令和元年の視聴覚室

平静を装いながら突き進め。

「バイきんぐ単独ライブ「ROYAL」」(2018年10月31日)

バイきんぐ単独ライブ「ROYAL」 [DVD]

バイきんぐ単独ライブ「ROYAL」 [DVD]

 

2018年8月9日・10日に品川区立総合区民会館きゅりあん小ホールで開催されたライブを収録。企画構成に小峠英二西村瑞樹西条充敏、渡辺隆(錦鯉)、我人祥太。『キングオブコント2012』でダークホース的存在だったバイきんぐが他の実力者を押さえて優勝を果たしてから、間もなく七年。今やバラエティ番組には欠かせない存在となった彼らだが、それでも年に一度の単独ライブは欠かすことなく継続している。バナナマンバカリズムサンドウィッチマンなど、多くの人気者たちが彼らと同様のペースで単独ライブを敢行しているため、もはやそれが当たり前であるかのように感じられてしまうが、これはとてつもないことなのである。新しいネタを作り、コンビで稽古して、彼らのネタを期待している観客の前で初めて下ろすなんて、そう易々とこなせるものではない。

そう。簡単に出来ることではない。そのため、多くの人気芸人たちは、年に一度のライブを重ねていくうちに、少しずつネタの精度を落としてしまうことが多々ある。テレビバラエティで求められる筋肉とネタを作るために必要な筋肉は違っているため、どちらかに偏ってしまうと、バランスが崩れてしまうのである。事実、安定して面白いネタを作り続けている印象を与えるバイきんぐにも、明らかにクオリティが低迷している時期があった。小峠のツッコミでコント全体を無理矢理に引っ張っているような、そんなパワーバランスの悪い時代があった。しかし、今は違う。今の彼らは、完全に……狂っている。どうかしている。正気を失っている。頭のネジを巻き過ぎて、すっかりバカになってしまっている。どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

例えば『昼下がり』というコントがある。パジャマ姿で寝っ転がってテレビを見ている小峠の家にやってきたのは、西村扮する訪問販売員風の男。ドアを開けて、中に招き入れると、男は一言目にこう叫ぶ。「宗教でーす!」。戸惑いながら「えぇ?」と聞き返す小峠に、男はまたも「宗教でーす!」と叫ぶ。満面の笑顔で。かなり、どうかしている。その後も、このハイな宗教勧誘の男と、戸惑いながらも落ち着いた対応を取り続ける小峠のやり取りが続く。「今日は宗教の勧誘に来ました!」「眩しいくらいに直球だね!」「最初に言っておきますが、宗教なんで多少お金はかかります!」「根掘り葉掘り言うね!」……。そもそも宗教の勧誘をコントのテーマに取り扱っている時点でかなり攻めている印象を受けるが、その内容もアグレッシブでスリリング。アングラで活動している地下芸人ならまだしも、バイきんぐレベルの芸人がこういったテーマを直球でネタにしていることに、妙な感動を覚えてしまった。

この他のコントも、やはりどうかしている。オープニングコント『池』では、西村が本能に任せて小峠の家の池の水を抜いてしまうし、『寿司屋』ではただ仕事として割がいいというだけで寿司屋で働いているために寿司職人としての修業を断ってしまうし、『コンビニ』には何の要求もせずに延々と「強盗だ!!!」と言い続けるクレイジーな輩が現れるし、『飲みの席』にはこれまたアウトローな人間が登場する。総じてヤバい。でも、たまらなく面白い。とりわけ、最後に披露されたコント『オフィス』は珠玉の作である。昨日、クビにした筈の西村が、何故かまた次の日もやってくる。とんでもない。だが、これが不思議と、さわやかな余韻を残す。狂っている彼らの姿に、日常の窮屈さから脱する自由さを感じてしまうためだろうか……否、だからといって、彼らのように成りたいとは思わないが。個人的には、ちょっとシティボーイズの超名作『漂流商事』を思い出した。

これら本編に加えて、特典映像としてライブの幕間映像『はじめて2人で海キャンプ』の完全版を収録。西村が企画したイベントに小峠が振り回される、お馴染みの映像である。もはや単独ライブの定番となっているのだが、毎回、西村以上にはしゃいでいる小峠の姿が笑えて仕方がない。往年の『ウンナンの気分は上々。』を思わせる。地上波でも十分に耐え得るクオリティだと思うので、どっかのテレビ局で取り上げてもらえないだろうか……。

■本編【63分】
「池」「カフェ」「寿司屋」「CAFE」「コンビニ」「建築現場」「マッサージ」「飲みの席」「昼下がり」「オフィス」

■特典映像【31分】
「幕間映像「はじめて2人で海キャンプ」完全版」
「エンドトーク