令和時代のお笑い公論

心が腐る、その前に。

男と女とプーチンとマーチン。


ラーメンズのコントに『プーチンとマーチン』というネタがある。パペット人形のプーチンとマーチンが延々と無軌道な会話を繰り広げるナンセンスコントである。ほぼほぼ会話だけで構成されているネタなので、一見すると、わざわざパペット人形を持ち出さなくても成立するように思えなくもないのだが、会話の随所に【人ならざるものが人のことを無責任に語る】要素を含んでいるので、それが人ではないことを表現するために敢えて人形を使っているのだろう。この『プーチンとマーチン』の中に、こんなやり取りがある。

マーチン「問題!男と女の違いを述べよ」
プーチン「なぐっていいのが男、なぶっていいのが女」
マーチン「かーわいー!」
プーチン「かーわいー!」

これまで、なんとなく聞き流していた、このやり取り。てっきり、ただただ語呂の良い言い回しを並べているだけだと思い込んでいたのだが、本日未明、「このくだりって、社会から男が押しつけられている“男性性”と女が押しつけられている“女性性”を、とてつもなく端的に表しているのではないか?」という考えが自分の中に浮かんできた。ざっくりと説明すると、「なぐっていい」男とは乱暴で投げやりな行為を受けても気にしない男らしい男のこと、「なぶっていい」女とは面白半分に弄ばれても抵抗しない女らしい女のこと、を表しているのではないか?と思ったのである。

無論、だからといって、このコントを演じている二人に対し、また、このコントで笑っている観客に対し、「諸君らは男女差別について何も考えていないからこのようなコントを演じ、このようなコントで笑えるのだ!」などと糾弾するつもりはない。私はむしろ、ここまでシンプルに、しかし如実に、男と女にそれぞれ押しつけられている性のイメージを表現していることが、ただただ単純にスゴいと思う。そして、それを人ならざるものが無責任に無作法に言い放ち、そこに少なからぬ共感の気持ちを抱いている観客たちの心の中にある常識という名の重たい扉をこじ開けているからこそ、このくだりは笑いへと昇華されているのだろう。

要するに、上手いよなあ……。