白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「だーりんずベストネタ集「カツライブ」」(2017年2月22日)

2017年11月20日にユーロライブで開催されたベストライブの模様を収録。

キングオブコント2016」決勝戦で彼らが披露していたコント『結婚前夜』のイメージがあまりにも強く残っていたため、視聴前は良くも悪くもライブの観客向けなコントを演じているコンビなのでは……と勘繰っていたのだが、いざ本編を鑑賞してみると正真正銘の正統派コント職人だったので驚いた。「娘さんをください」「就職面接」「母親を捨てた父親に実の息子が復讐」などといったオーソドックスなシチュエーションを、決して斜に構えることなく、新しい発想でもって真正面から笑いに変えている。それなのに斬新さを感じさせられないところが素晴らしい。比類なき発想に甘んじることなく、きちんとコントの設定として咀嚼し、更なる笑いへと昇華させている証拠だろう。

特に、その着想の素晴らしさと展開の下らなさに驚かされたのは、『自殺』というコント。自殺の名所から飛び降りようとしている松本をパトロールしている地元住民の小田が止めに入る……と、これまたありがちな設定なのだが、とにかく切り口が衝撃的。それでいて理に適っている。どのように説明してもネタバレになってしまう危険性があるので、ここでは具体的な内容については何も書くことが出来ないが(しいて書けるところを挙げるとすれば、小田の「リストラ、借金、別れ……よくあるパターンだ」という台詞くらいのものだろう)、一度は見ておいたほうがいい必見のコントである。

コントも面白いが、幕間映像も面白い。「緊急検証!だーりんずは自分の事をどれだけわかっているか?」と題し、お互いに相方の自宅を一人で訪れ、部屋のどこかしらかを三ヵ所変化させ、戻ってきた相方が何を変えられたのかを当てるという間違い探しゲームに興じている。シンプルなルールであるが故に、仕掛ける側も探す側もそれぞれに個性が出ていて、とても良い。小田の仕掛けに動揺する松本の姿に、コンビとしての関係性が伺えた。

特典映像は、それぞれのピンネタ『SAMURAI(小田)』『幸せだな(松本)』と、ゲストにマツモトクラブを招いて三人で過去のボツネタを視聴する様子を収録した「ボツネタのコーナー」。「ボツネタのコーナー」は“ボツネタ”という割には今でもさほど問題無く見られるコントが多く、普通にネタとして楽しめた。むしろ、その意味ではピンネタの方が、よほど危うい。あのレベルのネタをどうして映像ソフトに残そうと思ったのか……将来、売れっ子のコント師になるに違いないだーりんずの消せない黒歴史として、語り継がれること必至だろう。芸能界を追放されなければ、の話ではあるのだが。

最後に余談だが、ボケの方が「小田祐一郎」でツッコミの方が「松本りんす」って、見た目と芸名が逆のような気がしてならないのは私だけだろうか。そのチグハグさも、また味か。

 

■本編【66分】

「公園」「娘さんをください」「面接」「刑事」「自殺」「落語」「エージェント」

「復讐」「結婚前夜」+幕間映像「緊急検証!だーりんずは自分の事をどれだけわかっているか?」

 

■特典映像【44分】

【だーりんずピンネタ】

「SAMURAI(小田)」「幸せだな(松本)」

【「カツライブ」エンドトーク

【ボツネタのコーナー(ゲスト:マツモトクラブ)】

「彼女」「騎馬戦」「相席」「結婚前夜 初披露Ver.」