令和時代のお笑い公論

笑いの粗熱が冷めるまで

「R-1ぐらんぷり2020」Cブロック感想(2020年3月8日)

ヒューマン中村
「妖精の声」。セントニア王国の妖精が精神に直接語り掛けてきて、受信料を請求しようとする。ファンタジックな世界観に受信料を掛け合わせるギャップのある設定がとても面白い。漫画や小説ではたまに見かける手法だが、コントではまだまだ未知数のジャンルである。受信料にエコーを効かせる音ボケや、『爆笑セントニア名人寄席』に対する「ちょっと見たいな…」というリアクション、受信料を支払わない場合の「精神にいらんことを言い続ける」で畳み掛けられるボケなど、全体的にソツがない作りでとても良かったのだが、そのソツのなさが故に、ちょっと記憶に残りにくいコントになってしまっていたようにも思う。ギャップで笑いを取る手堅い設定があるからこそ、更に飛躍的なボケやフレーズがあったら、もうちょっと楽しめたかもしれない。

 

・おいでやす小田
「おどしの口調」。組に入ったばかりの若い連中に借金を回収するときのおどしの口調をレェェェェェェェクチャー。「ラ行の時だけ巻き舌になる」というバカバカしい設定に目を奪われそうになるが、ネタの構成そのものは非常に手堅い。「コラ!」「オラ!」といった基本形に始まり、上級者向けの「殺したろかコラ!」でネタのシステムを理解させ、質問形式でシステムの密度を高め、更にメタ的な視点によるフレーズも見せることで、このシンプルなボケの面白さを存分に引き出しておいて、最後の実践編でキレイに落とす。なかなかに綿密だ。「根こそぎいけ」「それはどつけ」など、印象的なフレーズも残せている。ただ、延々と「ラ行の時だけ巻き舌になる」というあまりにもシンプルなボケを引っ張り続けるコントなので、最初のボケがハマらなかった客は最後までまったく面白いと感じられないという、非常に危険性の高いネタでもあるように思う。実際、当時の私はあんまりハマらなかった。今改めて見るとちゃんと面白い。

 

ワタリ119

「超高速フリップネタ」。レスキューはスピードが命であることを消防士時代に学んだワタリが、R-1の持ち時間180秒に対して119枚も用意されたフリップを駆使した超高速フリップネタを披露する。ネタが始まるまでに要した74秒のフリで全てが完結しているようなパフォーマンス。とにかく高速でネタをする姿を見せることを目的としているので、内容はそれほど重要ではないのである。とはいえ、それなりに面白くなければ、ネタとして成立しないため、そこそこにはきちんと作られている。特に「箸誤射」「1位地球」のくだりは良かった。ただ、全体を通して、敢えて荒っぽく作っているわけではなさそうな、ただただシンプルに粗さが感じられるネタが散見されたことが気になった。例えば、八代隊長の住所を言ってしまうくだりとか、乗りたい車ランキングにおける「屈折車」という見慣れないワードだとか、分厚い防災ブック=フリップ大量消費としてしまうくだりの説明の無さとか、もうちょっと突き詰めることが出来たように思う。それが却って、このネタが作家によるものではないことを証明しているのだが(当時、そういう疑惑があがっていたのである。もっとも、その辺りに配慮のない作家が手掛けた可能性もあるわけだが)。時間が余ったからギャグをするという無鉄砲な振る舞いを含め、総じて面白いと感じられたパフォーマンスだっただけに、そのあたりの仔細の部分はちょっと気になってしまった。

 

大谷健太(復活ステージ1位)

「早く言います」。イラストで描かれている内容を早口言葉で表現する。不条理なイラストを早口言葉で表現、そのイラストからもたらされるモヤモヤ感を明確にすることで笑いが生み出される仕組みのパフォーマンス。個人的には、かつてイラストと回文を組み合わせたパフォーマンで話題になった“レム色”というコンビのことを思い出した。笑いの取り方としては古典的でもはや堅実とすらいえる手法だが、イラストに登場したキャラクターたちが終盤で一気に混ざり合う構成が功を奏したように思う。個人的には特に「あたたかかたつむり」絡みの畳み掛けが面白かった。オチに「バスガス爆発せず」をチョイスするところも好き。

 

審査の結果、大谷健太がファイナルステージに進出。