白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「和牛 漫才ライブ2017 ~全国ツアーの密着ドキュメントを添えて~」(2017年11月15日)

和牛 漫才ライブ2017~全国ツアーの密着ドキュメントを添えて~ [DVD]

和牛 漫才ライブ2017~全国ツアーの密着ドキュメントを添えて~ [DVD]

 

2017年8月から10月にかけて、全国9都市を巡るライブツアー「和牛がチャンピオンになるための全国ツアー」を敢行した和牛が、同年6月に沼津ラクーンよしもと劇場でDVD収録用に開催したライブの模様を収録。また特典映像として、全国ツアーの舞台裏の模様がドキュメンタリー風に編集されて収められている。

◆本編【65分】

「なぞなぞ」

「ドライブデート」

「宇宙人」

「結婚式」

「ロボット」

「カツ丼の歌」

おっぱい星人

「オネエと合コン」

ティッシュ配りの女の子」

「花火デート」

◆特典映像【30分】

「「和牛がチャンピオンになるための全国ツアー」の舞台裏にカメラが潜入! 普段見ることのできない和牛の素顔にせまる!」

本編では11本の漫才が演じられている。幕間映像を挟み込まないシンプルな構成は、彼らのネタに対する自信の表れなのだろうか。事実、どのネタも完成度が高い。が、とりわけ「M-1グランプリ2015」決勝戦で披露された『結婚式』、「M-1グランプリ2016」敗者復活戦で披露された『手料理』、同大会決勝戦・一回戦で披露された『ドライブデート』、同大会決勝戦・最終決戦で披露された『花火デート』は圧倒的な面白さを見せつけている。『花火デート』で二人が必死になって蛙を探し回っている姿は、何度見ても笑わずにはいられない。無論、それはネタそのものの完成度が高いばかりではなく、彼ら自身が飽きることなく、それらのネタと真正面から向き合い続けている証明に他ならない。芸人がネタに飽きてしまった途端に、そのネタの鮮度は急速に落ちてしまうからだ。

M-1グランプリ2017」決勝戦で披露された漫才『ウェディングプランナー』『旅館の仲居』はそれぞれ未収録。但し、その予兆を感じさせるネタは見受けられる。『ロボット』がそれだ。漫才の舞台は未来の電器屋。なんでも家事をこなしてしまう最新型のお手伝いロボットを購入した川西が、水田演じるご説明ロボットからお手伝いロボットの起動方法から使用方法、モード設定などに関する説明を受けるのだが、その内容がところどころおかしい。とはいえ、一通りの説明を受けた川西は無事にお手伝いロボットを自宅へ搬入、友人の水田に見せびらかそうとするのだが……。前半と後半で水田が別人を演じてみせる構成は、『ウェディングプランナー』のそれを思わせる。視覚的面白さを想像させるくだりも多く、このネタをM-1決勝でかけられていたら……という気がしないでもないが、流石に九分近いネタを半分以下にまとめるのは難しいのだろう。

この他、印象に残っているのが『おっぱい星人』。いわゆる“おっぱい星人”な川西が地球の滅亡を目論んでいる宇宙人と遭遇するのだが、「地球人以外に手を出す気はない。お前は“おっぱい星人”なんだろ? 自分の星へ帰るがいい!」と勘違いされてしまうネタなのだが……終始一貫して“おっぱい星人”を異星人だと勘違いし続けている宇宙人の立ち振る舞いもさることながら、おっぱいの魅力について止め処無く語ってしまう川西の普段のイメージとのギャップがとてもバカバカしく、延々と笑い続けてしまった。……ちなみに、本編には川西がシンプルに異星人と遭遇する『宇宙人』というネタも収められていて、このネタが『おっぱい星人』のちょっとしたフリのようになっているので、視聴する際には合わせてご覧いただきたい。

……というわけで、和牛といえば男女のコミュニケーションに軸を置いたネタを得意としているイメージが浸透しているように思うのだが、実はSF的な設定も得意なのではないかという期待が自分の中で膨らみつつある。『ロボット』にせよ、『おっぱい星人』にせよ、その舞台や状況は未知との遭遇であり、それを川西というツッコミ役を通じて体感するように作られているからだ。現在、そういう設定はハライチが得意としているが(2017年の敗者復活戦で披露していた『未知の生命体が身体に寄生する』は名作!)、その方面に切り込んでいくと、また新たな道が開けるのではないか……という予感がしている。とりあえず、来年のM-1に期待したい。

あ、そうだ。よいお年を!