白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

マツモトクラブ「ヒトミシリ want you!」(2016年7月27日)

ヒトミシリ want you ! [DVD]

ヒトミシリ want you ! [DVD]

 

R-1ぐらんぷり」で三度の決勝進出を経験している実力派・マツモトクラブが作・演出・監督を手掛けているコント映像作品集である。『お賽銭』『美容室』『そんな出会い』など、マツモトクラブの既出の持ちネタが主に映像化されている。正直、本来は舞台用に作られたネタなので、映像化することによって本来の面白さが薄まってしまっている感は否めない。例えば、美容室に行ったことのない男が初めての美容室にカルチャーショックを覚える『美容室』は、美容室および美容師の存在を可視化することによって、舞台版では最も重視して描かれていた「美容室に対する男の戸惑い」以外の部分に気が散ってしまう。無論、それでも十二分に面白いのだが、舞台版の面白さには敵わない。

とはいえ、本作が意欲的な姿勢によって作られた作品だということは、高く評価すべき点である。ただマツモトクラブがコントを演じている姿を、能天気に撮影しているような平凡な作品ではない。クセの強いカメラワーク、飽きさせないカット割り、ちょっとした細かい演技に至るまで、マツモトクラブの徹底したこだわりが感じられる。黒柳徹子風の語り口で客を追い詰める不動産屋に入ってしまった男の困惑を描いた『徹子の不動産』における、話の流れで披露されるサッカーのゴールキックの絶妙な映り具合には感心した。一方で、構成にも力が入っている。それぞれに独立しているように見えたネタがとあるコントをきっかけに一本の線に繋がったかと思えば、そこから更なる進展を見せる。正直、色々と詰め込み過ぎのような気がしないでもないが、全力の姿勢で臨んだことが画面からひしひしと伝わってくる秀作といえるだろう。でも、どうせなら、舞台版も特典か何かで収録しておいてほしかったかもしれない。

これらの本編映像に加えて、特典として撮影時にマツモトクラブがうっかり吹き出してしまった映像をコメンタリー付でお送りする「フキダシテ shot you!」が収録されている。自分で考えたネタに自分で笑ってしまっているマツモトクラブの表情は、彼のファンにはちょっとたまらないものがあるだろう。うーん、あざとい。

■本編【76分】

「喫茶ドレミ」「お賽銭」「恐怖の定食屋」「美容室」「そんな出会い」「日曜日のマツモロウ」「徹子の不動産」「ぼくたち同級生」「天使と悪魔と。。。」「ダーツの旅」「ぼくたちの夢」「エンディング「♪ヒトミシリ want you!」」

■特典映像【11分】

「フキダシテ shot you!」

■封入特典

「あのミュージシャンの譜面」