白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

ラーメンズ「無用途人間」(001/100)

【用途】を持ち合わせていないがために何も出来ずに俯いている“無用途人間”佐藤の元へ、伝達用人間の鈴木が新しい【用途】を伝えにやってくる。ファン投票によるベスト盤『Rahmens 0001 select』に選出されるほどの人気作だが、個人的にはあまり好きなネタではない。否、確かに美しいコントではある。独創的な導入、それなのに分かりやすい展開、それでいて意外性のある結末……その世界には一切の無駄がない。しかし、無駄がないからこそ、物足りなさを感じる。

このコントの肝は最後の台詞だ。「すいません、誰か、私たちに「しなきゃいけないこと」をください!」。この言葉を観客に投げかけることで、自らの【用途】について考えさせようという試みである。それ自体は悪くない。ただ、このオチへと繋がっている道筋があまりにも一直線で、メッセージありきの台本に見える。……むしろ、そのように見せることこそが、目的だったのかもしれないが。単独公演のオープニングを飾るコントとしては、あまりにも衝撃的に作られているのも、そのような意図があってのことだったのかもしれない。あくまで邪推だが。

しかし、冷静に考えてみると、終盤の展開のなんと物悲しいことか。お互いのことを思いやって、【用途】の領域を超えた二人は、結果としてどちらも【用途】を失ってしまう。まるで【用途】を逸脱した二人にバチが当たったかのように。実に恐ろしい。笑っている場合じゃないぞ、ホント。