土曜深夜の視聴覚室

Saturday midnight audio-visual room.

「映像コントアワード2017」の件。

どうも、菅家しのぶです。

若林正恭(オードリー)と南沢奈央の熱愛報道で日本中が湧き上がっている最中に、海は枯れ、地は裂け、あらゆる生命体が絶滅したかに見えた世界を可視化しているような場末のブログを見に来るような暇人もそうはいないだろうと思いますが、ご報告させていただきます。

先日、某所で開催された【映像コントアワード2017】におきまして、受賞作品に解説文を寄稿させていただきました。そうです。一昨年にやっていたアレです。同賞は、デジタルコンテンツに特化したお笑いカンパニーであるCarrot Inc.が設立したもので、映像コントの普及と発展を目的としております。今回も私は選考には携わっておらず、事前に選ばれた作品にコメントを付け加えるというカタチでの参加となりました。

前回選ばれた作品は玉石混交といった印象で、素直に「面白い!」と感じた作品がある一方で、「これはどういう意図で作られた作品なのだろう……?」と本気で頭を抱えた作品もありました。しかし今回は、以前に比べて多少のクオリティの向上が見られ、なかなかに楽しませていただきました。とはいえ、やはりそのやる気を粉砕しかねない批判をブチかますというのは酷だろうということで、今回もかなりソフトな解説文となっております。麦は踏まなくても育つのだ。

というわけで、今回も受賞作品と解説文を以下に用意しました。年末年始のこってりとしたバラエティにそろそろ飽きてきた身体に、一種の骨休み的な意味合いで触れてみては如何でしょうか。あと、余談として、今回ちょっと個人的に好きだった作品について、本記事の最後に改めて紹介したいと思います。はい。

 

【最優秀作品賞】映像コントとして総合的に優れた最優秀作品に贈られる賞。

◆プリズン/Mr.Party

常識という言葉を安易に使う人間がいる。そういう人は、例えば、相手が間違ったことをしていたときに「常識的に分かりそうなものだ」と言ってしまう。よくあるシチュエーションではあるが、果たして、それは本当に世間一般に通じるほどの言説なのだろうか。本編の主人公はごくありふれた行動を犯罪行為とみなされ、なんと牢獄に捕らえられてしまう。その世界の中で、彼は非常識ということになる。だが、それを見ている私たちにしてみれば、彼を恐れる周囲の人たちこそ非常識に思える。つまり、このコントは常識の曖昧さをテーマにしている……かどうかは、知らない。

 

【優秀作品賞】映像コントとして総合的に優れた作品に贈られる賞。

◆わかってへん/neenu

 口うるさく責め立ててくる恋人の唇を強引に奪って、黙らせてしまう……恋愛ドラマにありがちなシチュエーションである。平々凡々な人生を歩んできた私には、とても出来ない行為である。否、この世の中に存在する恋人同士の中でも、こんな状況を成立させてしまえるような彼氏彼女なんて、そうはいないだろう。そんな特殊なシチュエーションの、一見するとロマンティックな行動の異常性を浮き彫りにしている本作。お察し通りのオチではあるが、なんともいえない画の強さになんだか引き込まれてしまう。

 

◆新人にて候/ウゴォオ

 例えば、テレビで芸人が演じているコントの中で、多くの人がそれを異常であると感じさせるような人物が出てきた場合、そのコントの登場人物たちは「なんだお前は!?」というような反応を見せる。しかし、現実の世界において、そういった人物と遭遇してしまった場合、そのように反応してみせることは難しい。その異常性は指摘されることなく、それでいて鳴りを潜めることもなく、淡々とその存在を主張し続ける。この、なんともいえない、つかみどころのない空気感。たまらない。

 

【映像賞】映像効果をお笑いに昇華した秀作に贈られる賞。

 ◆本日の料理/Mr.Party

 テレビの情報番組などを見ていると、最新の調理器具が紹介されていることがある。これが妙に面白い。普段、料理を作ることなんて殆どないのに、ついつい興味を持ってしまう。陳腐な言い回しになってしまうが、まるで魔法のように料理が出来上がっていくのである。自分が知らないうちに時代というのは進歩していくものなのだと、実感させられる瞬間だ。電子レンジが異常な働きを見せている本作品の滑稽さの根本には、そんな知らず知らずのうちに起きていた調理器具の進化を見据えた視点があるように思う。それはそれとして、コントとしてシンプルに優秀な作品でもある。手堅い三段オチの構成に、出てくる料理の画の説得力、出演者の演技など、笑いの面で評価すべき点が多い。

 

【コンテクスト賞】現代またはグローバルな事象への批評をお笑いに昇華した秀作に贈られる賞。

◆移住命令/Mr.Party

 こういう未来は実際に起こり得るだろうと感じた。能力の優劣が反映されない、ただクネクネと踊り続けていればいいだけの世界。それは、ある意味ではとても理想的だけれど、余計なことの出来ない不自由な世界でもある。ああ、なんというディストピア。……しかし、これは客観的に見ているから感じられることであって、世界がそういう方向へと進んでしまったとき、果たして私たちはその異変に気付けるのだろうか……。

