土曜深夜の視聴覚室

Saturday midnight audio-visual room.

「脳みそ夫単独公演「こんちわ~すクラブ」」(2017年10月18日)

脳みそ夫単独公演「こんちわ~すクラブ」 [DVD]

脳みそ夫単独公演「こんちわ~すクラブ」 [DVD]

 

2017年6月29日・30日に新宿ハーモニックホールで開催された単独ライブの模様をDVD用に再演した映像を収録。“OL聖徳太子”“ちびっこ石油王”“アラサー武士”など、様々なキャラクターに扮した脳みそ夫のパフォーマンスを楽しめる一枚となっている。

◆本編【56分】

モーツァルトの給食当番」

 VTR「オープニング」

「ちびっこ石油王」

「ちびっこジョンレノン」

 VTR「脳みそ夫の歴史」

「アラサー武士」

「アラサー縄文人

 VTR「どんなシチュエーションでも脳みそ夫コンボ」

「名とん偵ブタ美」

 VTR「脳みそ夫グッズCM」

「くだもの子」

「ムチムチニワトリ」

「フライドチキ子」

「パリピ☆一休」

 VTR「パリピ☆一休の裏話」

「OL聖徳太子

「OL聖徳太子・リズムVer」

脳みそ夫はタイタン所属のピン芸人である。かつては脳みそだけになってしまった相方と漫才を披露する「脳みそ漫才」というネタを演じていたが、数年の時を経て頓挫。「武士」「石油王」「聖徳太子」などをモチーフとしたキャラクターを演じる一人コントへとシフトチェンジ、その妙に愛くるしい存在感と浮足立った佇まいで人気を博している。ちなみに、本作のタイトルにもなっている「こんちわ~す」は、脳みそ夫が登場時に使用するギャグである。何故かネタの笑いどころで観客のウケが弱いときにも使用されるため、その滲み出る不安が笑いへ昇華されることも少なくない。……それでいいのか、と思わないでもないが、面白いのだから仕方ない。

脳みそ夫のコントの魅力は、そのシンプル過ぎる笑いの取り方にある。先述しているコントのタイトルを見ても分かるように、脳みそ夫が演じているキャラクターたちは、基本的には「モチーフとなっている題材×設定」という構図の元に作られている。例えば、『モーツァルトの給食当番』は「モーツァルト×給食当番」、『ちびっこ石油王』は「石油王×ちびっこ」というように。その結果、彼のコントにはまったく無関係のもの同士を掛け合わせることによって生じる、揺るぎない違和感が生まれる。しかし、そんな違和感に満ちたコントの中で、題材が上手く組み込まれる瞬間がある。それぞれにズレている筈の要素同士がピタッと噛み合うことで、笑いが生み出される。その笑いの取り方は、まったく無関係な言葉同士の共通点を思わぬ角度から見出す“掛け言葉”に似ている。或いはダンディ坂野ジョーク集か(ダンディ坂野のネタを知らない人は『爆笑オンエアバトル Light ダンディ坂野』を見よう!)。

正直、ネタのクオリティに関しては、そこそこの波がある。思わぬ切り込み方に驚きと感動を覚えることもあれば、あまりにもベタでありがちなボケに苦笑いが止まらなくなってしまうこともある。ただ、その笑いは一貫してシンプルで、まったく深みが感じられない。そこへ更に、あのビジュアルがある。脳みそ夫がコントを演じるときの恰好は、そのネタの浅さに対して、無闇にクオリティが高い。一見して、そういうキャラクターに扮しているということが伝わってくるほどに、しっかりと画としての強さを保っている。だからこそ、脳みそ夫のコントは見ている側の負担となる部分が少なく、疲れない。それこそが脳みそ夫の強みであり、心地良さであるように思う。

そんな脳みそ夫のコントが詰め込まれている本作は、何処を切っても彼特有の魅力で溢れている。大金持ちなやんちゃボーイ『ちびっこ石油王』が気ままに中小企業を潰したかと思えば、彼の友達の『ちびっこジョンレノン』がヨーコとの関係性を勝手にイマジンされることに腹を立てる。戦をサボッて女子会を繰り広げる『アラサー武士』たちが居たかと思えば、『アラサー縄文人』が土器と土偶にまみれた日々に愚痴をこぼす。……単独ライブならではの巧みに練り上げた構成がなんともいえない。個人的には、謎のニワトリ集団が己のムチムチぶりを見せつける『ムチムチニワトリ』からの、あの白い髭がトレードマークのキャラクターの娘・カーネルド―タースが秘密の恋人ドナルドとの日々をつづる『フライドチキ子』への流れがたまらなくアホで好きだ。内容もさることながら、タイトルの字面から漂うアホさがとても良い。

生き馬の目を抜くお笑い界における清涼剤のような笑い。否、それを良いと感じてしまうのは、この荒涼とした世の中もまた生き辛く、息が詰まるような空気が蔓延しているためだろう。そして、それこそが芸人の本質、お笑いの本来の形であるといえなくもない……こんちわ~す。あー、下らねェ。