白昼夢の視聴覚室

犬も食わない

先週末に観た映画の感想文。

・キャンディマン(2021)

黒人差別を主軸としたストーリーに既視感を覚えたので、スタッフを調べてみたら、脚本に『ゲット・アウト』『アス』の監督で知られるジョーダン・ピールが参加していて、腑に落ちました。すっかり、そういう作風の作家として、自分の中でイメージが定着してきましたよ。単なるダークヒーローではなく、理不尽で不条理な側面を持ったキャンディマンというキャラクターが絶妙。鏡に向かって彼の名前を呼んだ人だけではなく、その場に居合わせた人もゴリゴリに巻き込まれて殺されちゃうところがたまりません。特に、とある人が殺されてしまうシーンで、カメラがどんどん引いていく構図はたまらないものがありました。都会の喧騒に打ち消される恐怖。ホラーならではの後味の悪さと差別の歴史に蓄積された憤怒が同時に感じられる、なんとも奇妙な映画でありました。日本でもこういう映画が作られてもいいと思うんですけど、どうなんでしょう。

 

・映画大好きポンポさん

原作は映画制作の情熱をシンプルに描いた漫画でしたが、映画版では資金繰りの苦労や映像編集の葛藤などが追加で描かれていて、よりエンターテイメント作品としての深みが増したように思います。この辺はアニメ版の『映像研には手を出すな!』に通じるものがあります。安易に比較するものではないのかもしれませんが、個人の発想を可視化する漫画作業と、集団で一つの作品を生み出す映画作業との違い、みたいなところのあるのかもしれませんね。ストーリーに重みを加えたことについては、原作ファン的にはちょっと微妙に感じるところがあるかもしれませんが、個人的にはアリ。特に編集シーンの苦悶は、指定された文字数の中で書きたいことをまとめないといけないライター仕事と重なるところがあって、なにやら胃がキリキリ痛みました(撮影時の苦労を思えば、そのストレスはより一層のものだと思いますが)。続編もあるといいですねえ。

 

・羅小黒戦記 僕が選ぶ未来

中国の漫画を原作とした映画なんだそうですよ。しっかり観ていないと置いていかれそうになるところがあり、片手間での鑑賞を微塵も許してくれませんが、だからこそ作品世界にのめり込んだときの快感はたまらないものがあります。登場キャラクターは魅力的だし、広大な世界の描写も美しくて、目が離せません。なにより私が惹かれたのは、絶妙な軽さ。ところどころにキャラクターがデフォルメ化されたギャグシーンが挟み込まれるんですが、そのノリの軽さが、ちょうど私が学生だった時代のファンタジーコミックっぽいんですよね。エニックス系の、ちょっと大人びた感じのやつ。その辺の親しみやすさが、なんだかとても懐かしかったです。あのノリは意外と普遍的なんだな。ストーリーも熱くて、ラストシーンはうっかり泣いてしまいました。いやー、面白かったな。ちなみに、このタイトルは“ロシャオヘイせんき”と読みます。毎回忘れちゃうな。

 

久しぶりにガッツリと映画を観た週末でした。たまにはこういう日を作った方がいいですね。現実ばかり見ていると疲れます。