白昼夢の視聴覚室

この世は仮の宿

「学天即「マンザイ・オン・デマンド」」(2015年8月5日)

2015年4月29日にルミネtheよしもとで開催された収録用ライブの模様を収録。

学天即は同じ中学校の同級生である四条和也奥田修二によって2005年に結成された。コンビ名の由来は1928年に昭和天皇即位を記念して催された大札記念京都博覧会に出品された東洋初のロボット“學天則”から。「M-1グランプリ2005」への出場を目的にコンビを結成、アマチュアながらも準決勝戦への進出を果たしている。その後、オーディションを経て、2007年に現在の事務所であるよしもとクリエイティブ・エージェンシーへと所属。本作は、そんな彼らが過去に出場してきた賞レースで披露した、漫才・コントを再演しているベスト盤だ。

学天即の芸風は、いわゆる“しゃべくり漫才”である。うっかりすると聞き逃してしまいかねない程にしれっと繰り出される四条のボケを、奥田がたくさんの言葉を用いてツッコミを入れて笑いへと昇華するスタイルを取っている。本編では、映画を見た本数や寝ていない時間などといった下らないことを自慢げに話す四条に対して奥田が鋭いツッコミを入れる『しょうもない自慢するやつ』、旅行に行きたいという四条が目的地を選んだ理由を説明するたびに奥田からツッコミを受ける『旅行』、アトランダムにどうでもいいことを言い続ける四条に奥田は困惑を隠せない『どうでもいいこと言うてくるやつ』、語られるエピソードがどれもこれも四条の老人化を物語っている『じじい』、奥田がクイズ番組に出場したとしても緊張しないように予習として四条がクイズを出題する『クイズ』など、12本のしゃべくり漫才が演じられている。

いずれのネタも非常に面白いのだが、何度か物足りなさを感じる瞬間も。恐らく、学天即の漫才における、四条のボケと奥田のツッコミのバランスに問題があるのだろう。四条のボケは一瞬では理解し辛いものも多く、奥田がツッコミを入れることでようやくボケの意味を理解できるようになることも少なくない。それ故に、四条よりも奥田の方が目立ってしまい、どうにもパワーバランスの悪さを感じてしまうのである。彼らと同様、ツッコミの方が目立ち過ぎている印象の強かった銀シャリが、この点を上手く解決して「M-1グランプリ2016」で優勝を果たしたことを思うと(一本目の『ドレミの歌』のバランスは完璧の一言)、学天即もこの問題点と向き合う必要があるだろう。まあ、現状のままでも、さしたる問題も無いほどには面白いのだが。

これらの本編に加えて、特典映像として過去の単独ライブで流された幕間映像を収録した「ブリッジVTR傑作選」、奥田が某ミノさんの野球好プレーと某トバリさんの海外ゴルフトーナメントそれぞれのナレーションをモノマネで再現する「奥田のナレーションモノマネ」を収録。いずれも安定して面白いが、とりわけ四条が語る父親のエピソードが信じられないという奥田が二人で何故か岡山に住んでいる四条の父親の元を訪れる「四条の父」の衝撃たるや。妙にオシャレな恰好で、沢山の犬を飼いならし、キャバ嬢が吸うような種類の煙草を愛用している元プロボクサーの父……ド田舎の濃密な暮らしをしているオヤジをそのまま具現化したような映像は、なかなかにたまらなかった。私も老後はああいう暮らしをしたい気がしないでもない。……そうでもないか。

■本編【67分】

「しょうもない自慢するやつ」「ついてない一日」「桃太郎」「オリジナルヒーロー」「弁当」「旅行」「どうでもいいこと言うてくるやつ」「モテ方」「結婚」「じじい」「クイズ」「ポジティブな奴」「コント「お葬式」」

■特典映像【67分】

「ブリッジVTR傑作選」(奥田修二探検隊/学天即、母校に帰る/四条の父)

「奥田のナレーションモノマネ」(プロ野球・好プレーの雰囲気/海外のゴルフトーナメントの雰囲気)