白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「にちようチャップリン」(2018年5月6日)

  • レインボー【82点】

「人を愛するということ」。初めて自宅に招き入れた職場の後輩は、彼女の失敗を全て「愛すな~」と言いながら受け入れてしまうステキな男性で……。初見。いわゆるボケとツッコミの関係性を見せるコントではなく、日常に起こり得る失敗をまったく咎めることなく受け入れていく実方の演技が笑いを生み出している。その姿は異常でもなければ風刺でもない、シンプルにコミカルで楽しい。コントというよりもハートフルコメディを見ているような感覚に近いかもしれない。ネタ後のトークで「『お金がない!』の時の織田裕二を参考にしている」と語っていたが、まさにその世界観を再現しているといえるだろう。ソフトな感触は昨今のコンプライアンス重視の流れに適しているが、個人的にはもうちょっとパンチが欲しいところ。

  • 宮下草薙【76点】

「漫才:ハワイ旅行」。先輩からハワイ旅行へと誘われた草薙だが、どうして自分が選ばれたのかが分からないため、徐々に不安が募っていく。初見。面白かった。どうしてハワイに誘ってもらえたのかを不安に感じているだけではなく、ハワイではないところへと連れていかれるのでは……と妄想を繰り広げるところなどはたまらなかった。「俺、珍しいカブトムシよりは、高いと思って生きていたい……!」という台詞のバカバカしさよ。フリートークでも結果を残していて、売れる予感しかしなかったが、点数はあまり伸びず。終盤、予定調和の展開になったことで、やや失速していたのが影響したのだろうか。

「漫才:ちょうどええ」。歌っている最中にむき出しになる小堀の歯ぐきイジりを経て、クイズ「ちょうどええ」へ。ただ小堀の歯ぐきが出ている・出ていないのやり取りだけで笑いをかっさらってしまう様は流石ベテランといったところ。そこにダメ押しで安定感バツグンのフォーマットネタ「ちょうどええ」を重ねてくるのだから、そりゃウケて当然というものだ。実際、かなり面白かったのだが、とはいえ若手たちが競い合う場において、彼らレベルのベテランが出てくるのはどうなんだろうかと思わなくもない。

「漫才:フラれた友達を慰める」。夕焼けに包まれながら、フラれた友達を慰めるシーンを再現しようとするのだが、「女なんて星の数ほどいるよ!」という台詞に対するかーしゃのツッコミが止まらなくなってしまい……。番組でも紹介されていたように、漫才の中に雑学が盛り込まれていて、それが彼ら自身の個性になっている。ただ、少なくとも今回のネタに関しては、雑学の意外性がそれほど笑いに繋がっていないように思えた。雑学を取り入れるように決めていることで、むしろ漫才師としての可能性を抑え込んでしまっているところもあるのかもしれない。それはそれとして、以前に比べて、かーしゃのボケとしての佇まいが、ウド鈴木っぽくなっていたような。浅井企画の空気に染まってきたのだろうか。

「漫才:オムライス」。色んな卵料理の中でもオムライスが好きな二人だが、オムライスにかけるものがケチャップとデミグラスソースで対立し……。以前のヤーレンズは、漫才とは少し違ったとりとめのない雑談を繰り広げるスタイルを取っていたが、今回のネタはきちんと漫才の枠内に収まっていて、人は変わるものなのだなあと妙にシミジミとしてしまった。結果、ヤーレンズらしさが少し薄まってしまったが、漫才としてはシュッとキレイに収まったものになっていたように思う。卵料理ランキング・天国地獄大地獄のくだりも良かったが、なによりオチが美しかった。こういうオチをしれっとやってのけるところがまさにスタイリッシュ。「ケチャップの最後(の音)で悔しがるなよ!」。

  • 小島よしお【82点】

「クラシックミュージカル 浦島太郎」。童話「浦島太郎」のストーリーをクラシックの名曲に合わせてミュージカル風にお送り。一見、強引にクラシックと童話を織り交ぜた力技にしか見えないが、クラシックの選曲と台詞回しのボケはきちんと相性が良い。特に乙姫のくだりはあまりにもバカバカしくて声を出して笑った。通常のコントとして見ると足りないものばかりだが、その至らなさが小島よしおの場合は強みになっていて、その辺りを自覚的にこなしているという印象。クレバーだなあ。

「コント:コンビニ」。始めたばかりのバイト先のコンビニの店長は、どんな嘘も失敗も「だいじょぶだいじょぶ~」と全て受け入れてしまう人だった。とりあえず、小島よしおの後にこの台詞が軸のネタというところに、引き運の良さを感じた。或いは、小島が出演する回だと知った上で、このネタをぶつけたきたのだろうか。そういう勝負勘はありそうだが。ネタそのものに関しては、和田まんじゅう演じる店長のコミカルなキャラクターが魅力的ではあったけれども、それ以外の部分はかなりコントとして手堅い作りになっていて、意外性という意味では弱かったかも。机を飛び越えるシーンは笑った。

1位の2丁拳銃、2位のネルソンズが勝ち上がり。

【次回の出場者】

だーりんず
大自然
東京ホテイソン
トム・ブラウン
流れ星
マツモトクラブ
LOVE