白昼夢の視聴覚室

犬も食わない

ワイルドカードの件について。

M-1グランプリ2024』準々決勝敗退者の中から、動画視聴者からの投票によって今年がラストイヤーだったロングコートダディワイルドカード(敗者復活)に選出される。SNSではニューヨークのネタをそのままフリにしたラパルフェが、お笑いファンの間では赤ちゃんを自称している相方を痴漢冤罪のシチュエーションで追い詰めていたネコニスズが、それぞれ高い評価を得ていたこともあって、この結果に対して強い反発の声があがっているらしい。

個人的には、むしろそこまで気持ちを入れた状態で大会を見ている視聴者が多いことに驚かされる。M-1グランプリという大会には、他の賞レースに比べて思い入れの強い人が少なくないことは認識している。とはいえ、これが決勝戦であるならばまだしも、準決勝戦に参加するための枠である。それも、準決勝戦で敗退してしまった場合、決勝戦当日に行われる敗者復活戦には参加することが出来ない枠である。そして、M-1が復活した2015年以降、準々決勝のワイルドカード枠から決勝進出を果たしたユニットは、これまで一組も存在していない。

・【歴代の準々決勝ワイルドカード枠】
15年:ニッポンの社長

16年:馬鹿よ貴方は

17年:アキナ

18年:魔人無骨(現・令和ロマン)

19年:金属バット

20年:ラランド

21年:滝音

22年:金属バット

23年:ダブルヒガシ

24年:ロングコートダディ

首の皮一枚、蜘蛛の糸による救いでしかない枠である。その枠に自身のお気に入りのユニットが入らなかったからといって、苛烈に腹を立てるというのはどうなんだろうかと、ちょっと思ってしまう。少なくとも、当人たちにダイレクトメッセージを送り付けるほど、感情を狂乱させていい状況ではない(そんなことが認められる状況なんて有り得ないのだけれども)。こういった人たちの熱気によってM-1という大会が支えられている側面もあるのだろうとはいえ、それにしても、もうちょっと落ち着いた方が良いのではないかと思う。

ちなみに、ロングコートダディ自身は自らの準々決勝敗退について、一ヶ月限定で放送された『ロングコートダディオールナイトニッポン0』(2024年11月)において「予選当日に作ったネタだった」「手応えがなかった」と語っている。その時点では、彼ら自身はさほど大会に対する未練を感じさせていなかったように思えたが……その事実が、却ってファンに「M-1ラストイヤーをこんな形で終わらせてはいけない!」という気持ちを芽生えさせ、この結果に繋がった……のかもしれない。すべては薮の中である。