 

【お笑い賞】お笑いとして本質的な面白みのある秀作に贈られる賞。

囲碁/neenu

 基本的に人間は集団で行動する生き物である。知恵を使い、集団を率いて、鋭い牙を持つ猛獣や大きな体を持った巨大生物たちと対抗してきた歴史的背景によるものだろう。知らんけど。で、あるからして、恐るべき頭脳の持ち主である相手に集団の力を用いて戦いを挑んでいる本作品の構図は理に適っているといえる。無論、このような試合は、本来ならば有り得ない。競技にはルールがあり、それを守ってこそ成立するからだ。とはいえ、その守るべきルールをあえて破り、ワチャワチャと盛り上がっている様子はとても楽しそうで、こちらもなんだかニヤニヤしてしまった。

 

【ドラマ賞】ドラマ性をお笑いに昇華した秀作に贈られる賞。

◆タラレバ闇娘/neenu

 どんなに恵まれているように見える人でも、多かれ少なかれ現状に対して不満を抱いているものである。そして「~たら」「~れば」と理想とする状況を夢想する。だが、その不満の度合いを更に超えてきた人の話を聞いてしまったら……ある意味、よくあるマウンティングのシチュエーションではあるのだが、本作品では極端に表現することでドープな笑いへと昇華されている。その上で、なんともいえない味わいのオチ。なるほど、確かにドラマチックである。

 

【名演賞】キャラクターの作り込みおよび優れた演技の出演者に贈られる賞。

アイデンティティ/Mr.Party(北高校番長役 KEI)

 不良というのは、文字通り良くない人のことを示している。社会的に禁じられている行動を取り、世間に背いている。だからこそ、不良のアイデンティティ固執している彼らの言動は、逆に不良のあるべき姿から逸脱している。だが、上下関係や交友関係に厳しいという現実の不良の社会にしても、案外似たようなところはあるのかもしれない。本作品は、そんな不良の矛盾した滑稽さを炙り出した作品といえるだろう。出演陣のメリハリある演技(特に北高の番長を演じているKEI氏の切り替わり)も良い。

 

【ショート作品賞】映像ショートコントとして総合的に優れた秀作に贈られる賞。

◆もしもスパイダーマンが現実にいたら/Mr.Party

 誰もが知っている名作『スパイダーマン』を“現実にいたら”と称しながら、ドイヒーな状況へと追い込んでいくパロディである。ひとつひとつのネタはややベタに寄っているものの、ブリッジに使われている「スパイダーマンのテーマ」で落とされてしまう強引さが妙な可笑しみを引き出している。ところで、刑務所に入るとケツを掘られるというのは、その界隈では共通の認識なのだろうか。実に恐ろしい。

 

【特別賞】これまでの枠組みにはない秀作に贈られる賞。

◆クソYouTuberお菓子レビュー/neenu

 一見すると、ありがちなYouTuberの退屈なお菓子レビュー動画なのだが、カメラの向きを変えてみると、まったく別の状況が見えてくる……という作品だ。正直、360度カメラの機能を完璧に使いこなせているとまではいえないが、コメディ動画の新しいカタチを作り出すための実験作であることを考慮すると、評価すべきところもあるように感じられる。今後の進化に期待したい。

 

【翻訳賞】翻訳した映像コントの秀作に贈られる賞。

◆俺、脚折れてるから!/Smosh(翻訳:Carrot)

 足の骨を折られた被害者が、足の骨を折った加害者の反省する気持ちを利用して、ムチャクチャな要求をする。ありがちな設定ではあるが、要求する内容があまりにもムチャクチャで笑ってしまった。なんでカウチがイヤなんだ。床の方がよっぽどイヤだろ。それで最終的に椅子の上ってどういう神経しているんだ。……このあたりの理解不能なところも、海外の人間ならではのハイテンションな演技でまんまと納得させられてしまった。うーむ。

 

【余談】

受賞作品の中でも、突出して面白かったのが「本日の料理」。リズミカルな編集とツッコミの切れ味、なによりしっかりと段階を踏んでいるボケが素晴らしい。お笑いの作り方をきちんと理解している人が作っていることがよく伝わってくる。ちゃんとしたスタジオで撮影しているのも嬉しい。画にリアリティがあるからこそ、こういうナンセンスな笑いが映える。現代的な視点を感じるという意味では「タラレバ闇娘」も面白かった。表現を誇張しているおかげで笑いに昇華されているものの、格差社会が広がれば、本当にこれくらいお互いの認識に差が生じるのではないか。その上で、ああいうオチに転がってしまうというのも、皮肉めいていて良かった。

 

こちらからは以上です。最後までありがとうございました。