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「ベストネタシリーズ うしろシティ」(2017年8月23日)

ベストネタシリーズ うしろシティ [DVD]

ベストネタシリーズ うしろシティ [DVD]

 

松竹芸能所属の実力派コント師うしろシティが2011年から2014年までにリリースしてきたDVDより、十二本の珠玉のコントを収録したベストセレクション。収録内容は以下の通り。

◆本編【80分】(カッコ内は収録元のDVDタイトル)

「この一球」(「街のコント屋さん」)

「転校生」(「街のコント屋さん」)

「美容室」(うしろシティさらば青春の光「cafeと喫茶店」)

「太陽」うしろシティさらば青春の光「cafeと喫茶店」)

「マンガ」(単独ライブ「走ってるのかと思った」)

「寿司」(単独ライブ「走ってるのかと思った」)

「サッカー部」(単独ライブ「アメリカンショートヘア」)

「上京」(単独ライブ「アメリカンショートヘア」)

「バンドやろうぜ」(単独ライブ「うれしい人間」)

「娘さんを下さい」(単独ライブ「うれしい人間」)

「5分の遅刻」(単独ライブ「それにしてもへんな花」)

「喫茶店の常連」(単独ライブ「それにしてもへんな花」)

2015年にリリースされた「うしろシティ第6回単独ライブ「すごいじゃん」」が選考から漏れているのは、同作が何故かコンテンツリーグではなくポニーキャニオンからリリースされたという背景を思うと致し方の無さそうなところではあるのだが、2016年にリリースされた「うしろシティ単独ライブ「すばらしく眠い」」まで巻き添えを食うように無視されているのは解せない。キングオブコントの予選で披露されたクレイジーなコント『自転車』(「すばらしく眠い」収録)は、是非とも入れてもらいたかったのだが。

その一方で、「うれしい人間」の完全生産限定盤に特典ディスクとして付いている「うしろシティ 第2回単独ライブ「走ってるのかと思った」」から、映像が収録されていることについて、微かな疑問を覚えなくもない。確かに、『マンガ』も『寿司』もベストセレクションに選ばれるべき名作ではあるのだが、あくまでも限定ディスクに入っているネタを、こういうベスト盤に入れてしまってもいいものなのだろうか。限定盤ならではのプレミア感が薄れることはないのだろうか。もとい、完全生産限定盤を買った人間としては、ここで出されてしまうことに対するふわっとした違和感のようなものが……まあ、どうでもいいことではあるのだが。

長々と文句から始めてしまったが、肝心の内容はさほど悪くない。むしろ、前半に関しては、完璧と呼ぶべきラインナップといってもいい。御挨拶代わりの軽めのコント『この一球』に始まり、コントの中に出てくるアイテム“もぎぼっこり”がちょっとしたムーブメントを巻き起こした『転校生』、平成24年NHK新人演芸大賞 演芸部門大賞を受賞した名作『美容室』、金子学のイノセントなキャラクターを最大限に引き出した『太陽』、早朝の学校を舞台に作り手と送り手の関係性を端的に表してみせた『マンガ』、ナンセンスな設定の上で人間の底意地の悪さが滑走する『寿司』……と、うしろシティの魅力が存分に引き出されている。もしも、このテンションが最後まで続いていれば、本作は芸能史に名を遺すベスト盤になっていたかもしれない(とは言い過ぎか)。

この後の流れも、なかなかに悪くない。感動の涙を流せないことを糾弾される理不尽さがたまらない『サッカー部』、阿諏訪泰義のちょっとイタいところを煮詰めてコントへと昇華した『バンドやろうぜ』、キングオブコントの決勝戦でも披露されたコント『上京』『娘さんを下さい』……ここまでは良い。彼らのネタとしてはちょっとトリッキーな構成の『5分の遅刻』も受け入れよう。ただ、ただ最後に、どうして『喫茶店の常連』を持ってきたのか。これがよく分からない。いや、決して悪いネタではない。悪いネタではないのだが、最後に持ってくるにしては後味が良くないし、阿諏訪が演じているキャラクターの驚くべき行動を金子が解説するという捻った構図のコントではどうも締まらない。「それにしてもへんな花」には、『放課後』や『真面目な清掃員』のようなネタもあったのに、どうして『喫茶店の常連』がオーラスに選ばれたのか。なんだか解せない。

……なんだか最初から最後まで文句ばっかり言ってしまったが、別に本作は駄作ではない。むしろ、全体の構成を見ると、ベスト盤としてはかなり良い作品に仕上がっている。ただ、あと一歩のところで、チョイスに失敗しているからこそ悔しいのだ。否、『喫茶店の常連』をオーラスではないところに配置するだけでも、本作に対する印象はまったく変わっていたと思う。うーん……惜しい……。

ちなみに、うしろシティは11月に新作をリリースする予定だ。

うしろシティ単独ライブ「とはいえ外はサンダー」 [DVD]

うしろシティ単独ライブ「とはいえ外はサンダー」 [DVD]

 

前作「すばらしく眠い」も全体の構成を意識したなかなかの秀作だったので、本作にも期待を寄せたい。