白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「流れ星 単独ライブ 維新」(2015年4月24日)

流れ星 単独ライブ 維新 [DVD]

流れ星 単独ライブ 維新 [DVD]

 

2014年8月から9月にかけて全国7か所で開催された単独ライブツアーより、9月28日の最終日に東京・有楽町朝日ホールで行われた公演を収録。

当時、流れ星は「THE MANZAI 2013」にワイルドカードとして決勝進出、そこで披露した『ひじ祭り』が注目を集めていた。様々なバラエティ番組に呼ばれ、得意のギャグを飛ばしているちゅうえいの姿は、「爆笑オンエアバトル」や「エンタの味方!」で彼らの漫才を見続けてきた人間としては、なんとも感慨深いものだった。

同年10月には、オードリー、ナイツ、ウーマンラッシュアワー山里亮太などの2000年にデビューした芸人たちが集結した「ミレニアムズ」のレギュラーにも選ばれている。……まあ、結果として番組はおよそ一年で終了してしまったのだが、「THE MANZAI 2013」王者であるウーマンラッシュアワーと肩を並べるほどの人気を博していたことの証明として有効といえるだろう。

そんな勢いづいている頃の流れ星を収録している本作だが、演じられている漫才はこれまでとまるで変わらない。悪い意味ではない。むしろ、自身の現状とは無関係に、常に安定したクオリティの漫才を生み出し続けることが出来ることの凄さを感じたい。……それにしても、この安定した「どうかしちゃってる」世界観はなんなのだろうか。ちゅうえいプロデュースの瀧上結婚式では相撲で負けた方がレンコンの入れ墨を入れられ、頑固一徹のラーメン屋にはミスチルが大好きな別れた女房との離婚届のサインが壁に飾られ、気が付けばちゅうえいは筋斗雲にぶら下がって「♪モンキーマジック」と歌いながら何処か遠くへ飛んでいく。「THE MANZAI 2013」直後はちゅうえいのギャグばかりが注目されていた感があるが、改めて、流れ星の本質は漫才にあるのだと再認識させられた。

とりわけ、どうかしていたのが『ペンション』。芸人を引退したらペンションを経営したいというちゅうえいの提案を受けて(どうでもいいけど、瀧上はこの提案をあっさり受け入れちゃっていいのか?)、二人でペンションを舞台にした漫才コントを繰り広げるという内容なのだが、とにかく逐一どうかしている。お客の瀧上が到着すると、ペンションのオーナーは濡れタオルでこけしを叩いている。理由は分からない。ペンションにはたまに、勝手に清水国明が入り込んでくる。中に入ると、バッファローとエゾジカと獣神サンダー・ライガーの剥製が。色んな要素が完全に渋滞を起こしている。……にも関わらず、これらの要素が全て集約されていくのだから、実に恐ろしい。何が恐ろしいって、ドラマチックな展開になっていくのに、まったく凄さを感じさせないところが恐ろしい。凄さをバカさ、下らなさが余裕で乗り越えていく。それが嬉しい。とても嬉しい。

特典映像には、ライブ映像を見ながら(と言いながらも殆ど見ないで)二人がトークする「ライブ反省会」と、全国各地の流れ星をかいつまんだ「全国ツアーオフショット映像」を収録。ちゅうえいのギャグ「謝謝」が生まれる瞬間、迷惑をかけた後輩芸人に対してブチ切れドッキリを仕掛ける瀧上、東京公演をまさかの人物が観に来ることが分かって驚愕するちゅうえいの姿などを楽しむことが出来る。これはこれで、また面白い。

なお、流れ星は2016年も単独ライブツアーを開催。タイトルは「新世界」。7月23日の東京・山野ホールでの公演を皮切りに、富山、埼玉、三重、岐阜、愛知、広島を巡り、9月4日に東京・かめありリリオホールで最終公演を迎える予定になっている。興味のある近郊在住の方は、覗きに行ってみるのも良いかもしれない。あ、でも、その前に、2015年の単独ツアー「☆街道」のDVDを……。 

■本編【68分】

「オープニング」「オープニングトーク」「漫才:結婚式」「企画ギャグチャレンジ1」「漫才:ラーメン屋」「企画ギャグチャレンジ2」「漫才:西遊記」「企画ギャグチャレンジ3」「漫才:ペンション」「企画ギャグチャレンジ4」「漫才:熱血監督」「企画ギャグチャレンジ5」「漫才:ギフニーランド」「企画ギャグチャレンジ6」

 

■特典映像【29分】

「ライブ反省会」「全国ツアーオフショット映像」