土曜深夜の視聴覚室

Saturday midnight audio-visual room.

「bananaman live Super heart head market」(2018年2月7日)

bananaman live Super heart head market [DVD]

bananaman live Super heart head market [DVD]

 

2017年8月10日から13日にかけて俳優座劇場(東京)で行われたライブを収録。

「心さーん! 昔はよく出てきてましたけど、最近はずっと頭さんばっかですねーっ!」。お馴染みのフォークデュオがライブステージを展開するコント『赤えんぴつ』で“おーちゃん”がこんなことを言っていて、なんだか胸に刺さってしまった。とあるお店の店員から少しイヤなことを言われてしまって傷ついたという“ヒーとん”の話を聞いて、心と頭の関係性を説きながら、傷ついたときに心で思ったことをそのまま店員にぶつければ良かったんだよ、とアグレッシブな言葉で説明するおーちゃん。その最中に、おーちゃんがヒーとんの胸倉に向かって、前述した言葉をぶちまける。分かる。確かにそうだ。心で思ったことをそのまま言葉にしないで、それどころか、心にもない頭の中で考えただけの言葉ばかりを口にすることの、なんと多いことだろう。それが大人になることだし、逃れられないことだとは分かっているけれど。この後のおーちゃんの台詞がまたスゴいのだが、ここには書かない。見て。

思えば、オープニングコント『voice from the haeart』からして鮮烈だった。友人の日村のことを「こいつといると楽なんだ」「なんにも考えなくても付き合える掛け替えのない存在」と思っている設楽に対し、当の日村は「こいつの期待を裏切ってはならない」という強迫観念に捉われている。掛け替えのない二人の掛け違った関係性。その後、設楽のちょっとした発言に対し、決して期待を裏切らない返事が出来るように必死になって考える日村の姿は、とても面白い。心の声を表したモノローグだけでも面白いのに、それを表情で巧みに表現する日村の演技が凄まじい。でも、その状況ほどではないにしても、日村にとっての設楽のような人間が自分にもいるよなあと考えると、その必死さが一転して、切なく感じられてしまう。その時、本心は何処かに行っている。心の声は聞こえてくるのに、心は何処かに行っている。

Air head』も印象的なコントだ。同じ職場で働いている先輩・日村の作業が遅れているため、残業に付き合わされている後輩・設楽。そんな最中、日村から飴を貰ったので、食べようとすると「それ手作りなんだよ」と言われ、思わず不快感を表情に出してしまう。実は、その飴は日村がタクシーのおじさんから手作りと聞かされて受け取った飴だったのだが、日村は設楽が不快な表情を浮かべていたことが忘れられず……。その後、どこまでもダメな発言を続ける日村。どうでもいいことに引っかかって、自分の仕事を手伝ってくれている後輩に愚痴をこぼしている姿は、どうしようもなくみっともない。けれど、それでも、日村が「俺の方が真っ当だよ!!!」と大声を張り上げる姿に、ダメな人を見る目で笑いながらも、目じりにうっすらと涙のようなものが浮かんできてしまう。ああ、分かる。分かるんだよ。そんなことを言ってたら世の中を渡り歩いていけないけれど、でも、分かるんだよ。おしっこの入った検尿のカップにパーカーのヒモが入ってて慌ててしまう瞬間は、きっと誰にでもある。

ああ、こんな気持ちになるような大人になるつもりはなかったのに、いつの間にやら共感の坩堝に迷い込んでいる。心の中で思ったことを言葉に出来ずに、頭で考えた最も適切な言葉を吐き出して、いつの間にやら心は何処かに隠れている。そんなこと、自覚せずに生きていたのに、よもや芸人の単独ライブをきっかけに思い出すことになろうとは。勿論、生きていく上で、心にはちょっと引っ込んでいてもらわないといけない場面は少なくないけれど、それでも心を殺さないように気を付けないといけないなあと月並みな感想で本文を締め「おちんちん侍!」「「「「おちんちん侍!!!」」」」

■本編【147分】

「voice from the heart」「Air head」「罰」「different container」「アルフレッドとベン」「何でだ!」「ワニワニパニパニゲーム」「赤えんぴつ」「一番面白いパンストを探そう」「Incident in the mountain」