雷鳴の如きエレクトリックギターの音が心臓に突き刺さる。直後、ストリングスの音が、激しさを増す豪雨のように、ぽっかりと空いた心臓の穴へと注ぎ込む。目に浮かぶのは真夜中の嵐そのもの。その情景の中、スピードを上げる車に打ちつけられた雨は、より一層の激しさを演出する。「天井はひどい雑音」。説明不足な言葉が却って生々しく状況を雄弁に語っている。……『二人のアカボシ』をヒットさせ、その年の紅白歌合戦にも出場したキンモクセイが、その直前にリリースした『車線変更25時』は、それまで彼らが世間から抱かれていただろう“軟弱なポップスバンド”というイメージを払拭するに足る、あまりにも衝撃的な一曲だった。とにかく歌詞のシチュエーションとメロディの一体感が半端じゃない。この歌詞のためのメロディであり、このメロディのための歌詞としか思えないのである。こりゃあキンモクセイ、とんでもないことになるぜ!と当時の私は思っていたのだが、これが驚くべきことに売れなかった。まったく信じられない。世界観が薄暗過ぎたのかもしれないが、それを差し置いても最上級の名曲である。