白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

『ザ・ギース コントセレクション「Pretty Best」』(2019年4月24日)

ザ・ギース コントセレクション「Pretty Best」 [DVD]

ザ・ギース コントセレクション「Pretty Best」 [DVD]

 

2019年1月28日に座・高円寺2で行われた結成15周年記念ベストネタライブを収録。

ザ・ギースは高佐一慈尾関高文によって2004年に結成された。当初は事務所に所属せず、フリーとして活動。オリエンタルラジオバッドボーイズ、ハリセンボンらが参加したオーディションバラエティ番組「ゲンセキ」に一般募集として出演している。その後、シティボーイズの事務所として知られるASH&Dコーポレーションに所属。2010年の公演『シティボーイズミックス presents 10月突然大豆のごとく』には、ラバーガールプロダクション人力舎)とともにゲスト出演を果たしている。日本一のコント王を決定する「キングオブコント」には第一回大会から参戦。2019年現在、三度の決勝進出を果たしている。

本作に収録されているのは、そんなザ・ギースが2015年から2018年にかけて行ってきた単独ライブより、選りすぐりのネタを再演した十本のコントである。ザ・ギースの映像作品がリリースされるのは、結成10周年に行われたベストライブを収録した『ザ・ギース コントセレクション「ニューオールド」』以来、およそ四年半ぶり。実力派芸人たちの単独公演が定期的にソフト化されている現状を思うと、この期間の長さは些か寂しいものがある。売れないのだろうか。売れなくても、存在を認知されるために出し続けるという手段もあるのではないか、とも思うのだが、それは流石に能天気か。

オープニングを飾るコントは『相方』。ピクニックに出かけた先で、尾関が高佐にこれまで黙っていたことを告白する。ザ・ギースの二人が揃ってピクニックに出掛けるというシチュエーションが既にちょっと面白いのだが、そこからの展開の運び方が如何にもザ・ギースらしい。コント師としての自らをコントの中で演じるという若干の反則感漂う設定も、またオープニングコントならではの軽やかさを感じさせられる。とても丁度良い。

これ以降のコントも、彼らが得意とするナンセンスな笑いが繰り広げられている。融資しようと考えている相手が本当に信頼できる人間かどうかを延々と試し続ける『合格』、医者ではなくミュージカル俳優になりたいという生徒の真意を確かめるために担任教師が現実の厳しさを(ミュージカルで)指南する『進路相談ミュージカル』、会社の一大事に慌ててやってきた同僚が謎の動物に襲われて明らかにゾンビ化し始めている『ワーク・オブ・ザ・デッド』など、二人の確かな演技力に裏打ちされた至高の悪ふざけを堪能することが出来る。

その一方で、暗転したままの舞台で行われる不思議な面接風景を描いた『暗闇面接』、ホテルのラウンジでお見合いしている相手の女性が自らの特技である瞬発力をアピールするために某筋肉番付で知られているアレを披露する『ショットガンの女』のように、舞台としての特異性を活かしたコントも。正直、仕掛けの面白さ以上の笑いは生み出せていなかったように思うが、この意欲的な姿勢は買いたい。

個人的に、印象に残っているのは『道程』と『ストロベリーチェリーナイト』。『道程』は、スーパーマーケットでお菓子を万引きした学生が、店員に連れられて向かったバックヤードへと向かうのだが、その異常に長い道のりを描いたコントである。淡々と舞台を歩き回る二人に色々な効果音が付け足され、こちらの好奇心を適度に刺激してくれる。オチの無茶苦茶なのに妙にしっくりくる塩梅も素晴らしい。対して『ストロベリーチェリーナイト』は、人生初のセックスを経験して浮かれている男の元へ童貞の化身がやってくるコントである。下世話の極致ともいえるような設定なのに、妙に感動的なオチで締めくくる……と思っていたところで、更に意外な展開がやってくるところが見事。あのオチは読めなかった。

ちなみに、彼らが「キングオブコント」決勝のステージで披露した、二本のコントはそれぞれ未収録(『ビフォーアフター』と『サイコメトリー』)。但し、2018年大会の二本目で披露する予定だったコント『エレベーターピッチ』は収録されている。最上階にある社長室へと向かうエレベーターを待っている間だけ、出資のためのプレゼンを許されたサラリーマンに思わぬ困難が待ち受ける。的確に笑いどころを作り込んでいるあたりに、本気で勝ちを狙いに来たことを感じさせる逸品だ。

これらの本編に加え、特典映像としてライブ終了後のエンドトークを収録。ライブ中に起きたことを二人がさらっと振り返っている。あのコントのあのシーンに謎のスローモーショーン編集が……!

・本編【71分】
「相方」「合格」「進路相談ミュージカル」「暗闇面接」「ショットガンの女」「道程」「ストロベリーチェリーナイト」「ワーク・オブ・ザ・デッド」「エレベーターピッチ」「バーにて」

・特典映像【2分】
「エンドトーク