年のKOCはSMA所属のや団が奮起、初の決勝進出でありながら最終決戦にまで駒を進めたものの、暫定一位のビスケットブラザーズが圧倒的なパフォーマンスを見せつけ、大きく点差を開けられて三位という結果に終わっている。同年のTHE Wは、ワタナベ所属で前年準優勝だったAマッソに期待が寄せられていたが、M-1グランプリ決勝の舞台を控えていたヨネダ2000に惜しくも敗れ、ブロックでの敗退となった。
つまり、今年のM-1グランプリにおいて、非吉本興業所属の漫才師が優勝した場合、本当に史上初となる非吉本芸人による賞レース四大会完全制覇の年になるのである。無論、決勝のステージでとてつもなく面白い漫才を披露したコンビにこそ、優勝の栄冠が与えられるべきなので、史上初だのどうのこうのということはどうでもいい話でしかない……のだが、ちょっとオタク的にワクワクしてしまう話である。いや、本当に、単なるオマケ要素みたいなものでしかないのだが。
(ちなみに、THE Wが開催されるよりも前、KOCが開始されて三大賞レースの状態になった2008年までさかのぼると、非吉本芸人が王者に選ばれた2009年(東京03)、2010年(キングオブコメディ)、2012年(バイきんぐ)、2013年(かもめんたる)の年は、それぞれR-1・THE MANZAI・M-1において吉本所属の芸人が優勝を果たしているため、やはり非吉本芸人による制覇は起きていない。M-1とR-1の二大賞レース時代については、あんまりワクワクしないので調べない。気になる人は各自で調べてね)
……しかし、冷静になって考えてみると、今年の賞レースの優勝者が所属している事務所が「トゥインクル・コーポレーション」「ASH&Dコーポレーション」「フリー」って、めちゃめちゃスゴいな。どんな時代だよ。