白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「じわじわチャップリン」(2016年7月9日)

「結婚式」。新郎が務める会社の社長によるトリッキーな乾杯の挨拶。言わずと知れた「キングオブコント2008」決勝戦で披露されたコントである。当時はあまりのトリッキーな内容に少しばかり距離を感じたが、彼らのキャラクターが浸透している今の状態だと、余裕をもって楽しむことが出来る。乾杯のスピーチを務める緊張と本来の当人のどうかしている感性が混ざり合っていて、「まだ共感できる部分」と「まったく共感できない部分」のバランス感で上手く笑わせられる。自分の発言ミスにツッコミを入れたかと思えば、しれっと純粋にどうかしている発言を繰り出してしまう。おかげでまったく油断できない。カスタネットのくだりも最高だ。

 

聖徳太子のOL」。聖徳太子をOLに置き換えた一人コント。……この発想の時点で素晴らしいのだが、肝心のネタもなかなかに素晴らしかった。聖徳太子が生きていたとされる飛鳥時代のキーワードをコンスタントに散りばめて、とはいえ、難解になりすぎない程度にきちんとギャグ化する絶妙さ。「違ぇーよ! これは魏志倭人伝だよ!」「おったま遣隋使!」「お前なんか冠位十二階だと橙色だよ!」と、噛み締めれば噛み締めるほど、その下らなさの風味が口の中に広がっていく。このポップなのに深みのある芸風、ひょっとしたら奥が深いのかもしれない。

 

【ふきだまりのコーナー】

ヴィンテージ、オジンオズボーン、オテンキ、サイクロンZ、サンシャイン池崎、しゃもじ、ハブサービス、ハリウッドザコシショウ、ゆにばーす、ラブレターズが登場。この回から団体芸を覚えるように。今回は全員が仁王立ち。「もらって嬉しいギャグ」というテーマの元、しゃもじ、オジンオズボーンがギャグを披露した。……このコーナーになると、オジンオズボーンはどうしてうっすらスベッてしまうのだろう?

 

  • 全力じじぃ32

「挑戦」。やりたいことはなんでもやりたい二人が、色んなことをやってみる。前回と同様、ネタの内容は漫才に見せかけたショートコントの羅列。ただ、今回は「コラァ~!」というギャグがあったおかげで、全体に一貫性を保つことが出来ていたように思う。ああいう要素が一つでもあると、観る側の満足感がまったく違ってくる。とはいえ、何処で切っても楽しめるテレビ向きの芸でもある。ゲストの滝沢カレンが「ポッと見られる」と表現していたのも、恐らくはそういうことなのだろう。

 

  • 勝又:38

「朝」。寝起きにバタバタして色んなことが上手くいかない「朝」の様子を、「朝」を可視化して表現したコント。ビジュアル的にはチョップリンのコント『影』を思い出させるが、内容はシンプルに朝あるある。ただ、重要なのは、朝あるあるをどのように表現するかという点で、その意味では勝又:は非常に絶妙なところを突いていた。例えば、テレビの電源がなかなか入らないときの、「朝」の手をかざすくだり。全身でカバーするのではなく、手のひらでそっとかざす動きが良いのである。そういう細かい演出がとにかく上手かった。

 

【今週のふきだまり芸人】

ハリウッドザコシショウ「行きそうで行かないカメレオンのまね」

 

次回の出場者は、勝又:(1週勝ち抜き)、全力じじぃ(1週勝ち抜き)、天竺鼠(1週勝ち抜き)、脳みそ夫(1週勝ち抜き)。