白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「トンツカタン単独ライブ「トンツカタンⅠ ~君の笑顔の為だけに~」」(2017年10月25日)

トンツカタン単独ライブ「トンツカタンI~君の笑顔の為だけに~」 [DVD]
 

2017年7月21日・22日にユーロライブで開催された単独ライブの模様を収録。

トンツカタンプロダクション人力舎所属のトリオユニットである。菅原好謙櫻田佑が組んでいたコンビに、森本晋太郎が加わる形で2012年に結成された。ユニット名は櫻田の兄が命名したもので、特に意味はないという。スクールJCA21期生。同期にはおとぎばなし、ヤマグチクエストなどがいる。

私がトンツカタンのことを知ったのは、とあるテレビのネタ番組。所属事務所も活動遍歴も知らずに彼らのコントを視聴したのだが、これがやたらと面白い。その後もいくつかネタを観て、これは完全に面白いトリオだという認識を取るようになった。そんな折に発表された、単独ライブのDVD。念願と言っても過言ではない。これは間違いなく面白いのだろうと期待に胸を膨らませて購入、鑑賞したところ……これが予想外の肩透かし。こちらが期待し過ぎていたのかもしれないが、それにしたって、まるで満足感が残らない出来映え。ただ、つまらなかったのかというと、そうでもない。これが難しい。一番扱いにくいタイプの作品である。つまらなくないのに物足りない。

本作の問題点を端的に言葉にするなら「単独ライブに特化し過ぎている」ところにある。前説をテーマにしたコント『魔王』、変化球タイプの歌ネタ『曲にするわよ』、コントと映像を掛け合わせた『自供』、コントの世界を超えたメタ視点を笑いに昇華している『リアリティ』など、ネタ番組に掛けられるような一本立ちしていないコントがやたらと多い。無論、単独ライブなどというものは芸人にとっての独壇場なので、基本的には何をやってもいい。しかし、数々のコント師を世に送り出してきた芸能事務所において、次世代を担うホープとして注目を集めているトリオが、第一弾を冠した単独ライブにおいて本来の魅力的なネタよりも一回こっきりであろう離れ業のようなネタに特化するというのは、ちょっと本来のトリオとしてのベクトルと違うのではないかと。ことによると、単独ライブということを意識し過ぎて、うっかり空回りしてしまったのかも……って、どんだけ忖度しているんだ私は。

……と、このようなことを書いてしまうと、ちゃんとしたコントをまったくやっていないのではないかと思われそうだが、一応、きちんと面白いネタもある。初めての客が相手だったとしても、まるで常連客のように接するサービスの居酒屋を『居酒屋』と、出された料理を口にするたびに何かと感動を覚えてシェフを呼び出す客に翻弄される様を描いた『シェフを呼んで』である。この二本は切り口も良かったし、展開も魅力的だった。特に『シェフを呼んで』は、レストランの落ち着いた雰囲気と丁寧に積み重ねられていくバカなやり取りのギャップがとても面白かった。オチの切れ味も見事。ただ、その一方で、このご時勢にTHE ALFEEをモチーフとしたコント『誕生秘話』みたいなネタも。2010年代も終わりが見え始めているというのに、まだTHE ALFEEは擦られるのか……。

これらライブ本編に加えて、特典映像としてメンバーがセレクトしたベストネタ四本を収録。ネイティブな英語で周囲から浮いてしまう帰国子女のために、あえてカタコトの英語を勉強させる塾の授業風景を描いた『カタコト塾』。女友達の部屋に“G”が出てきたというので、夜中にもかかわらず呼び出された青年が目にした“G”の正体は……『G』。友達に連れてこられた秋葉原のカフェは、昔ながらのオタク風の店員から接客を受ける店だった!『アキバ系カフェ』。ベンチに座ってイチャイチャしているカップルが、お互いの変化について「気づいた?」と質問し合うのだが、その内容があまりにもエグくて……『気づいて』。いずれ劣らぬ傑作揃いである。『カタコト塾』『G』『アキバ系カフェ』は以前にネタ番組で視聴したことのあるネタだったが、当時と変わらない面白さだった。これだけのコントを作ることが出来るのに、どうして本編であんな感じになってしまったのか。

なお、トンツカタンは2018年3月にユーロライブで単独ライブ「トンツカタンⅡ ~さよなら さよなら こんにちは~」を敢行済。現在、こちらのソフト化は予定されていないようなのだが、どうなるのだろうか。ナンバリングを付けているのだから、続けてリリースしてほしいところではあるのだが。

◆本編【74分】

「魔王」「居酒屋」「卒業アルバム①」「誕生秘話」「卒業アルバム②」「曲にするわよ」「ザコYouTuber①」「自供」「シェフを呼んで」「ザコYouTuber②」「リアリティ」「菅原脚本 みなさまへのおたのしみVtR」「覚えてろよ」

◆特典映像【12分】

「カタコト塾」「G」「アキバ系カフェ」「気づいて」