白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「夢であいましょう」のはなし。

美しい曲である。これほどに美しい曲は他に存在しないのではないかと確信に似たような感情を抱けるくらいに、美しい曲である。まるで、これから訪れる夜の輝き、瞬き、美しさをそのまま描いているようだ。そんな夜は、子どもの頃にテレビの中で見たような記憶がある。古いテレビアニメだったか、或いは人形劇の類いだったか、とにかくその世界に夜が訪れて、それは確かに夜なのだけれど、星や月の光のせいか、それとも世界そのものが密かに抱いている光か、妙に明るくて煌びやかに感じられたのである。そんな夜が今、世界のどこかに存在しているのだろうか。否、そんな夜は、きっと身近に存在しているのだ。子どもの頃に感じたような、そんな夜は今も身近に存在しているのだ。今も夜は囁いている。「夢であいましょう」と。でも、そんな夜の声を、僕は忙しさにかまけて聞き逃しているだけなのだ。今の夜が嫌いなわけではないけれど、そんな夜のことを思い出せてくれるこの曲は、夜がただの夜でしかなかった時代の記憶とともに、永遠に美しい。