白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「じわじわチャップリン」(2016年6月4日)

  • 平野ノラ39/50】

「バブリー幼稚園」。もしもバブルな女が幼稚園の先生だったら。バブル景気の時代を思わせる言葉や動作を下地としたキャラクターが注目を集めている平野ノラが、普段のキャラクターのままに幼稚園の先生を演じているコント。既に何度も聞いたことのあるワードが使い回されているにも関わらず、しっかりと笑ってしまった。思うに、当初は「時代錯誤なワード」として笑っていた単語を、単純に「ギャグ」として受け入れられるようになってしまったのだろう。「オッケーバブリーケツカッチーン!」のバカバカしさたるや。ただ、『大きな栗の木の下で』を踊るシーンで、ちょっと流れにブレーキがかかってしまった。踊りながら歌っている姿にちょっと頑張っている感じが出てしまったような。あの歌は、平野自身による歌唱ではなく、もう録音された音源として入っている方がウケたかもしれない。

 

「熱血教師」。1週勝ち抜き。熱血教師をやりたいというきょんのために、西村がありがちなヤンキー生徒を演じようとするのだが、その姿をきょんに笑われて……。前回のみっともないコントから一転、あまりにもしっかりとした内容に驚いてしまった。「高学歴であるために本当のヤンキーを知らない西村にきょんがリアルなヤンキーを教える」という構図の元、フィクションのヤンキーとリアルなヤンキーの違いを披露するという着眼点を軸とした漫才である。この構図がまず面白い。一見すると軽妙洒脱なキャラクターのきょんが、真のヤンキーの姿を西村に教え込むという不思議な状態。恐らくは、それをちゃんと意識した上でのネタなのことだろう。「弁当作ってくれる家庭だったらグレねえよ!」のリアリティにはちょっと感心。ヤンキーと幼馴染の謎のやりとりを「ヤンキー学校来ねぇよ!」と最初のツッコミで強引に切り捨ててしまう構成も良かった。正直、漫才ならではの丁々発止のやりとりがないという意味では物足りなさもあったが、自分たちの方法を見つけようという姿勢は感じられた。ただ、その方向には、既にニューヨークがいる。頑張ってもらいたい。……あと、一つだけ引っ掛かったのが、「先公じゃなくてきょんだから」「きょんかよ」のくだり。あそこは完全に要らないから、もうやらない方がいい。そこまで丁寧に演じなくても観客は理解できる。こういうところに元来の真面目さが表れているなあ……。

 

【ふきだまりコーナー】
イヌコネクション、なすなかにし、オテンキ、勝又、ザ・パーフェクト、エルシャラカーニ、サルゴリラ、新作のハーモニカ、脳みそ夫、パニーニ、プリンセス金魚、もう中学生、ラブレターズスーパーニュウニュウが登場。「結婚式でウケそうなギャグ」というテーマの元、パニーニ『空耳アワーでありそうな作品 ロック編』、ザ・パーフェクト『特殊なブーケの投げ方』、脳みそ夫『誓いの、キ~ス!』を披露した。脳みそ夫の存在感が凄い。

 

  • ゆにばーす【27/50】

「面接」。1週勝ち抜き。ショップ店員の面接を受けるも、そこで「ナメんな!」と言われて落ち込んでいるはらに詳細を聞いてみる。はらが面接を受けていたお店が「エルメス」だったことが発覚する前後を描いた漫才なのだが、正直なところ、お店の名前を聞いても、彼女が「ナメんな!」といわれなくてはならない理由が分からなかったので、少しだけ戸惑った。例えば、前回の様に「AKBになりたい」と言い出したのであれば、これも理解できる。アイドルには見た目の美しさも多少は求められていることを知っているからだ。だが、ブランド品を売っている店の場合、見た目はそこまで重要なのか。そういう問題ではないのか。後半、川瀬が土下座しながら、「オレらみたいなヤツはエルメスで働けへんねん!」と言っていたので、人間としての格の問題なのだろうか。この辺りはけっこうデリケートな問題なので、出来ればスマートに解説してもらいたい。あと、これは前回のオンエアでも感じたことなのだが、ゆにばーすははらの存在が非常に大きいコンビなのに、ちょっと川瀬の自己主張が強い点が気になっている。コンビのバランス感から飛石連休・藤井を意識すべきなのに、キングコング西野をやろうとしているように見える。そこは少し熟考すべき点であるように思う。

  • マツモトクラブ36/50】

「美容室」。明日、友人の結婚式を控えているにもかかわらず、子どもの頃から通っている床屋が休みだったので、生まれて初めて美容室にやってきた男の心境を描く。「美容室に慣れていない中年男のズレた行動」にモノローグと『北の国から』のテーマを加えることで、笑いの中に哀愁を散りばめることに成功している。そのため、単なる情景描写のコントではなく、厚みのある人間ドラマのような味わいが。でも、実際に起きているのは、美容室のシステムに対する戸惑いのみ。このギャップがたまらない。個人的なベストシーンは雑誌を選ぶくだり。「メンズノンノ東京ウォーカー、アサヒ芸能……アサヒ芸能……」というモノローグの流し方が素晴らしかった!

 

【今週のふきだまり芸人】

なすなかにし松任谷由実の『真夏の夜の夢』を一部分だけモノマネ」

スーパーニュウニュウ「ショートコント「最悪の結末」」

 

次回の出場者は、マツモトクラブ(2週勝ち抜き)、平野ノラ(1週勝ち抜き)、ラフレクラン(2週勝ち抜き)、ラブレターズ。但し、6月11日は「爆笑ショートネタ20連発SP!」と題して、若手芸人のショートネタがオンエアされる。アンガールズ、さんシャン池崎、勝又、パニーニ、TAIGA、おねだり豊、ピーマンズスタンダードローズヒップファニーファニー、せきらら、オテンキ、エルシャラカーニヤーレンズ、ハナコ、ラブレターズ脳みそ夫シューマッハ、サルゴリラ、ぐりんぴーす、ダンシングヒーロー、平野ノラ、もう中学生が出演する予定。