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「ベストネタシリーズ アンジャッシュ」(2017年8月23日)

ベストネタシリーズ アンジャッシュ [DVD]

ベストネタシリーズ アンジャッシュ [DVD]

 

爆笑オンエアバトル」五代目チャンピオンの称号も懐かしいアンジャッシュが2007年から2011年にかけてリリースしてきたDVDより、十二本の珠玉のコントを選び抜いたベストセレクション。収録内容は以下の通り。

◆本編【99分】(カッコ内は収録元のDVDタイトル)

「結婚のあいさつ」(「ネタベスト」)

「スポンサー」(「ネタベスト」)

「ピーポーくんの交通安全教室」(「ネタベスト」)

「軍隊」(児嶋一哉ソロコントライブVOL.1「タンピン」)

「感動エピソード」(「キンネンベスト」)

「診察の結果」(「キンネンベスト」)

「社員旅行の写真」(「キンネンベスト」)

「誕生パーティー」(「キンネンベスト」)

「社長のイス」(「キンネンベスト」)

「借金取り」(単独公演「五月晴れ」)

「名門学校でお笑いライブ」(単独公演「五月晴れ」)

「浮気相手の誕生日サプライズ」(単独公演「五月晴れ」)

あくまでもレーベル内でリリースした作品に限定されているため、初期の傑作がことごとく未収録なのが非常に残念でならない。例えば、『息子と部下』だとか、『それぞれの会話』だとか、『桃太郎』だとか……その辺りの傑作群が入っていれば、本作はまさしくオールタイムベストと呼ぶに相応しい作品になっていたことだろう。まあ、贅沢を言い出せばキリがないし、その点に関しては諦めるしかない。

とはいえ、ネタのクオリティは安定して面白い。人形用に録音された音声がグチャグチャにこんがらがってしまう『ピーポーくんの交通安全教室』、医者と看護士の雑談を自身の診察に関する話だと勘違いした患者がひたすら一人相撲を取り続ける『診察の結果』、社員旅行で撮影された写真を見ながら電話で説明を受けているのだが受話器の向こうとこちらで写真を見る順番が逆になってしまい……『社員旅行の写真』など、どのネタも不変的に面白い。『ピーポーくんの交通安全教室』に使われているピーポーくんの人形が何故かCG処理されていたのは、当時も今も気になったが。通常、コントで使っている人形に、何か問題でもあったのだろうが、だからってCGで誤魔化さなくても……。最後を長尺コント『浮気相手の誕生日サプライズ』だったのも良かった。やはり長めのネタが最後に来ると全体が締まる。

それはそれとして気になった点は二つ。

一つ目は、ちょっと傾向の近いネタが合わせて収録されていたこと。例えば、結婚を考えている女性の父親に自身の芸人という仕事について説明する『結婚のあいさつ』と、文化祭のステージで披露するネタを教師に確認される『名門学校でお笑いライブ』は、芸人のネタをお笑いについて詳しくない人間によって事細かに解体されるという点において、とてもよく似ている。また、オフィス内で開かれる渡部の誕生日パーティの会場を見た社長が、自らの誕生日を社員たちが祝ってくれるためのパーティだと勘違いする『誕生パーティー』と、浮気相手の誕生日パーティの準備中に遠距離恋愛中の本命の彼女が家へとやってくる『浮気相手の誕生日サプライズ』も、「誕生日」「誤魔化す」「第三者の登場で事態がよりややこしく」と類似点が少なくない。それぞれ一本ずつでも良かったのではないかと思う。無論、あえて比較して、その違いを楽しむというのも悪くはないのだが……。

二つ目は、とてつもなく個人的な話になるのだが、『アンジャッシュ単独公演「五月晴れ」』に収録されているコントから、選ぶべきネタが選ばれていないように感じたこと。否、『借金取り』も、『名門学校でお笑いライブ』も、『浮気相手の誕生日サプライズ』も、決して悪いネタではない。しかし、コントの導入があまりにも鮮やかな『のぞき』、犯人たちの計画内容と実際に起きた事件のギャップが可笑しい『犯行計画と事件報告』、なにより近年のアンジャッシュコントの中でも名作中の名作と言わざるを得ない『家が燃えています』をスルーするとはどういうことなのか。「家が燃えている」という危機的状況下にあるにも関わらず、そんなことなど露知らず、居酒屋で部下と酒を呑んでいる男が「火事」に関連する言葉を口にしてしまう、この底意地の悪い偶然を描いたコントを無視するなんて、とてもじゃないが考えられない。どうしても外さなくてはならない、余程の理由があるのだろうか。

そんなアンジャッシュだが、2011年5月に行われた「アンジャッシュ単独公演「五月晴れ」」を最後に、単独ライブを開催していない。当時ですら“八年ぶりの単独ライブ”を銘打っていたが、この次はいつになるのだろう。今や、児嶋はイジられ芸人として、渡部はグルメ芸人として、様々なメディアで活躍しているが、根っこにあるのはコント職人の血だ。これを最後に……ということなく、まだまだ己のコントを追求し続けてもらいたい。