白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「バイきんぐ単独ライブ「クィーン」」(2015年9月30日)

2016年1月12日視聴。

一月アタマの三連休が容赦無く終了し、また退屈極まりない平凡な日常の中に放り込まれてしまった。「あの素晴らしい連休をもう一度!」と北山修のように叫びたいところだが、そうしたところでどうなるものでもないことは分かっている。今の私に出来ることといえば、真面目に仕事をしているフリをしながら、カレンダーとにらめっこするくらいのものである。どうやら次の三連休は三月らしい。ただただ待ち遠しい。

そんなことをうだうだ考えながら仕事をこなしていた日の夜に、本作を鑑賞した。『キングオブコント2012』王者・バイきんぐが、2015年7月2日~3日に東京・北沢タウンホールで開催した単独ライブの模様を収録している。彼ら名義の単独DVDがリリースされるのは、これで四回目。過去の作品はいずれもハズレなし。非常識でクレイジーな西村の世界観に巻き込まれながらも、的確で痛烈なパンチラインを打ち込む小峠のツッコミは常に鉄板の面白さ。

本作にもそういった笑いを期待していたのだが、今回は西村のクレイジーぶりがやや控えめ。会社を休んで海外旅行へ行くために父親が亡くなったことにしたり(『忌引き』)、全身迷彩服という衝撃的な格好で合コンに臨んだり(『コンパ』)、説教してきた上司の悪口を工事の作業音がうるさくて何も聞こえない状況下でこれ見よがしに叫んでみたり(『工事現場』)……それぞれ、少しヤバい空気を漂わせてはいるものの、ややインパクトに欠ける。一方で、小峠のビジュアル(ハゲ頭)に触れている場面が多く、結果として全体的にマイルドな印象を残した。ほのかに、下ネタを捨てたサンドウィッチマン、アングラを捨てたバナナマンを思い出す。これから、より大衆向けの笑いへと移行していくつもりなのだろうか。

そんな中、どういうわけか突出してクレイジーだったネタが『葬式』。コントの舞台は葬式会場だ。大往生を遂げた父親の葬儀で喪主を務めている小峠が、参列者の中でひときわ号泣している男を見つける。一体、どんな思いを胸に抱いて、これほどまでに涙しているのか。どうしても気になってしまった小峠は、思わず「父とはどういったご関係ですか?」と男に尋ねる。すると、男は「無関係です」「無関係の、赤の他人です」と衝撃的な答えを口にする。実は、男の正体は、葬式を見つけるとついつい参列してしまう“葬式マニア”だったのだ……。赤の他人の葬式に潜り込んで、何の思い入れもないのに号泣するというクレイジーぶりが既に素晴らしいが、このコントはここから更にクレイジーに加速していく。ネタバレになってしまうので詳細は書かないが、小峠が思わず「ダメになっちゃう! 一回ならいいけど、クセになるとダメになっちゃう!」と口にする衝撃の展開は必見だ。

本編を観終わったら、今度は特典映像だ。毎回、ライブの幕間映像を再編集したものが収録されているのだが、今回はバイきんぐの二人が遊園地に遊びに行く映像が収められている。メリーゴーランドを楽しむ西村と恥ずかしがる小峠、ファンの人に握手を求められる小峠と求められない西村、ゴーカートを運転する姿がおじいちゃんみたいな小峠など、和やかな映像がなんとも楽しいが、これまでにやってきたピクニックやキャンプに比べて自由度が低いため、二人の奔放なノリがあんまり出ていなかったのが残念。ただ、しゃぼん玉をばらまく魔法使い小峠が再登場したのは嬉しかった! こういう小峠のロマンチックな部分、もうちょっと世間に知られていい。 

■本編【47分】
「忌引き」「コンパ」「ラーメン屋」「工事現場」「面接」「拷問」「定食屋」「葬式」「マキガミ」

 

■特典映像【39分】
「幕間映像「はじめて2人で遊園地」完全版」
「エンドトーク&「クィーン」テレビCMの裏側」「「クィーン」テレビCM」