白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「じわじわチャップリン」(2017年2月25日)

「アパレル」。服屋の店員にアパレル業の接客風の口調で語りかけてくる客。アパレル界隈の人間特有の鼻につく喋り方やマニュアル的言い回しを皮肉ったネタは過去にも存在したが、同様の方法論で店員に立ち向かうという発想は初めて目にした。この着眼点だけでもかなりのものなのに、構成も上手いからたまらない。半ば強引にアパレル風の口調を維持している客の不条理さが最高潮に達したところで、「僕、土木作業員です」と(もしかしたら同業者が他社を潰しに来たのではないか?)という一縷の希望を打ち砕く、この素晴らしさ。それでも何か納得させられるオチの一言に至るまで、とてもよく出来たコントだった。流石、チャンピオン。

 

「ダイイングメッセージ」。自宅で泥棒と遭遇し、胸をナイフで刺されてしまった男が、ダイイングメッセージをカセットデッキに吹き込もうとする(メロディ付きで)。胸をナイフで刺されているのに余裕ある行動を取っている……というギャップが笑いを生み出している。また、無駄に高い音楽性が、そのギャップを更に大きく広げている……その意味では、先週のてんしとあくまのコントに近いものがあるのかもしれない。途中で戻ってきた犯人が、ツッコミ役から不条理の担ぎ手へと役割を転換する構成もバカバカしくて面白かった。ただ、オチに救いがなくて、こんなに不条理なコントなんだから、そこはムチャクチャなことになっても良かったのではないか、という気もした。

 

【ふきだまりコーナー】

アイロンヘッド、インディアンス、インポッシブル、Aマッソ、えんにち、末吉くん、てんしとあくまトンツカタンネルソンズ、ハナコ、平野ノラ、ハリウッドザコシショウ、バッドナイス、ペンギンズ、マツモトクラブ、ORIEが登場。「今まで見たこともないギャグ」というテーマの元、バッドナイス、インポッシブル、ペンギンズがギャグを披露した。ペンギンズのネタにアイパー滝沢が入り込もうとする姿に、ちょっとだけ感動してしまった。新旧のアウトローキャラたちが共演している……!

 

「スリル」。二週勝ち抜き。恐い体験をするのが好きだという高松に、篠宮があの手この手を駆使して「安全なスリル」を味わわせる。センターマイクは用意しているが、漫才ではなく、布袋寅泰の『スリル』に合わせて高松を様々な方法で追い詰めていくパフォーマンス。とどのつまりは単なる悪ふざけなのだが、追い詰める方法のバカバカしさと使用されているBGMのリズム感が合わさって、ついつい笑ってしまう。こういうのを見ると、もう会場を自分たちの内輪に連れ込んでしまえば、何をやっても構わないのだなと思わせられる。それが良いことなのか、それとも良くないことなのか、私には判断できない。ただ、そういう徹底して意味のないこと、とことんバカバカしくて下らないこと、それって演芸じゃなくてテレビの役割じゃない? テレビの演芸番組なんだから、間違っていないといえば間違っていないんだけど……。三週連続勝ち抜きでチャンピオン大会出場決定。

 

 「社内恋愛」。同期の飲み会で意中の男性・鈴木との距離を埋めようと考えている和泉だったが、同僚の浜名が同じく鈴木に告白しようと考えていることを知り、自らの気持ちを悟られないままに諦めさせようと試みる。一昔前の会社漫画で描かれていたようなOL同士の腹の探り合いを、演技に強めのデフォルメを施して演じてみせたコント。そのため、新しさは皆無に等しいが、無難に笑える仕上がりにはなっている。あえて新しさを見出さない方向に行くのも悪くはないのかもしれないが、以前に見たコントの面白さを思うと、このクオリティは不服。演技力は安定しているし、だからこそ、こういうベーシックな台本でも笑うことが出来るのだが、もうちょっと攻めてもいいような気はする。今後、そういう一面も見せてもらえるようになれば、とても嬉しい(そういうネタだと投票数で負ける可能性もあるが)。

 

【今週のふきだまり芸人】

バッドナイス「ショートコント「サプライズ」」

ハリウッドザコシショウ「滑舌の悪いプロレスラー サムソン冬木の真似」

ORIEレースクイーンのショートコント「アドバイス」」

 

次回の出場者は、インディアンス、ORIEハルカラ(一週勝ち抜き)、ラフレクラン(一週勝ち抜き)。