白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

旧作プレイバック(三本セット)

最近、未知なるDVDを鑑賞することに疲労感を覚え始めてきたので、このままではいけないと思い、かつての情熱を取り戻すべく、まだまだ心に熱を帯びていた時代に触れていた昔の作品を戸棚の奥から引っ張り出してみた。その感想を以下に書き留める。

 

3月9日視聴。当時のレビューはこちら。前回の公演『シティボーイズミックス PRESENTS 『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』』が鋭い風刺と機知に富んだ表現に満ち溢れた大変に素晴らしい出来だったため、本作の緩やかな空気感に当時の私は強い違和感を覚えたものだが、幾年月が経過して、先の公演からの流れが気にならなくなった状態で観賞してみると、これはこれで良いのだと素直に感じられるようになった。ただ、本作を受け入れられるようになった理由は、それだけではない。本作の作・演出の担当している前田司郎が手掛けたネプチューン主演のテレビドラマ『空想大河ドラマ 小田信夫』(2017年2月放送・全四回)を視聴して、氏が「ダメな人たちによる仲睦まじいやりとり」を表現することに長けていると理解できたことが非常に大きい。提示された作品に対し、どのようなスタンスで向き合えば心から楽しめるのか、視聴者としての在り方について改めて考えさせられた。

 

3月15日視聴。当時のレビューはこちら。とんでもない発想に満ち溢れた作品で、当時の私も009年の年間ベストに選んでいるのだが、その内容をあんまり覚えていなかったため、それなりに新鮮に本作を楽しんでしまった。ダメだよなあ。それにしても面白い。何もないのに有るかのように演技してみせる“無対象演技”であらゆる状況を表現する家族を描いた『無対象家族』だの、あらゆる仕草をより強調させるための道具を取りそろえた『仕草の装飾品店』だの、芸人ではなく役者として活動してきた吹越氏ならではの視点が無ければ生み出されないであろうパフォーマンスの数々は、芸人のそれに慣れた目にはとても新鮮に映る。とりわけ、当時も衝撃を受けた『命を賭けてみる。その、一』には、今回も当時と変わらずに笑わせられた。命を賭ける……とまでは言わないにしても、下手すれば大怪我しかねないような状況下で、どうしてあんなバカなことが出来るのか! およそ八年ぶりの視聴だったが、やはり最高の作品である。

 

千原兄弟コントライブ「ラブ 」[DVD]

千原兄弟コントライブ「ラブ 」[DVD]

 

3月20日視聴。当時のレビューはこちら。ブラックな趣きの強いコントを得意としている千原兄弟が、ポップな笑いを目指している作品である。事実、本編で演じられているコントには、シンプルで分かりやすいネタが多い。子どもたちの父親が思い思いのカッコイイ恰好をして父兄参観にやってくるオープニングコント『父兄参観』を皮切りに、ケータイの予測変換が彼女の正体を明かしてしまう『ボクカノ』、捜査一課の面々が立てこもり犯の前で延々と小学生のようなノリを繰り広げる『けいしちょうそうさいっか』など、誰が見ても内容を理解できるし、誰が見ても笑うことが出来るだろう。ただ、当時もきちんと理解できなかった『ザ・ドキュメント』の意図は、今回も掴むことは出来なかった。ジュニアは教師のインタビューと実際の授業風景を描いた理由はなんなのか。いずれ分かる日が来るのか、それとも、分からないままなのか。もとい、分かろうとすること自体が、ナンセンスなのかもしれない。